【第五十五話】 赤い芋虫は思った以上に凶暴だったようです。
「ムゥゥ、Zzz」
私は目に見えない何かを振り払うように頭を振り、地面に下ろした赤い芋虫を指で軽くつつく。うっかり忘れかけていたが全くと言っていいほど起きる気配がない。
「……先生の説教が終わる前に起きたほうが良いぞ?」
逃がしたのに逃げないとか……。
私的には懐いてくれるのは嬉しいが、野生の魔物はそれではダメだろう。アレクが先生のお説教から開放される前に森へ帰りたまえ。つんつん。
「ムゥゥゥ~~……」
眠そうな声を上げて赤い芋虫が起き上がる。
私は赤い芋虫の頭を軽く撫でてからお尻を軽く押し森のほうへ行くように促す。
「もう悪い人間なんかに捕まってはいけないよ? 森へお帰り」
「ムゥ?」
私は某アニメーションのような言葉を赤い芋虫に贈り、森の奥へ目をやる。
「ムウウウウウウウウウウーーーーーー!!!!!!」
「え?( ̄◇ ̄;)」
森の奥から鮮やかな赤い芋虫が唐突に顔を出した。なーんだ赤い芋虫? と、お思いかも知れないが、問題はその大きさである。筋肉ダルマが大体二メートル超えの大男だが、この芋虫はさらに大きい。全長三メートルはあるだろうか? 更に横にも大きいのでダルマよりも圧倒的に迫力がある。そんな化け物級の赤い芋虫が現在進行形で古木先生の葉の間から我々を見下ろしている。
「おおおぉおおおおおおいいい!!! ヴァルド! 起きろよヴァルドッ!!!」
「ぐおぉぉぉぉぉぉ、Zzz……」
リアルタイプ蟻人間が直立不動の謝罪ポーズからのん気に寝ている筋肉ダルマを慌てて叩き起こした。
「いっってええなあっ! 何しやがっ……うおっ!?」
「馬鹿! 早くフィオ連れて逃げろ!!」
リアルタイプ蟻人間はそう言うと短剣を構えて巨大赤芋虫に対峙する。筋肉ダルマは素早く起き上がり、慌てて私を片手で抱き上げて距離を取る。私は状況を把握するので手いっぱいで咄嗟に赤い芋虫を抱き上げていた。……アレを見てからこの子を見ると可愛らしく見えるから不思議だ。
「ムウウウウウウウウウウウウウウウーーーーーー!!!!!!」
巨大赤芋虫は咆哮を上げながら物凄い速さで突っ込んできた。……大きくなって重量が増えてもスピードは落ちないらしい。
「おおぉい!?」
「ぇ゛!?Σ(゜▽゜;)」
あろうことか巨大赤芋虫は武器を構えたリアルタイプ蟻人間を華麗にスルーして、私と筋肉ダルマの方へ走ってきた。私はダルマに抱えられたまま、足をばたつかせてダルマに撤退を促すが、当のダルマは致命的なまでに察しが悪く又、鈍足であった。
要するに回避不可。
「許せフィオォ! ぬっおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「ギャァァァァァァァァァァ!!」
「ムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!?」
筋肉ダルマは私を草むらへ放り投げて、高速で突っ込んできた巨大赤芋虫の体当たりを受け止めようと体勢を整えて真っ向勝負に挑んだ。あんなモノを受け止めようとするなんて正真正銘の筋肉馬鹿である。私と小さな赤い芋虫はふかふかの草の上に別々に投げ出された。私はお尻を打ち付け、そのまま激しく転がり全身草塗れ土塗れになりながら地味に全身を打ちつけた。何か最近、怪我が多い気がする……。
「いった~……投げるならもっと慎重かつ丁寧に――」
「フィオッそっち行ったぞっ!!」
振り返ると筋肉ダルマとリアルタイプ蟻人間が慌ててこちらに向かって走っている。その前を高速で移動しているのは巨大赤芋虫。対抗しうる二人は巨大赤芋虫の遥か後方を走っていて、どう考えても援軍は期待出来ない。あれ? こんなフラグ回収した覚えないんだけど……あぁ、小さい方の赤い芋虫の捕獲した時か、納得。私は迫り来る巨大赤芋虫を前にそんな事をぼんやりと考えていた。
「ムゥゥッ!!!」
「ムウ!?」
もうダメだ異世界乙。などと思っていると巨大赤芋虫が目の前で急に止まった。鼻先が触れそうなほどの距離に固まっていると巨大赤芋虫は大きく頭を持ち上げて私を見下ろすような体制になる。
「ムゥ! ムゥムゥ!」
「ムウ? ムゥ~~……」
私が異常状態から復活すると、何時の間にか小さい赤芋虫が頭の上へ乗っていた。赤芋虫ズは何やら会話をしているようだが、私には何を言っているのか全く分からなかった。二体の話し合いがどのような結果をもたらすのか今の私には想像もつかない。私の言語チートが何の役に立たないと再認識させられた。
「お……おいフィオ! だい、じょうぶ、なのか? な、何が、起こった、んだ?」
「……………………分からぬよ、そんな事」
リアルタイプ蟻人間がようやく追いついて、この現状に驚愕している。
「ムゥッ!」
「……何て言ってるんだ?」
「……わしに分かるとでも?」
「フィオォォォォ!!!!!」
筋肉ダルマようやく到着である。
むしろ、場が荒らされるだけなので必要ないんだが、一応私の従魔(?)なので状況を悪化させないように「待て」を命じた。すると、巨大赤芋虫がゆっくり後退して私たちから少し距離を置き、私の頭の上にいた小さい方の赤い芋虫が地面に降りる。
「ムウ~……」
「ムゥッ! ムゥッ!」
小さい赤芋虫は楽しげに飛び跳ねて私の膝に飛び乗る。……もはや疑いようも無いほど完全に懐かれていた。会話は全く分からないが、どうやら小さい芋虫が巨大赤芋虫を説得して引いてもらったようだ。私は謝罪するように頭を下げている巨大赤芋虫の頭を撫でてみる。特に抵抗されなかったので大きい芋虫の感触を楽しもうと少し強めに揉み込む。すると「ムゥ」と気持ち良さそうな声をあげて草むらに横になった。
「…………セッチャ大芋虫が人に懐くとか; ありえない;」
「良く見ると可愛くない?」
「人食い大芋虫が、か?」
な、何だと!? 人食い!?
そう言えば先生が肉食の芋虫だと言っていたような気が……。私はそっと巨大赤芋虫から手を離す。
「フィオは度胸もあるんだなぁ!!!」
不思議そうに私を見上げる小さい芋虫に見詰められながら体中の草と土をそっと落とすと、静かに赤芋虫ズから距離を取る。その間にもリアルタイプ蟻人間による「セッチャ大芋虫の生態」の講義を聞かされ続けた。その講義を聞いた私の素直な感想は「異世界怖い」の一言に尽きるのであった。
はじめまして、こんばんは
前書きは書かないほうに方針転換した変人のヴァインです。
最近ちょ~~~~と他者様の作品を読み続けていて更新が滞りがちですが
ちゃんと書いていますよ、と言っておきます;
私の作品に関する感想も募集していますが、オススメ作品の情報も募集しています!
オススメありましたらメッセージください~♪
寒い日が続きますが皆様、お風邪などなさいませんように暖かくなさってください。
ご覧戴き、ありがとうございました。




