【第五十話】 階段の上でふざけてはならない。
はじめまして、こんばんは(*^ー゜)v
最近スムージーに凝っている変人のヴァインです。
変人の家では「名前を呼んではならないあの昆虫」は出なくなった物の
クモが大繁殖しています; あとは蜂が来ないように祈るばかりです・・・。
ではどうぞー!
ロゼの部屋は屋根裏部屋である。
と言っても(小屋が広いのだから当たり前だが)日本の物置のような狭さでは無く、普通に部屋である。キッチンとトイレ、お風呂さえあれば一人暮らしするには充分過ぎるほどの広さがある。客室用の大部屋の真上で階段上の廊下部分がバルコニーのような空間になっていて、上から森番小屋全体を見渡せる位置にある。入った事は無いが、部屋の中の窓からは森を見渡す事の出来るらしい。屋根の上には見晴台もあって、小屋の外から続く階段は、ロゼの部屋の窓を通って出られるようになっている。まさに森番小屋の主のための部屋である。ちなみにその見晴台は普段は洗濯物干し場である。
階段を上がり、部屋の扉を豪快に開け放つ。尚も「横になるほどじゃあ……」等、言い募る愚か者を部屋の中へ押し込むと、諦めたような溜息がを吐いてロゼが振り返る。
「……何でそんなに休ませたがるんだ?」
「今、貴様が倒れたら私は死ぬしかないからな! HAHAHA!! 保身のために決まっている!!!」
ロゼが肩をガックリ落とす。
軽く息を吐き出し「そうだよな……」等つぶやいている。どうやら落ち込んでいるようだ。……つい何時もの癖で言い過ぎたかもしれない。と、言うか! 何時もの軽口じゃないか!! 何時ものように軽く流せよ!!! 何で今日に限って言い返さねーんだよっ!! 本当に女々しいし面倒臭い奴だなっ!! 私は心の中で激しく悪態を付きながら、振り返ったロゼの体を部屋のほうへ向け、再び背を強く押した。
「~~~~っ、理由がなきゃ心配をしてはならんと言うのか!? 具合の悪い友人の心配をするのに理由などあるか~~~~っ!!!!」
「!?」
私はロゼを部屋に押し込んで、勢い良く扉を閉める。言い逃げである。
乙女で女々しい硝子のハートのロゼめ!! くっそ! 何故だ、顔が熱い。鏡を見なくても顔が赤くなっている自覚がある。全部ロゼのせいだ。くそぅっ!! 私あまりの羞恥に耐えかねて顔を両手で覆い、扉に背を預けて膝を抱えて蹲り、悶える。「ぬぉぉぉ~~!!!」と叫び出したくなるのを必死に飲み込む。すると、背を預けていた扉が引かれ、体が後ろに倒れこむ。
「Σぬぉあ!?」
「Σっ、フィオ!?」
驚きのあまり絶えていた筈の絶叫が少し口から漏れた。
後ろ向きに床に倒れた私の未だ発熱する顔を、驚き戸惑うロゼに上から見下ろされる。私は羞恥の極みに、異常な速さ(私の身体能力にしては)で身を起こし、バルコニーの手すりまで素早く後ずさる。
「き、貴様! 寝ていろと言ったではないかっっ!!!!」
「……あ、あぁ、その――」
私はロゼの言葉が切られた瞬間、階段に向かって走る。
本当は手すりを飛び越えて一階に舞い降りたかったが、漫画やアニメじゃないので流石に無理がある。よって逃走経路は階段のみである。私にはこの状態で長々と話をする気は無い。言い逃げした筈が追われるなどと言う事を想定していなかった私は、大慌てで敵前逃亡を図る。何と言ってもしなければならない家事が残っているのでな! ロゼはそんな私の行動に驚きつつも逃走経路を塞ぎに動く。
「退くのだ!! 洗濯物を干さねば――」
「待て! 危ない!!」
階段を一段下りた瞬間に、足に鋭い痛みが走る。
――そうだ、怪我してたんだ、忘れてた。そう思った時には既に、足が体重を支えきれずにバランスを崩していた。完璧に階段下落下コースである。私は咄嗟にまもなく訪れるあろう衝撃に備え、身を硬くして目を瞑る。すると、後ろからロゼに右腕を掴まれ、腹部を支えられて後方へ倒れる。僅かな痛みが臀部を襲ったが、今朝の尻餅に比べれば大した事は無い。私は瞑っていた目を開けて溜息を吐く。やはりと言うか、何と言うか、もうロゼが近くに居る時に、何か不測の事態が発生しても大丈夫な気がする。私は何時の間にか、ロゼに全幅の信頼を寄せている事実に、静かに気が付く。それと同時に、今後もロゼに降りかかるであろう苦労を予め労おうとも思った。
「……苦労をかけるなロゼ氏」
「……もう慣れた」
結論、階段の上でふざけてはならない。
冷静になった頭でそう結論付けると、現状を把握した頭に再び血が上る。背後から右腕を取られ、ロゼの左腕が腹部に回されている。ここまでは良い。問題は私が座って居る場所……私は現在、ロゼの膝の上に後ろ向きで座って居る。ロゼは筋肉が程よく付いているので座り心地は良くない。
「…………」
「…………」
背後でロゼが息を呑む気配がする。
どうやら私を後ろに引き倒した際に、一緒にバランスを崩して後ろに倒れたようだ。側から見れば恋人がイチャついている現場にしか見えないであろう状態に眩暈がする。早く離れたいのだが、腕を取られ、腹部に回ったままのロゼの腕が緩む事無く私を捕らえている。抗議をしようにも生憎この状態で、ロゼと会わす顔の持ち合わせも、勇気も無い。
「…………ロゼ氏」
「…………事故だ、許せ」
ロゼの吐息が耳に掛かる。
一瞬変な声が出そうになるのを何とか耐えたが、不自然に体が震えるのは止められなかった。全身に火が付いたように熱くなる。瞬間、私の脳内会議室は激しく荒れていた。
照れ屋『いやああああああああああっっ!!!!!!』
怒りんぼう『純情な乙女心を弄びやがって!! 死刑だっ!! 縛り首にしろ!!! 糞クズがあぁぁぁぁぁぁ!!!!』
悲しみ『きっと、何時もこうやって女性を落としているに違いないわ……酷い……』
理性『いやいや、皆落ち着こうよ! これはどう考えたって事故だって!』
照れ屋『いやああああああああああああああああっっ!!!!!!』
頭の中が大パニックである。
するとロゼが無言で静かに腕を離す。私は再び階段から足を踏み外さないよう、これまた無言でそっとロゼの膝から立ち上がる。
「…………」
「…………」
階段の上で無言の男女が、一列に並んでいると言うのは、何てシュールな後景だろう。この小屋に第三者が居なくて良かったと心からそう思……。
「フィィィイイイイォオオオオオオオオオオオッ!!!!!!」
遠くのほうから妙な雄たけびが聞こえる……。
きっと空耳だ、そう思いながらも私は慎重に階段を数歩下りる。まだ冷静になりきっていない脳内会議室の面々がけたたましく「撤退」の指示を出しているので大人しく従う。
「……フィオ、さっきは悪かった。 まさか心配してくれるとは思わなくて、驚いた」
その声に立ち止まって振り返ると、ロゼは私に背を向けて自室の扉に手をかけていた。
「その、あ、ありがとう。 でも本当にたいしたこと無いから、そんなに心配しないでくれ」
私の顔を見る事無く、早口に言い切って部屋に逃げ込むロゼ。
照れているのが丸分かりの態度に、先ほどのようにその扉を開け放って羞恥の極みに追い込み、その顔を拝んでやろうと思い立つ。そうだ、私の照れ顔は見られたのに私が見ないのはフェアじゃない、と自身を正当化して悪戯心に導かれるままに階段を上がる。しかし、非常に良いタイミングでダルマが雄たけびを上げながら小屋の扉を勢い良く開けたので、仕方なく諦めて洗濯物を干しに小屋の外に出る。
いかがでしたでしょうか?
お楽しみいただけたなら幸いの極みでございます。
このザブストーリーは入れるつもりが無かったんですが・・・
なにやら次ぎの話との繋がりが良い感じなので入れる事になったお話です。
もう少ししたら、もう少ししたら、物語も動き出す・・・はず!!
ご覧戴き、ありがとうございました。




