【第四十四話】 ふわふわむふむふのウサギ。
はじめまして、こんばんは(*^ー゜)v
最近、暑さのせいか体調を崩し気味な変人です。
今日はウサギ祭りな感じでお送りします。
「にゅっ!」
「ホーンラビット!?」
鞄から二本の長い耳がヒョコッと立ち上がる。出てきたのは白くて真ん丸なウサギだった。私は大喜びでそのウサギに飛びつこうと立ち上がろうとしたが、足に鋭い痛みが走り、震えて力が入らない。どうやら今頃になって痛みがやってきたようだ。仕方がないので前のめりになり、ロゼの背中側の服を引っ張って引き寄せるに留める。
「ホーンラビット! ホーンラビット!!」
「Σま、待てフィオ! これはコットンラビットだ」
何と? 私はロゼの服を引っ張るのを止めて、鞄の中のウサギを良く見る。全身を覆う毛は白く、もこもこしていて見るからに柔らかそうで、毛足が長い。目はローズピンクでわたあめに耳が生えているような生物だった。アンゴラウサギに近いけど、アンゴラより明らかに大きく、大玉スイカより二回りほど大きく、丸すぎるくらい丸い。そして何よりホーンラビットの象徴である角が無かった。そのサイズのウサギがその鞄に収まったのか……殆んど毛なのかな? ロゼは振り返り、私にウサギが良く見えるようにしてくれた。
「ふわふわだぁ~~かわいい~! (* ̄∇ ̄*) どうしたの、この子?」
「怪我を、していたから、保護したんだ」
「怪我?」
ロゼがコットンラビットの首根っこを掴んで鞄から出す。足に白い布が巻かれていて、僅かに血が滲んでいた。ロゼはそのままコットンラビットを私の手に預けた。両腕いっぱいの白いもこもこは思ったより軽くて暖かい。やはり体積の殆んどが毛のようだ。頬を寄せると草と土と太陽の香りがして、そのまま顔をもこもこの毛に埋めると毛が鼻の中に入ってムズムズした。腕の中のコットンラビットは少しくすぐったそうに身じろいだが、大人しく私の腕に抱かれていた。
「もふもふ~かわいい~……」
先ほどまでの荒らんでいた心が嘘のように晴れ、自らの傷の手当さえ忘れて、今はただ最高に癒される天使のような生物で心を充電していた。きっとこの子のお陰で直ぐに足腰も動くようになるだろう。ロゼはそんな私の様子を呆れたように微笑みながら見守っていた。
「……フィオ、こいつの世話を頼めないか?」
「え!?」
世話って事はこの小屋で暫くは、この天使と一緒に居られると言う事か! 嬉しさの余り先ほどから緩みっぱなしの頬が更に緩み、頬が熱くなる。
「本当に! 本当に本当に良いの!? Σ(=口=;)ハッ…………太らせて食う、とか言い出さないよね?」
「ソレは食用じゃない;」
ソレはって事は、やっぱりホーンラビットは食用指定なんだ……同じウサギなのに、何だか複雑な心境だ。
「……本当に~? 私が見ていないうちに、こんがり焼いて食ってたら二度と口利かないからね!」
私はロゼをジト目で睨む。ヤツのやった事を思えばこの子が食われる可能性も否定できない。なんと言ってもホーンラビットと戯れた後で、肉になって支給されていたとは言え、料理するような暴挙に走る男なのだから。そして、飢えた野獣からこの子を守れるのは私だけだなのだから。
「絶対に絶対に絶っっっ対に食べない?」
「……食べない。 少しは信用してくれないか?」
「信用できないほどの食いしん坊が何を言う!?」
コットンラビットは毛を衣服に利用したり皮製品に加工される事が多く、肉は美味しくないので一般的にあまり流通していないらしい。食べる地域は食べるらしいが、この森には他にも食べられる魔物が多く居るのに、わざわざ不味いコットンラビットを捕まえて食う事はしないと、ロゼは主張する。しかし、それはそれで失礼だなと私は思う。
「皮、製品?」
まさかこの男、同胞の皮で出来た鞄にコットンラビットを入れてきたのではあるまいな!?
「……この鞄はホーンブルの皮だ」
心を読んだかのように呆れながら言葉を返してくるロゼ。そうか、なら良い。それにしても、何時の間にか言葉を交わさなくても、ある程度の意思の疎通が出来るとは……慣れとは恐ろしい。そんな事を思いながら私は再びコットンラビットをむふむふする。
「先に傷の手当をしろ」
ロゼの命令口調に少しムッとして、コットンラビットに顔を埋めながらジト目で上目遣いで睨む。
「……俺に手当てをして欲しいのなら、そのままイチャついていれば良い」
「何で急に俺様?;」
流石にそれは困るので私は渋々、渋々、コットンラビットをロゼに預けて、自らの傷の手当を行う。傷薬と化膿止めのを塗って膝から足首まで清潔な布を巻いた。ダークマターの襲撃から時間が経っているので、立てるかどうか試してみようとしたら、ロゼに止められた。
「動かないほうが良い」
「歩けなかったら、その子のお世話出来ないでしょ!」
そう言うと私は、尚も止めに掛かるロゼを無視して、両足を床に下ろし、少しずつ慎重に体重をかける。まだ震えは収まっていなかったが、どうにか立てるには立てた。ただ両膝を強く打った上、激しく擦りむいているので、曲げても伸ばしても鋭い痛みが走る。その上ふらふらと不安定で、まだ歩き回るのは危険そうだった。仕方がないのでロゼの言葉に従い、そっとイスに座りなおす。
「だから言っただろ、腰が抜けた時に無理して動かせば怪我をするぞ」
「解せぬ……」
人体とは足があっても腰を悪くすると立てないのだな、新しい発見だ。仕方がないのでイスに座ったままコットンラビットの傷口を水で洗い、傷薬を塗って、新しい布を巻いた。野生動物だと言うのにコットンラビットはとても大人しくて、怪我では無い何か別の症状で動けないのでは無いかと疑うほどだ。
ロゼが小屋の隅に木で出来た柵を設置して、そこに藁を引き詰めて、水を入れる。そこにコットンラビットを入れて様子を見る事になった。落ち着かないといけないので体がスッポリ収まるサイズの木箱も入れた。私はロゼによって再び横抱きで柵前まで運ばれ、ロゼと共に床に座り込んでいる
「…………ねぇ何で動かないの? ねぇロゼ、本当に大丈夫かな? 変な病気じゃないかな?」
「腹が減ってるだけじゃないのか?」
「それはお前だろ」
「そんなに食い入るように睨み付けているからじゃないのか?」
「「……………………」」
互いに少しムッとして軽く睨みあう。すると暫く置いた場所から動かなかったコットンラビットは、辺りを確認するように鼻を動かし、木箱の中に入って横になった。どうやら緊張していただけのようだ。私はそのようすを見てホッと息を付く。背後のロゼからは「心配しすぎだ」と呆れた声が聞こえた。
「名前はつけないのか?」
「傷が治るまででしょ? 情が移って野生に帰せないといけないから良い」
「……飼っても良いぞ?」
コットンラビットは気性が穏やかなのでペットとして飼われる事もあると言う。あぁ~危険じゃないから小屋の結界内に入れたんだ。魔物は無条件で入れないのかと思ったよ。私は床に座って、怪我をしたコットンラビットを柵越しにしに見つめる。
「……良い。 私じゃ、この子の命に責任が持てない」
「…………以外だな」
「何が?」
「フィオは、もっと喜んで、手放さないと思ってた」
ひょっとして、この間ウサギを調理した詫びのつもりで連れてきたのか? 何と浅はかな……。私は胡坐をかいて座るロゼを振り返る。
「今の私は、この世界で自分一人、生き残るのがやっとだから……誰かを守る事なんて出来ないよ」
「……そうか」
本音を言えば、ずっと一緒に居たいが、私はまだこの世界で一人でお金を稼いで生きていくことが出来ないのだから無理だ。何時までも森番小屋に居るわけにもいかないし……。色々考え込んで俯いていると、ロゼが立ち上がり、足音が離れていく。言い忘れていた言葉を思い出し、顔を上げる。
「ロゼ! ありがとう!」
私は満面の笑みでロゼにお礼を言うと、とりあえずウサギに目線を戻す。難しい事は明日考えよう。背後でロゼが何か呟いていたので振り向くと、驚いた表情をして何も言わずに私に背を向けて何処かへ行ってしまった。この子のご飯は何が良いのか、聞こうとしていたのに逃げられてしまった。腰が抜けているそうなので追いかける事も出来ない。そして何より、先ほどのダークマターが小屋の外をうろついている可能性があるので外にも出られない。私は暫くの間、床に座ってウサギの様子を見ている事しか出来なかった。
いかがでしたでしょうか?
今後、このウサギが色々役に立つ事になります。
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