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とある少女

作者: アダマ

昔むかしあるところに誰もが見ぼれる美少女が住んでおりました。少女を見たら誰もが少女にほれてしまうほどの顔立ちの愛くるしいこと。


しかし、少女は自分のこの愛くるしい顔立ちを憎み、いかそうとはしませんでした。他の少女がもし、この可憐な少女の顔になっていたのだったらそれはもう有頂天になって素敵な恋人を見に出かけていたことでしょう。が、この少女は違いました。自分の顔の表情を見られるのがイヤだったのです。少女はこの立派な顔をいかすどころか、他の女の子の顔立ちをうらやみ、自殺さえも考えはじめてしまいました。少女はいろいろなことですぐに頭を悩ます子だったのです。


この様子を上から見ていたこの少女の顔立ちを作成した一人の若い職人はせっかくこの少女の人生が明るく華々しくなるよう願って少女の顔を造形したのに・・・・と落ち込みました。そこで職人は考えました。思いついたのは、少女の性格にぴったりと合うパートナーを作成している老人の職人のところへと向かい、少女と少し出会うタイミングをはやめてくれるようにお願いしに行くことでした。ですが、この老人の職人は言いました。それはしてはいけないことだ。わしが作成したこの青年もこの少女の性格に対応できるほど成熟してはいない。そして君のつくった可愛らしい少女もまた、今のこの辛い時期を乗り越えてこそわしの作成した青年も少女を支えてくれる存在になりえるであろうからね。若い職人は言いました。でも、この少女はこのままでは自殺しかねないんだ。すると、老人の職人は言いました。少女にチャンスを与えてごらん。するとまたしても若い職人が言いました。もう、何度もチャンスをやった。それなのに、この子はチャンスに気が付かないんだ。そうしている間にも少女の自信は失われていく・・・。せっかくあなたのつくった青年と幸せになれる運命を用意してやってるのに。もう、何度も自殺をはかっているよ・・・・。ワタシはどうすればいいんだ・・・・?老人の職人は言いました。今はまだ耐えてもらうしかない。つらいのはわかる。わしのかわいい子をお前さんのお嬢さんにやるんだからの。わしだって心苦しい。なんとしてでも耐え忍ぶようにお前さんなりにサポートするのだ。この時期を乗り越えたのなら必ずわしの子をサポートにまわしてやると約束しよう。若い職人はうなずきました。ああ・・・・。そうするしかないようだね。こうしてみると、やはりワタシの子にあう性格の人間は君の作成した青年しかいないようだしね。老人の職人は言いました。そうだろう?まだ出会う時期ではないだけなのだよ。

若い職人はさっそく少女に未来に素敵な人がいることを少女に気付かせるように、少女がそれに見合う少女になれるようにサポートすることにしたのでした。


 しかし、この少女、なぜ今まで全くこの若い職人の用意したチャンスを無視していたのでしょうか・・・?それは少女はあまりにも愛くるしい顔立ちだったので闇の職人がつくりだした目に見えない悪魔をつくりだし、少女を自殺に追い込もうとして自殺したら自分のものにしようとたくらんでいたのでした。これに気が付いた老人の職人は言いました。おい、おまえ、わしらの邪魔をせんではくれまいか。闇の職人は言いました。なぜだ?お前らのひいた路線なんて少女はほしくはないのさ。オレにすべてあずけて殺してしまった方が少女のためだぜ。老人の職人は言いました。なんと!ばかなことをいうでない!少女には幸福になる権利があるのじゃ!貴様なんぞが自分の欲望のために奪えるようなものではないんだぞっ!闇の職人は言いました。はん!なんとでもいえ。欲望だって・・・?それはお前らも同じだろう?少女は今、死を望んでいるんだ。それをむやみにねじまげて思い通りに事を進めたいのは貴様らの方だぜ。老人の職人は言いました。それはお前さんがそういう風に仕組んだからだぞ。闇の職人は言いました。はん。それはどうかな。オレは少女に作られた存在でもあるんだぜ。気が付かないのか?まあ、いいや。もうすぐ少女は死ぬ。老人の職人は言いました。お前さんが何を考えているのかは知らんが、お前さんが好きなのは少女の顔立ち。わしのつくった子は違う。少女の性格も愛しているんだ。愛せる器があるのじゃ。闇の職人は言いました。はん。でもまだ少女ともあったことのない男の話をされてもな・・・。愛・・?そんなもんはどこにあるんだ?どうせ肉体でしかあらわせないかもしれないぜ。オレが少女の顔に惚れることの何が悪いんだ?人間だって同じことさ。老人の職人は言いました。こうなったらなんとしてでも少女をサポートしてやる。


 闇の職人のことをきいた若い職人はあせりました。少女が生き生きと自分に自信をもって生きてほしくて可愛らしくつくったのに。こんな結果になるとは思いもしなかったのでした。まさか闇の職人に目をつけられてしまうなんて。少女には愛情と自信が欠乏していたのです。このままでは少女はいい加減な愛しか知らなくなってしまう。


 若い職人は頭を悩ませたあげく少女に愛嬌をあたえることにしました。なぜならこの少女は本当に笑顔を振りまくことができなかったからでした。誰に対しても公平に接するけれども仮面をかぶって毎日を過ごす道化でもありました。しかし、少女に愛嬌をあたえるのはとても難しいことでした。少女の中に全ての人間が敵に見えてしまう魔法を闇の職人にかけられていたからでした。いったいどうしたらこの少女の心は安定するのかと若い職人はたいへん困ってしまいました。闇の職人の勝ち誇った顔が頭に浮かびます。そうしている間にも少女の気持ちもだんだんと闇に染まっていきました。ついには自分の人生にあきらめと失望を感じてしまう回数も増えていきました。いつになったら私を殺してくれるのかしら?少女は毎日こんな独り言をこぼしていました。これを聞いた若い職人はショックで寝込んでしまいました。この状況をみた老人の職人は少女に自信を持つことをあたえようとしました。我々職人は少女の未来を知っている。少女は少女に合う人間に出会うことのできる未来を知っている。が、少女は自分の未来を知らない。そしてもう、自分にはすさんだ未来しかないと思っている。であればもう、自分に自信をつけて、来るべき時がくるのを待ってもらうしかない。もうそこまで来かかっている。では、自信をつけてもらうにはどうしたらよいのか・・・?老人の職人は考えました。自信は自分の中で湧き上がってくるものなので、他人がどうこうできることのものでもなかったからです。


 職人たちは結局自分たちは下界には影響をあたえることのできない存在であることを身に染みて感じました。闇の職人は意気揚々としていました。貴様らの能力なんてそんなものさ。オレはただここで見ているだけでいい。しかし、少女の心境の変化は実に激しい。突然少女に変化がありました。少女にも仲良くしたいと思える人間に出会ったのでした。これが例の青年であることは少女には知りえませんでしたが。しかし、少女は自分に自信がないのと臆病な感情に負けてなかなか仲良くなることができなかったのでした。老人の職人も若い職人も少女の心を変えることはできなかったのです。少女の心を変えることができるのは少女だけでした。どんな職人もいくら運命や美貌を造形できても心を造形することはできなかったのです。悪魔は少女の心自身だったのです。闇の職人も少女の心を揺さぶることはできても心に影響を与えることまではできませんでした。だから自分から少女に会うことをせずに少女が自殺してこっちの世界に来る日をただ待っているのでした。少女に影響をあたえることができるのは心を自分勝手につくりだした人間のみでした。この少女の世界観は心があってこその世界観でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] せかっくあなたのつくった青年と幸せになれる運命を用意してやってるのに。 『折角、貴方の』がイイかと。せかっくになってます。
[良い点] 世界観はとても面白くて強いメッセージ性を感じました。 [気になる点] とても見辛いです。改行をしてほしいと思いました。 [一言] 世界観はとても素晴らしいので読みたくなる魅力を感じました。…
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