幼馴染み紹介パート
主人公の口調が定まらないのはご愛嬌ということでお願いします!!
「うるっせんだよ!何度言わせたらわかんだ」
「だ、だって、応答がないから」
「できるわけねえだろ!それともお前が来たときにすぐに出れるようスタンバっとけということか?」
短時間の睡眠で回復したなけなしの体力を削って叫んでいるのは彰人で、その対象が彰人の前で歩いている幼馴染みで隣人の柊千鶴だ。
千鶴は常時潤んでいる大きな瞳に小さな鼻が小動物を彷彿とさせるが、おどおどとした性格もあって小動物感に拍車をかけている。腰まであるロングの髪は美髪と形容しても差し支えがない澄んだ黒髪なのだが、朝は決まってボサボサだ。それを梳かすのが、彰人の役目である。そのため、千鶴が彰人の前を歩いているのだ。
彰人が家ですることを提案したり懇願しても、千鶴にしては珍しく、断固として首を縦には振らなかった。彰人も周囲の眼を気にしなければ、気分は悪くなかったので、今は黙って役目に徹している。
とは言っても、元々艶やかな髪なのか、すぐに作業は終わる。
「で、でも…………だ、だって……」
肩を必要以上にびくびくさせながら答える千鶴。このおどおどした性格が解消される見込はいまだない。
「はぁー。これからはお前よりも早く起きるから。それでいいんだろ?」
これ以上の言葉は無駄だと思いながら髪の毛を梳き終えた彰人は、幼馴染みの横に並んだ。櫛が離れていくのを物足りなさそうに追う千鶴の視線に彰人は気付いていない。
「そ、そんなこと、彰人は、無理」
「無理ってことはないだろ」
「無理。だ、だって、彰人ほとんど徹夜してるし。今日だって六時まで」
千鶴は、『無理』の部分だけ妙にはっきりと強調するように言った後はおどおどした口調で続けた。
「そうだったな…………って、何で六時までって知ってんだよ?」
「あっ!あうあうあうあう!」
何気なく語尾に続けた言葉が爆弾だと今更の如く気付き、あうあう言いながら千鶴は脱出経路を必死に探した。
その結果たどり着いた解答が以下である。
「く、隈がひどいからだよ!」
「はぁ?それで時間までわかんのかよ」
反応不良。
「隈の深さからその日の睡眠時間がわかるの!」
「……すげえな」
反応虚弱。
「たまたま夜に眼を覚ましたら彰人の部屋の電気がついていたから」
「あっそう」
納得したようだったが、納得したために興味が失せたのか、反応は薄かった。こんな解答で納得してくれてホッとする半面、逆に納得せずにもっと深く訳を訊いてこなかったことに自分にそれほど興味がないと勝手に深読みして千鶴はがっかりしていたりする。
ちなみに補足説明すると、彰人と千鶴は隣人同士だが、千鶴の台詞の通り、お互いの部屋の窓が見える。というか、計ったように窓自体が向かい合っている。流石に間が空きすぎて行き来はできないが。