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事の始まりパート

目標の十万字を達成してちょっと休憩を入れました。

それと、もうすぐ他作をアップするかもしれません。

ジャンルはバトルハーレム系。

アップしたときは是非手にとっていただければと思います。


 翌日、四月三十日月曜日。

 普段通りに、千鶴とともに学校に登校。

 何をおごってほしいかなどという他愛ない話に花を咲かせていた――が、


 「彰人」


 校門をくぐると、真剣な顔をした薫に呼び止められた。

 薫は、校門のそばでもたれ掛かるようにして彰人を待ち受けていた。

 その真剣な顔からは何か深刻な事態であると暗に示しているようだった。


 「どうしたんです、神崎さん?」

 「取り敢えず、こっち来い」

 とだけ言うと、薫は彰人の問いに答えることなく、振り返り歩き出した。

 その薫に不審というか、何か良からぬ予感がして、不安を抱いたが、黙って薫の後を歩いた。

 そして、千鶴は彰人の隣をおどおどを越えてびくびくしてついて歩いた。



               ┠╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂┨



 学校の中央に位置する中庭に入ると、目的地がどこであるかすぐにわかった。

 中庭は四方を校舎で囲まれていて、その一方の壁にほとんど使われず、飾りと化していた掲示板と何が生息しているか謎の人工池があり、その二つを囲むように人だかりができていた。

 その内の掲示板の方に薫が歩いていった。

 人だかりの数人が薫と彰人に気付くと、やがてその情報が行き渡り、人だかりに薫と彰人が通ることのできる隙間ができた。

 その隙間を通り抜けて、掲示板の前に薫と千鶴と彰人が横に並んだ。


 「何です、これは?」

 「それは、私が訊きたい」

 彰人は掲示板をしばらく眺めてから言うと、すぐさま薫に言い返された。


 掲示板には一昨日または昨日、千鶴とマユと琉璃や栞といる彰人の写真が張り出されていた。

 その中には彰人が試着室にダイブしたり、栞の豪邸の玄関で別れているところの写真まであった。

 更にその写真はすべて見えやすいようにA4に引き延ばされていた。

 それらの写真の真ん中に空いているスペースには、『この男はただの女たらしだ。だから目を覚ますんだ、栞』と汚い字で書かれた紙がある。


 「どうも、巨大な誤解をされているようですね」

 「だな。それと、こっちにも来てくれ」


 薫は振り向くと、人だかりから出て、人だかりのできているもう一つの場所、池の方に向かった。

 近付くと、先程のように人だかりが自動ドアのように割れて、通り道ができる。


 「おう」


 人だかりを通り抜けて、池を見ると数冊の教科書が池のふちに並べられていた――ずぶ濡れの状態で。

 それを見て、彰人は気の抜けた驚きの声を上げた。


 「これはひどいですね」


 彰人はそれらの教科書が自分のものであると知っているにも拘わらず、他人事のように言った。


 「しかし、犯人は俺のことをよく知らないようですね」

 「ほう?その心は?」

 「犯人は千鶴が俺のただの幼馴染みで、琉璃がただの妹で、マユが――っと、神崎さんはマユを知らないんでしたね。マユはさっきの写真に写っていた白髪焔瞳の女の子なんですけど、俺の従姉妹です。後、決定的なのが、この教科書です。真剣に授業を受けていない俺に嫌がらせをするなら、教科書などを手に掛けるはずがない、ということです」


 彰人は得意げになることなく言ってのけた。


 「そうか……で、どうするつもりなんだ?犯人をあぶり出すのか?」

 「そんな物騒なことはしませんよ」

 「しかし、しなければ、こんなことがずっと続くぞ」


 薫は足元のびしょ濡れの教科書に目を落とし、言った。


 「大丈夫です。この程度のことをこそこそしなければできない奴がすることなど知れてますよ」


 が、彰人はそれほど深刻に受け止めている様子ではなかった。きっと、長くなったとしても時間が解決してくれるだろうと、考えているようだ。


 「まあ、そうだな。なら、泳がせておいて、尻尾を出したときにしめるということだな」

 「………神崎さん、もしかして怒ってます?」


 神崎の有無を言わさぬ口調に彰人が恐る恐る訊いた。


 「もしかせずとも、怒っている。何故そんなにへらへらしていられる?」

 「へらへらしているつもりはないのですが、そう見えるのなら、それはきっと全然痛くないからですかね。だけど、これが教科書ではなくネタ帳だったら、犯人を地獄まで追い掛けるでしょうが」

 「彰人らしいと言えば、彰人らしいが……」

 「いいんですよ。噂も七十五日というでしょう?というか、千鶴はどこに行ったんだ?」


 話はこれで終りとばかりに話題を変えた彰人は先程から薫と話していて誰かを忘れているような気がしていたが、それが誰なのか気付いた。


 ――確か、掲示板のところまでは一緒にいたよな。


 そう思い、彰人は池を離れると、再び掲示板の場所に戻った。

 すると、掲示板の前に俯き、へたれ込む千鶴がいた。


 「おい、どうしたんだ?」


 そばに駆け寄ると、彰人は心から心配している声音で千鶴に訊いた。

 しかし、千鶴は彰人の問いに答えることなく、その代わりに、目の前の掲示板に張ってある写真の一枚を震える指で指差した。

 その写真は昨日の服屋でちょうど千鶴が琉璃とマユとで彰人にしがみついている時の写真だった。


 「あれがどうしたんだ、っておい!大丈夫か!」


 意図がわからず、彰人は訊いたのだが、千鶴はそれに答えず、というか答えられず、事切れたようにコテっと横に倒れた。

 その顔は真っ赤に染まり、額は燃えるように熱かった。

 その原因は、ただ単に彰人にしがみついているところをバッチリ写真に撮られた揚句衆目の的にされていることにより恥ずかしさの限界点を越えたためだったが、彰人はそれを重度の風邪だと考え、千鶴を背負うと、薫とともに保健室に急いだ――薫は真の原因に気付いていて必死の彰人の後を苦笑いを浮かべて走っていた。

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