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妹紹介パート



 「お兄ちゃん、起きて!どうせまた徹夜したんでしょ!」

 「だからもっと寝かせてくれぇ~」


 予定通りきっかり一時間後に鳴った時計を機械的に止めてもぞもぞと布団の中に這い戻って寝息を立てはじめた彰人を今度は姉のような口調の妹、桐塚琉璃(るり)が目覚まし時計に代わって起こしにかかった。

 琉璃は淡く茶色がかったショートが特徴で、それがくりっとした眼と小さな鼻という幼い目鼻立ちをより一層引き立てている。それに加えて背も低い方なので、琉璃は中学二年生なのだが、よく小学生と間違われる。あまり嬉しくないようで、間違われる度にかわいらしく抗議の声を上げた。

 そんな幼児体型の琉璃の攻撃に対抗して彰人は布団にくるまる攻撃を繰り出した。


 「だめだよ!学校に遅れちゃうよ!」

 「ガッコウ?何それ、OEECオーイーイーシー?」

 「何で学校がヨーロッパ経済協力機構になるの!しかも、もうなくなってるし!今はOECDオーイーシーデーだよ!」

 「えっ!いや、何で知ってんだよ!知らないと思って繰り出した究極ボケだったのに!」


 思わぬ切り返しに彰人は布団を蹴飛ばして遺憾を表明した。「機会があればどこかで使おうと思っていたネタなのに!」と続けて口走りそうになったことは死ぬまで彼の中で秘匿されることだろう。


 「それぐらい誰だって知ってるよ」


 そんな兄におざなりの対応をする琉璃。

 あしらい方を心得ているらしい。

 ちなみに琉璃はその容姿で誤解されがちだが、既に中学の範囲をすべて独学で履修した勉強が趣味の国内成績最優秀者の一人である。学校では百年に一度の秀才とうたわれいていて、何処の高校を受験しても合格すると真しやかにささやかれているほどだ。

 兄とは正反対と言える。しかし、幸か不幸か、学力に価値観を置いていない彰人はそんなことに劣等感は抱かなかった。


 「誰だって知ってるわけではないと思うが、それはそれとしてだ。何故学校に行かなければならないんだ?あのような場所は多感な子供に通わせるべきではない。考えてもみろ。上部に鉄条網が張り巡らされた完全包囲のフェンス。分単位の細かなスケジュール。教官の命令は絶対。男女別の共通の制服。これらのことは何かを彷彿とさせないか?」

 今度こそあっと言わせてやると言わんばかりの顔で彰人が言った。


 「ん~、自衛隊?」

 「その通りだ!学校はまるで兵士養成所じゃないか!学徒は兵士じゃないんだぞ!上からの命令に逆らわない従順な子供を作ることを念頭に置いた教育制度では子供から自主性や個性をなくす!自主性や個性が叫ばれているこのご時世において学校は反乱分子なのだ!俺はそんなところには行かない!!というわけで、俺は二度寝します」


 彰人は選挙期間の街頭演説のように力強く言い放つと、打って変わっていそいそと蹴り飛ばした布団の回収に着手したが、

 「…………頭は悪いのに、屁理屈だけは一人前だね」

 「ぐふっ」

 琉璃の容赦ない痛烈な言葉に心を刺し貫かれて敢なく倒れ伏した。


 「はい、布団回収ー」


 その間に琉璃は蹴飛ばされた布団を手早く回収すると、部屋を出ていった。


 「く、くそぉー。覚えておけよ!必ず知る人ぞ知るラノベ作家になってやるからな!」

 「何か言ったー、お兄ちゃん?」

 「何でもありません」


 捨て台詞のように情けないひそかな叫び声を上げるも、たまたま内容が判然としない声が耳に入った妹にその内容を問われると、すぐさま大人しく返答した。終始兄妹けいまいなのか姉弟していなのかはっきりしないやり取りだった。

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