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閑話パート(栞編) Ⅰ

 これはまだ、栞が高校一年の時ことだ。

 そして、彰人が高校一年の時だ。



               ┠╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂┨



 「ねえ!びっくりでしょ!」

 「うん、びっくりするね」


 栞は幸先さいさきよくできた友達と一年のクラスが並ぶ廊下を談笑しながら歩いていた。

 食堂で昼食を済ませた帰りだった。

 そのため、弁当を食べ終えた生徒が教室から廊下へ溢れる時間帯でもあり、廊下は生徒でごった返していた。

 季節が夏だったこともあり、廊下はちょっとした蒸し風呂と化していた。

 栞はそれにうんざりしていた。

 なら、教室にいれば、済む話しなのだが、実際栞は弁当を持参していて、初めのうちは教室で食べていたのだ。

 が、すぐにできた友達は毎日学食で、栞はそれに付き合わざるを得なかった。

 傍から見れば、実に楽しそうに話しているのだが、内心毎日さほど変わらない友達の出す話題にもうんざりしていた。


 そんなとき、栞はある者を見付ける。

 話すことにうんざりして、ふと少しよそ見をしたのだ。

 そのクラスがどのクラスだったかは、その時は知らなかったが、開けっ放しになっていた戸口から、頭を抱えながら、メモ帳と向き合っているある男子高校生を見付けたのだ。

 どうやら一人で何かぶつぶつ言っているようで、彼の周りだけ、異様な空気が漂っていて、寄り付く者の姿はなかった。

 しかし、何故か栞は、そんな男子高校生、つまり彰人から目を離せないでいた。


 「ねえー。栞ー、聞いてる?」


 話しを聞いていないことに気付いた友達に揺らされるまで、自分が彼の見詰めていたことに気付かないほどだった。


 「ていうか、今、あの男子見てたでしょ」

 「…………そうだけど?」

 「えー。絶対やめておいたほうがいいよ。変な噂ばかりで、いいことなんてないよ。顔は悪くはないけど……」

 「ちょっ、ちょっと。何勘違いしているのっ。そんなつもりなわけないでしょ。なんか変な人だなと思っただけだよ」

 「それなら、いいけど。本当に気をつけた方がいいよ。ずっとあんな感じだし」

 「そうなんだ」


 栞は友達の言葉を聞いて、彰人の再び一瞥を与えた。


 ――きっとあの男子はあれがありのままなのでしょうね。


 「ちょっと、本当にダメだよ!」

 「わかってるよ」


 そう答えて栞はいつの間にか止めていたあゆみを再開させた。


 この時、栞に僅かな心境の変化があったことは彼女自身でさえ気付いていなかった――いわんやその原因となった彰人が気付いているはずもなかった。

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