第九話 リンの努力
翌朝は昨日を教訓に早くに村を出る。が、もうこの辺は昼間もバンバン魔物が出るらしく。護衛のため魔法使いや剣士が商人や旅人についているらしい。村の魔術師や薬師も大忙しだとか。そうだろうな、あれに会って無事ではいられないだろう。
魔物がウヨウヨいるという話を聞いて自然と足が早くなる。昨日の魔物の戦いの時のツバキを見て少し安心したし、ニタの攻撃も効いていた。少しだけど。戦闘能力も上がったのか?
*
ああ! 視界に魔物がいる。やっぱり会うよな。
今度は一つ目。あ、これも予想通りだな。想像とは違うけど。岩の頭? いや、岩が二足歩行している。それに一つ目がついていると言った方がいいかも。また紫の煙が身体から湧き上がってる。もう一目で魔物だな。
これ、この剣で切れるのか? 岩だよ、岩。ってか他の剣士どうしてるんだー!?
なんて心の叫びと共に背中の剣を抜く。やるしかないんだから。
と後ろで呪文。え!?
頭からボヨーンとヘビが大量に降ってくる。リン気持ちわかるが意味ないぞ。魔物にヘビって。
とまた、呪文がおいおい後ろから怖いってニタ! あ、たくさんのへびが魔物の足元で凍っている。どうやら昨日話を打ち切って寝てしまったんでニタの話を聞きそびれていたみたいだ。ニタは新しい呪文が浮かんでたようだ。魔物は足元が凍って動けない。これで切りやすくなった。
「おりゃー!!」
思っていたよりもずっと硬さを感じなかった。この剣本物だよ。本物の勇者の剣なんだろうけど。魔物はまた真っ二つになっている。意外にもまた紫色の液体を流してる。岩じゃないのか?
「やるな!二人!!」
「え!? あ、うん」
リンは俺と目をあわせない。
「ああ、そうだね」
なんだか軽いニタの答え。どうやら偶然の産物らしい。二人とも挙動不審だ。特にリンが。
リンの魔法にニタが合わせたというか利用したんだろう。
「ニタ、新しい魔法浮かんだらすぐに教えろよ。びっくりするだろ」
「ごめん。昨日言いそびれて」
っていいながらツバキをチラチラ見てるし。
ツバキの話が優先かよ! 全くわかりやすい奴だよ。
リンは役に立ったと少し自信をつけたようだけど、あれ俺の頭にも降ってきたんだけど。まあ、ボヨーンってなるから痛くないんだけどな。その後は足場悪くて困ったよ。ボニョボニョして、実は。相手が動かないから助かったんだけど。まあ、でもリンの努力は認めてあげよう。
あの頃の俺なら絶対に人任せにしていたんだから。
さあ、もう魔物はこりごりだ。ってみんなも思ってるのかさっきよりも速足で進む。こんな魔物回避な勇者一行でいいんだろうか。
*
やっと村だー。ん? 街か。地図を見るがもうどこだかわからない。こんな大雑把な地図。世界地図かよ! あ、世界地図だよ。あー。この世界の地図なんだから。そりゃあ、大雑把だよね。って世界一周か?ほぼそうなるよな。着くのか? はたして着くんだろうか、魔王の城。