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第七話 羨ましがる俺

 ガサガサ

 うん? 周りを見回す。何かの気配がする。動物か?



 ガサガサ

 やっぱりする。そういえばこの一つ前の村でそろそろ魔物も昼にも出るって聞いたな。

 魔物か?




 剣がすぐに出せるように準備しておく。

 魔物ってどんなだろう。想像はゲームの魔物へ。俺の思い描く魔物はどちらかというと一つ目だったりなんかの動物だったりして、イメージ的には全く迫力がない。なんでこんなん怖いんだよ的な魔物だ。

 だけど、魔王を倒してくれと10年も勇者を育ててるんだ、魔物も怖い存在なんだろう。どうしようこのメンツ。というかここの魔物で不安なんて魔王を倒すなんて、夢のまた夢じゃないか!




 ガサガサ

 つけられてるのか?

 気配は一向に離れもせず近づきもしない。





 ガサガサ

 なんか面倒になってきた。いい加減、緊張が続かない。えーい。こっちから行ってやる!!





 ガサガサ

 そこだ!!

 俺の突然の動きにみんな驚いてる。ああ、もうそのまま驚いてて欲しい。また突っ込まれたら面倒だ。




「おりゃー!」

 思い切り剣を振り落とす。

「あー、危ないじゃない!!」

 へ?勢いで道の脇にある林の中の影に向かっていったので、相手を確認していなかった。てっきり魔物だと思ったのに。

 そこにいたのは……忍者?

 あの魔法使いに妖精までは許容範囲内なんですが、忍者ってどうなんだろう?しかも女の子だし。くノ一と呼び直しても同じだね。ここは異世界だ。そしてこの世界は洋風なんだよな。全体的に。なので受け入れ難い。いや、認めにくい。でも、目の前にどう見たって忍者の格好した少女がいるんだよな。同い年くらいの。




「あ、あの。ずっと俺らをつけてた?」

 とりあえずあのガサガサの主か確認。

「えー! バレてたの? また失敗かあ」

 あー。練習してたのね。これこそ修行だね。ああ、ややこしいので関わるのやめておこう。

 と、後ろからぞろぞろと足音が。

「うわ! 忍者だよ! 本物かな?」

「すごいです! はじめてみました」

「私もー」

 ああ、この世界の忍者の認知度が見えてきたよ。どうやら存在は知ってるが見る機会はないのか、田舎にはほぼいないっと。

「ねえ、あんた達、変な団体だけど何かの集まり?」

 忍者に逆に質問されてるよ。そんな風に見えてたのか。多分リンの猫耳とジュジュのハチマキが俺らの異様さを引き立ててるんだろう。

「私たちは勇者一行だよ。魔王退治に行くの」

 リンにかかれば魔王もねずみのような扱いになってる。退治って。

「へー! 魔王! 君が勇者?」

「ああ」

 まあ、この中で勇者に間違われそうな奴は他にいないだろうからな。俺だけ、剣背負ってるしな。

「そう。魔王……」

 忍者の少女が何か考え込んでる。今の隙に元の道に戻ろう。こんな林の中だと本当の魔物が出てくるかもしれない。

「じゃあ。俺らは先を急ぐから」

 忍者を見ては何かボソボソと感想を言い合ってる三人を無理矢理、元の道に引き戻す。

 こいつら観光気分かよ。まだ、後ろを振り返ってなんだか言い合ってる。もう忍者は希少なのはわかったから!

 ふう、やっと道に出た。

「もう少し見たかった!」

 はい。ジュジュごねない。

「書いてみたかった!!」

 ボヨーンってなるのでやめようね、リン。

「可愛い」

 ニタ、ボソッと忍者に関する感想以外言わない。確かに可愛いかったが。って!!



 振り返ったら目の前にいる。さっきの忍者の少女が。

「あれ? なんか用かな?」

 まだなんかあるのか? バレバレな尾行しかできない忍者のくせに後ろを取られたのには気づかなかった。

「私も行く!」

「はあ?」

「魔王よ! 魔王退治に行く」

 また魔王、ねずみ扱いだけど。ええ!

「なんで? え!?」

「強くなりたいの!」

「いや、修行してたほうがいいんじゃない?」

「それじゃあ、強くなれない! 魔王退治!! それよ!」

 どうやらこの忍者かなり思い込みが激しいようだ。リンもだけど。

「あのー。家の人とかねえ。大丈夫かなー? なんて」

 軽く断ってみた。

「里には強くなるまで帰ってくるなと追い出されたから大丈夫!」

 この忍者、ポジティブだね。まあ、俺と変わらないけど。俺も村から出されたからな。目的は違うけど。

「なあ、トオルこう言ってるんだ。忍者だぞ! いいじゃないか。」

 ニタ、浮かれ気分で説得するな。顔がニヤついてるぞ!

 ああ、ジュジュはウルウルの目で俺を見つめているし、リンは空に忍者を描いてる。

 もうわかったって。どうせすでに異様な集団らしい。この際忍者がいても、もういいか。

「ああ、わかった。ただし、自分の身は守れよ。この集団、戦闘能力低いから他をあてにするな」

「もちろん!」

 自信満々な答えが帰ってきたけど、里を追い出される強さって・・・未知数だ。




  *




 忍者は名前をツバキと名乗った。忍者の里って和風なんだね、やっぱり。

 ツバキはすぐに少し待ってと何処かに消えた。移動速度はすごい速さだ。今わかるのはそれだけ。どこかに荷物でも置いてるのかな?

 本当に少し待ったらツバキが来た。普通の格好で。

「あー! だから忍者見たことある人少ないんだー」

「その格好でも可愛い」

 ニタのつぶやき。

「忍者って普段そうなんですね」

 それぞれの感想が出たところで出発。ツバキはただ着替えただけだった。

 一人増えたのになんか強くなった気が全くしない。




  *




 あれ? そういやツバキ刀を背中に装備してたよな? 今の姿で刀はどこにもないし、隠せる隙間ももちろんない。荷物すらない。

「ツバキ刀は?」

 これは大事な質問である。戦闘能力に関わるんだから。

「ああ、ここに」

 と手のひらを合わせると青白い丸い光が出てきた。ツバキは手を離し光の中に手を入れる。刀がスルスルと光から出てくる。

「ああ、異次元魔法ね」

「それで荷物ないのねー」

「はじめてみました!!」

 ニタ食いつき過ぎだ。いや、俺の認識が甘かった。忍者に対する認識が。ここは魔法の世界なんだ。忍者だって魔法ぐらい使えるさ! あはは。って! なんで勇者だけ魔法が使えないの!?

 まあ、元の世界の忍者にそんなに詳しくないよ。でも、魔法かよ。いいなあ。それ、俺は背中が重いよ。

「もういいか?」

「ああ、ごめん。いいよ。直して」

 いいなあ。それ。

4人目です。さて、忍者の戦闘能力は?

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