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第十三話 大魔術師

「荷馬車の荷物を下ろしてあの場に置いてきたけど、荷物いいんですかあんなところに置きっぱなしで?」


 宿屋を探す途中、荷馬車を置く場所に行かないでなぜか街の入口まで戻ってきていた荷馬車の商人に聞いてみる。

あれ。怪我人を乗せるときに道端に置いてきた荷物の山はあのままでいいのかな? 今からあそこまで行って戻ってくるのは難しい時間だ。明日にまた取りに向かうのか気になったからだ。


「ああ、だからここで待ってるんだよ。荷物が来るのをね」

「え?」


 荷物を待ってるって魔法か? それなら最初から魔法でずっと荷物を運べばいいのに。魔法で運べたら危険なことなんてほとんどないし。


「荷馬車のルールだよ。事故現場に落ちてる荷物をみかけたら載せれるだけ載せて次の街にいる持ち主に渡すってね。まあ、完璧に機能してるわけじゃないけど、道に魔物の死骸を置きっぱなしにしないっていうルールと同じだよ」

「ああ」


 あの苦しい作業、魔物の死骸をどけるもルールだったっけ。


「じゃあ、倒れてた荷馬車の荷物もですか?」

「みんな始めから出来るだけ積めるだけ荷物を荷馬車に積んでるから、あの荷物全部は難しいだろうけどね。幸い荷馬車の持ち主はもう治ってるから今ごろ新しい荷馬車を調達してるだろう。そろそろここで荷物を待つんじゃないか」


 これが商人の中のルールか。そうして助け合わなければこの魔物地帯を生き抜けないからなんだろう。


「じゃあ、明日も頼んだよ!」


 と、商人は俺に声をかけてから、街のやってきた荷馬車から自分の荷物を自分の荷馬車に運び入れている。



 宿を取ってから、ジュジュとルート、それについてってるリンとツバキとニタを魔術師のところへ迎えに行く。荷馬車の魔術師もこの街の魔術師や薬師も加わりなんとか安静になるまでみんな回復したみたいだ。

 もうすることもないので帰ろうとすると、あの剣士が声をかけてきた。彼は比較的軽症だったので、救助がどんどん後に回されてるのを、ずっと我慢して待っていた。


「おい、あー、勇者!」


 そんな風に呼ばれるとは思っていなかった。足を止めて剣士の方に振り返る。


「なにか?」

「その、すまなかった。勇者がいると魔物が増えるなんて……迷信……変わらなかったよ。お前さんたちがいた時より魔物の数は減るどころか増えていったよ。勝手に思い込んで……済まなかった」

「いえ、いいんです。それは事実かもしれないし。たまたまかもしれないし。ならば危険を避けるのは当たり前です。じゃあ、お大事に」



 剣士に言った言葉は慰めでも何でもなく本当にそう思うから。俺なら避けるこんな危険を。俺は避けられないから避けないだけ。だから、俺を避ける人に文句なんて言えない。



 今日も疲れた! 結局バリバリに働いてしまった。が、あの湿布が効いていた。なかったら肩が上がらなくなってただろうな。

 トントン!


「はい」


 誰かわかってても返事してる、俺。ルートがやって来て軽口を叩きながら、肩の湿布のような物を交換している。


「なあ、それってなんなの?」

「ああ、これ? 魔法陣が書いてあって、痛みや疲労を取るんだ。治ってるのは自分自身の治癒能力だよ。ただの筋肉痛だけだからな」

「ふーん。ルートって普通の魔術師と少し違うな」


 ずっと思ってた疑問を聞いてみた。


「ああ、俺、魔術師じゃないぞ! 大魔術師だから」

「ええ? 大魔術師なんですか?」


 ニタは驚いてる。そんなにすごいんだろうか? そういや見たことないし、聞いたこともない。


「それって凄いの?」

「トオル! 大魔術師はフェアリーの卵に匹敵する程の力があるんだよ! 世界にも二十四大魔術師ってこの世界の最高の魔術師の中から決められているんだよ!」

 また微妙な数二十四って。まあ、全体にしたら希少か。フェアリーの卵に匹敵……確かに早さはやはりジュジュが勝つが完治させたり傷口も綺麗にしてる。……ってことは、ルート気づいてるのか?


「じゃあ、ルートもしかしてジュジュ……」

「ジュジュはフェアリーの卵だろ? 少し幼いから判断に迷っていたけどあんな治癒力は大魔術師でもできないからな。まあ、ほとんどの人は大魔術師を見ないからジュジュは大魔術師に見えているだろうけど。ハチマキで隠しても同業者は気づくよ」


 ルートに隠してたってことはないんだけど……まあ、怪しかったからつい言わなかったんだけど。

 あ!


「あのさ、ツバキの正体は?」

「な、なに? ツバキは身軽な剣士じゃないのか?」

「あーと、忍者なんだよね」

「早く言えって、あー! もう書き直しじゃないか。そういえば異次元魔法! どうりで見たことない魔法だよ!」


 やっぱりそうなるよな。


「ルートが怪しいんだろ! あんな魔物がウジャウジャいる塔に平気でいるし」

「三日間自分で自分を治療してたんだ!」


 それで、無傷で塔の上にいたのか。


「それを言えっての! 怪しいだろ!」


 まあ、言わなくっても怪しさがにじみ出てたんだけど。


「恥ずかしいじゃないか! 怪我して自分自身の治療を三日間もしてたなんて」


 そこ恥ずかしがるな! うかつに魔物がいる塔に入ったことを恥じろ!


「なんだよ。それ!」

「とりあえず書き換えないと! あと話してない事は無いよな? じゃあ俺、行くから」


 と、突然大急ぎで去って行くルート。まさかの大物にびっくり……だけど、戦力は全くないんだな。やっぱり。




 肩の魔法陣、変えてもらったんで痛みの引きが違う。横になったらあっという間に寝てしまった。

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