第五話 勇者一行の戦闘能力
少し訂正しました。
それにしても戦闘能力の低さでは誰にも負けない勇者一行ができあがった。
俺しか戦えないってどうなのよ。
フェアリーの卵は治癒専門らしいが、ずっと治癒しっぱなしだぞこれは。
と、ここまで考えてさっきの戦いを思い出した。あれ？ ニタってあの時何したんだ？
「おい、ニタさっき、ジュジュを助ける為に飛び込んでったけど、おっさんアツって言ったように聞こえたけど、お前何したんだ？」
「ああ、あれは、レメラです。魔法なんです。少し火が出せるんです」
すごく誇らしげだけど、暑っていってすぐ終わったってことは……
「見せて」
「はい！」
あ、違う意味にとって、はしゃいでるよニタ。ニタは呪文を唱えた。
と、ニタの指先に炎が……いや、火がともった。ロウソクくらいかなあ。
「他はないの？」
一応聞いてみよう。
「あります！ 見ますか？」
どんどんハリキリるニタ。また呪文を唱えた。
指先に氷のようなものが見える。と、俺にニタはそれを吹く。サブってこれだけ？
チャッカマンと冷風機ですか。
「他は……」
「もう、終わりです」
あ、残念そうだけど。大丈夫だぞ。ニタ。確認しただけだから。すでに絡まれてて小刀を、しかも引っ込むやつを持ってた時点で、ニタの能力はだいたいはわかってたから。
「ニタ、魔法をもう使えるんだな」
いいふうに解釈しよう。
「ええ！ 村で一番の魔法使いに習ってましたから」
村で一番があれねえ。
「そうか。あー、リンってあの魔法で出すものの硬さって変えられないの？」
「そうなの。全部この硬さになるんだよね」
このって言いながらリンは耳、あ、猫耳を触って言います。ああ、それも造形魔法で出したんだっけ。
「ジュジュは治すのみだよね？」
「はい。怪我や病気ならたいていのものは治せますよ」
嬉しげにみんな答えてくれたが結果、戦闘能力は俺しかない勇者一行だということが確認できただけだった。
まあ、勇者のお供だと宣言してるのはリンだけだしな。
＊
宿屋では二部屋に別れて泊まる。ニタを見ていて、ふと思う。俺は魔法使いについての疑問をニタにぶつける。
「なあ。魔法使いってどうやったら強い魔法が使えるんだ？」
「修行です」
「修行って実際何するんだ？」
「さあ？」
おいおい、さあ？ って！ 知らないのかよ！
「お前もう魔法使ってんじゃないか！」
「ああ、あれは村一番の魔法使いの元で掃除や洗濯なんかしてると使えるようになったんです」
「掃除や洗濯って。え？ 修行は？」
「さあ？ これでうちでは限界だと言われて、知り合いの魔法使いのところに行くように言われて村を出てきたんです」
修行って下働きかよ。
「その掃除や洗濯してたら、呪文を唱えると魔法が使えるようになったのか？」
「いいえ。呪文が思い浮かぶんです。そうすると魔法が使えるようになるんです」
魔法使いの元で掃除や洗濯をする意味がどこにあるんだろうか。全然答えが見えない。
「じゃあ、リンやジュジュも同じか？」
「ジュジュさんはフェアリーですからね、最初から強い力を持ってます。修行の成果ではなく元々の力が成長と共に強くなるんです。で、世界樹に行くと最強となるんです」
「最強って？」
「ああ、蘇生が出来るって言われてます。まあ、世界樹にはフェアリーしか入れませんし、フェアリーになれば世界樹から出てこないので本当にそうかは誰にもわからないんですけどね」
蘇生って、そんな力があるのに世界樹にこもってるのか？フェアリーは。
「で、リンの造形魔法は？」
「僕とは違う分野なんですが、ほぼ同じだと思います。リンさん造形は完璧なんですけどね」
ああ、一番大事な触り心地が実物とは違い過ぎる。ボヨーンって。
「あれも、修行でなんとかなるのか？」
「さあ？」
ああ、聞いた俺がバカだった。ほとんど、さあ？ じゃないか。結局わかんないことばっかの魔法の世界なんだな。この異世界め！
