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第十一話 抗う勇者

 朝になり荷馬車へ向かう。ところが荷馬車の商人に俺たちの乗車を断られてしまった。昨日の俺のワザと魔物の多さとで感づいた剣士が伝説を調べて剣で俺が勇者だとわかってしまったようだ。

「今までの分だから、あの恨まないでね!」

 とさっさと商人が去って行く。

「どうする?」

「次を探そう」

 さすがポジティブなニタだ。

「そうだな」

 時間も遅いしさっき乗った荷馬車の乗った街は大きかった。ここでは選べる荷馬車が少ない。

 次々にあたるが方向違いやもうすでに戦闘員をそろえていたりする。

 だいたいなんだよ。昨日働いたのは俺達がほとんどなのに!しかも、剣士や魔法使いや魔術師をそろえる時間もないのか、逃げたかったからか、さっさと俺たちの抜けた穴でがあいたままさっきの荷馬車は出発してる。そんなに嫌か勇者は。まあ、魔物がもれなくついてきたらそうもなるか。

 自嘲気味になってたら、ニタの交渉がうまくいったみたいだ。よかった。

 商人っぽくない、いかにも自分も戦闘に加わりそうなタイプの人だ。俺に近づいてきて

「おい勇者だろ!」

 うわ!すぐバレたよ。せっかくあがったテンションは一気に下がって行く。いきなり断られるのか?

「勇者伝説!!俺も一員だな、な!」

 俺の肩をバンバン叩く。や、それはルートのさじ加減だし。

「魔物を切り倒すんだろ!勇者にお供が。ああ!楽しみだ!あと一人約束してる魔法使いが来たら出発な」

 ここにもいた、冒険者的な性格の勇者伝説好きが。ルートこの商人伝説に書いてあげてよ。

 約束の魔法使いが来たので出発した。さっきの荷馬車より剣士や魔法使いの数少ないけど大丈夫なのか?


 魔物の群れを見るたびに自分のせいだと思い魔物を切りまくる。地雷切りもする。一文字も。そして、俺の怒りの一文字がさらに進化を遂げて斬鉄剣とジュジュが命名した、かなり奥の敵まで広範囲で魔物を切りまくるワザまで出来上がった。危ないので俺の近くには誰もいなくなった。斬鉄剣が恐ろしいみたいだ。まあ、目の前の魔物の群れが一気に腰のあたりからスパッと切れて下半身しかいなくなるからな。ちょっとしたホラーだな。

 商人はすっかりごきげんになってる。勇者いいなあ。すごいなあのワザって呟いてる。よほどの勇者伝説好きなんだろう。

 魔王伝説にはみんな興味がないのかな?

 荷馬車に乗ってる時にもうすでにげっそりしているルートに聞いてみる。

「お前も書くんだよな、魔王伝説」

「え?ああ、そうだね。でもあれは、今回の魔王がどうだったとかを書き記すだけで伝説っていっても数ページ、魔王と魔物について書くだけだからね。それに実物見ないと書けないから」

 確かにここからじゃ書きようがないし、倒しに行ったその時だけしか魔王について知りようもないもんな。

 ルートもうしゃべれないようだけど、本当、誰のための伝説なんだ!!ただの娯楽か!?この世に平和をっていいながらちゃっかり伝説を書く人間まで用意してる。なのに、勇者は伝説を見てはいけない。誰の為の伝説なんだ。マニアかここにもルートとリンと商人が伝説マニアがいる。それだけの為なのか!理不尽だな。



 ようやく多分次が宿泊するんだろう街が見えた頃ホッと息をつく。かなり疲れた。暴れまわったせいでいつもより体力使ってるな、かなり。

 荷馬車を降りて宿屋を探す。この街は狭いな。荷馬車も少なかったし、宿屋は空いてるだろうか。

 と、何かボソボソとリンとニタが話してる。あ、頭をはたかれてるニタ。リンがあんなことするなんて珍しいな。

 すぐにリンが俺に向かってる来る。何の話か?

 バシっ!

 頭ではなく頬を叩かれた。なん?なんで?

「トオル!自分のせいだと思って、あんな無茶して!」

 と、今度は俺の右肩をリンがつかむ。

「痛っ!」

 痛さのあまりすぐにリンの手をよける。

「ほら!こんなになるまで!!勇者に魔物が寄ってくるのは、ただの言い伝え!勇者は魔王の城に、魔物の群に向かって行ってるから魔物が多くなった気がするだけ。もう無理…無理しないで。私たちもいるでしょ?」

 リンは最後の方は涙声だった。

 ああ、もうわかったよ。やけになってたんだ。自分は勇者じゃない、あくまで関係ない。とりあえず魔王の城に向かってるだけだって思ってた。

 それが大勢、船に乗ってた者、荷馬車の者を巻き込んでた。ジュジュやリンやツバキやニタを巻き込んでたってそう思うとやらずにはいられなかった。今までの分もって。

 だけど、それがみんなに負担をかけてたみたいだ。ジュジュもツバキも涙ぐんでるよ。

 って!!なんでルートまで!!

「わかった。無茶はしない。約束する」

「明日はなるべく戦闘しないで、肩を治してよ」

「わかったよ。ほら、早く寝よう。疲れたし」

 と言って、その場を逃げた。


 宿屋の部屋に入り、ニタに肩を魔法で冷やしてもらってた。便利だな魔法。何となく魔法使いのはじめの修行が掃除や洗濯だった意味がわかってきたよ。火や水を使ったりして操ることからはじめるんだな。

 トントン!!

 おいおい!さっきの涙目はその場のノリかルート!

「はい」

 なんで、素直に入れるんだろうなニタ。お前が一番迷惑してるのに。

「冷やしてたのか。ちょっと代わってくれ」

 ニタが場所を譲り、ルートが俺の肩に手を置き呪文を唱える。

「勇者伝説を散々読んで来たけど、勇者に魔物が集まるって聞いて一人で魔物を切りまくった勇者はいないよ。お前本当変わった勇者だよ」

 肩の痛みが徐々に消えて行く。ルートの魔法は本物だ。

「勇者だなんて認めてない。まだ、魔王を倒せる気なんてしない」

「抗うのか?ほんに変わり者の勇者だな。その髪も剣も全てが勇者を示してるのに」

 でも、俺に出来る訳がない。この世界を救うなんて。

「ほい!」

 バシって、なんか肩に貼られた、湿布みたいな物か。肩を冷やしてくれているのか、痛みがおさまる。

「これ貼って一晩寝ればだいぶマシだな」

「あ、ありがとう」

「じゃあ、おれは執筆活動があるから、行くわ!」

 ルートはそのまま部屋を出て行った。ルートって思っていたよりもずっといい奴なのかな?

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