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第八話 魔王伝説

 そこからは地道な戦いだった。囲まれては止まって戦い。また運ぶ。できるだけ道じゃない場所へ誘導してみた。熊なのか?すごい勢いで爪で切り裂いて来るのをかわしつつ道の外れまで行ってこちらから切ろうとしたが、何箇所か切られてしまった。かすり傷だって一番わかってるのに、涙ぐむジュジュ。俺から離れないリン。大丈夫だって。幸い熊の爪には毒はなかったし。ツバキも何度も大丈夫かと聞いてくる。


 やっと街が見えてきた頃にはクタクタだ。地雷切りも何度か使ったんで疲労も大きい。

 結構大きな街だな。そりゃそうか、荷馬車はここに来たかったんだもんな。それにしてもここまでの危険を冒しても商売するんだな。船もそうだったけど。船を降りる時荷物がドンドン運ばれていった。きっと帰りも荷物を満載するんだろう。この荷車も荷物の隙間に俺らがいる。平和な時は全て荷物だったんだろうな。


 もうただの旅人は見なくなった。代わりに商人が剣士や魔法使いや魔術師を雇う数が多くなってる。これだけ魔物に襲われるんだ。人手が足りなかったじゃ済まないもんな。切り裂かれた服を見て思う。なぜ魔物は人間を狙うのか。手当たり次第に暴れまわってるのか?



 街に着いて荷馬車を降りる。交渉の時に金額を言ってなかったんだけど一人ずつ報酬をもらえた。魔術師は少ない額だな。ジュジュももちろん魔術師扱いだ。

 はあー。結構なアルバイト金額だけど命がけだったことを思えば少ないな。それにしても平和な時に剣士や魔法使いは何してるんだ?魔法使いは使い道ありそうだけど。剣士は必要なさそうなんだが。



 宿に入り部屋で少し休んでニタに聞いてみる。それにしても、俺ってこの世界で育ったわりに何にも知らない。剣術や体力をつける事にばかり時間をとられて何にも知らずに育った。ニタが呆れ返るぐらいに。

「なあ、平和な時、魔王がいなくて魔物もいない時あるんだよな?」

 確か何百年に一度魔王と勇者が現れるんだよな。そして魔物も出てくる。

「うん。そうだよ。こんな時に生まれるなんて運悪いよな」

 いや、俺に同意を求めるな。勇者だから。この為にこっちに転生してきたんだから。多分。

「じゃあ、平和な時に剣士や魔法使いって何してるの?今は魔物と戦ってるけど」

「ああ、魔法使いはその力を戦いではなく、いろんな事に使ってるよ。今さっきも使ってたじゃない。船を動かしたり、灯りをつけたり、荷馬車も」

 ああ、そうか。船長も魔法使いだった。全く外見からはわからないが。やっぱり船長が良かったな。5人目。

「剣士は闘技場で戦うんだよ」

「え!?なんで?」

「闘ってるのを鑑賞するんだよ。闘技場は街の外れにあるんだ。結構大きいから。今は魔物が住み着いてるかもな」

「そうか」

 なるほどな、それで剣術が伝わり続けてるんだな。もしくは、そうやって次の魔王の時に備えてるのかもしれないな。必ず現れるんだから。

 あれ?何で?何百年にって言ってるのに次がわかるんだ?リンも船長もルートもそして村の魔術師と村人、みんな伝説読んで知ってたっぽい事言ってるがそれは前の魔王と勇者の話だよな?なんで次がわかるんだ?

 ああ、ニタ勇者伝説にうとそうだよな。俺が魔王倒しに行くって言ったのに俺を勇者だって思わないくらい。まあ、一応聞いてみよう。

「それでさ、なんでみんな魔王や勇者が現れる時を知ってるんだ?」

「ああ!それは魔王がこの世界に現れる前に世界中の空が紫色になるからだよ。5日紫色の空が続いて、そこから十年後に成長した勇者が旅立つって決まってるから。勇者伝説じゃなくて魔王伝説にそれは記されてるから」

 なに!魔王にも伝説があるのか?書くのは誰だよ?っていうかニタ知ってるじゃないか。かなり詳しく。

「魔王の伝説って誰が書いてるんだ?」

「勇者伝説と同じ人だよ。魔王の伝説なんだから、魔王の城に行って魔王の最後見届けないと書けないだろ?」

 そうだけど、魔王にも伝説が必要なのか?っていうかなぜ勇者伝説を毎回書くんだ?

「その伝説って、何のため?」

「うーん。さあね。教訓とか?」

 ニタの話が曖昧になってきた。

「教訓って勇者が読んだらダメなんだよな?」

 未来が変わるから読んだらダメってリンに言われたけど。

「さあ、あんまり詳しくないし」

「読んでないのか?どっちも」

「うん。ないよ。さっきのはまあみんな知ってる話だから。詳しく聞きたいならリンかルートに聞けばいいんじゃない?」

 あっさり切り捨てたな。みんな知ってる事…この世界の育ての親や村中が俺には隠してたんだな。隠し過ぎだよ。世間知らずが出来上がったし。

「いや、ちょっと気になっただけだから」

 リンもルートも聞いたら話止まらなくなって、また聞いたらいけない事も聞きそうだからな。



 それから俺たちはすぐに眠った。明日は久しぶりにゆっくりできる。いや出来ないな。街が大きいのを見て三人娘ははしゃいでたしな。明日はその調子で街中をはしゃいでる三人に連れまわされるんだろう。

 ルートは宿で書きたいと言って、即断ってきた。誘ってないが、三人が街を歩きながら話をしてるのを聞いて。一応誘った方がいいか迷っていたけど、向こうから言ってくれた。まあ、昨日の様子だと本当に書きたいんだろうな。睡眠を削ってまで書いてたし。

 ただな、魔王の城に行ける気がしないんだよな。ルートそういう話のオチでもいいんだろうか。勇者伝説。そして会うかわからない魔王の魔王伝説。

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