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第二十五話 下船

「トオル!! トオル!!」


 ジュジュの声だ。また、俺は気を失ったみたいだ。最初の日に戻ったように、今度は右腕がジュジュの手の中にある。

 最初の日と違うのはニタもいること。どうやら戦闘は終わったみたいだな。


「ああ、ごめん。魔物は大丈夫?」

「うん。もう終わったよ」


 リンまた涙目だし。サメにやられたら予想以上な傷跡だった。あの歯、いや、牙は凄すぎる。サメ恐るべし。腕があってよかったよ。


「今度のは疲れだよ。地雷切りやり過ぎたんだと思うから、心配するな」

「うん。うん」

 リンは言葉が出ないのか、頷くだけ。

「腕は痛むか?」

 ツバキがこちらも涙目で、聞いてくる。今もジュジュの手の中にある腕の傷は全て塞がってない。あの傷口だ相当治癒に時間かかってるみたいだな。

「もう痛みはないよ。みんなは大丈夫か?」

「うん。みんな大丈夫だよ」

 ニタもかなり疲れが出てるな。


 あー、でもキツイ。正直寝てないのは怪我した身体に響いている。

「ごめん。ここで少し寝ていいか?」

 ジュジュの膝枕だ!とか気にしてられないくらいに疲れてる。

「うん。お休み、トオル」




 あっという間に眠りに落ちて、どうやら治癒が終わり寝床に運ばれたらしい。目覚めたらベットだった。窓の外を見ると夕方。そして、船は止まっていて街が見える。どうやら到着したようだ。


 すぐに廊下に出てみんなを探す。どれくらい寝てたのかわからない。みんなあの後大丈夫だったのか?



 激闘だったみたいだ。今、ジュジュはニタを治癒中だ。

 リンのメイド服もツバキの服も所々というかかなり切れている。

「大丈夫か! そこもここも、こっちも!」

 数えきれない服の切れ跡。

「大丈夫。ジュジュにちゃんと治してもらったから」

 肌が出てるからかリンは恥ずかしそうに大きく切れてる箇所を手で抑えている。メイド服は恥ずかしくないのに、それは恥ずかしいんだな。

「そうだよ。全部治してもらってるから」

 やっぱり服の切れてる場所全部怪我してたんだな、ツバキ。ツバキ、さすが露出にこだわってるだけあるな、恥ずかしさが全く見えない。こっちが目を背けてしまうだろ。隠せよ! 少しは。

 とにかく人前に出ていい格好じゃない二人。

「二人とも着替えて来い。下船するまで時間あるかわかんないからな。ついでに荷物もまとめとけよ」

「うん。わかった」

 リンはそういうとそそくさと部屋へ行く。

「ああ。じゃあ、後でな」

 ツバキはマイペースに動き出した。なんだよこの差は。



「ニタ、大丈夫か?」

 もう傷はない。浄化中かな?

「うん。今、毒をとってもらってる」

「この貝の毒なかなか取れなくって」

 ジュジュはこちらを見ずにニタの足に集中している。

「そうか。じゃあ俺は、下船の準備でもしておくから」

「うん」

「ああ」

 ジュジュの治癒を邪魔したら悪いんで退散する。



 船長を見つけた。結局、いくらの船代か聞かずに乗ってしまった。これ、マズイよな。どうしようか、すごい値段言われたら。実際他の船はすごい値段だったしな。

「おう、坊主!」

 船長最後まで俺を坊主扱いだな。まあ良かった、話かけてくれて。

「あの、船の料金は……」

 聞きにくい! いくらになるんだ。

「おお! そうか。うーん。今回はいらないよ。逆に払いたいぐらいだが、こっちもいっぱいいっぱいなんでな」

 良かった。……いっぱいいっぱいなのに俺らを乗せた船長。そんなんだからいっぱいいっぱいになると思うが。

「ありがとうございます!」

 ここは素直に船長の好意を受け取ろう。

「明日の朝に出航するからゆっくりしていけよ」

 ニタ達の方を見て言ってる。周りも大勢治療されてる。夜番を呼ばないまでも、昼番は魔物の大群にやられていたんだろう。

「はい」

「勇者伝説楽しみにしてるからな!」

 そう言って去って行く船長。絶対、船長は勇者伝説のファンだな。



 船代がタダになったら安心した。まあ、ほぼ勤務状態だったからな。

 部屋に戻り荷物をまとめる。ニタの荷物もした方がいいかな? 迷っていたらニタが来た。

 俺はベットに座りニタの荷造りをボケっとしながら見ていた。

「トオル。今日はこのまま宿屋に行って、明日はどうする?僕の服もボロボロだし、ツバキもリンも着れなくなってるだろうし」

 ニタ後ろからでもわかる。耳赤いぞ。ツバキのあたりで急に赤くなった。まあ、あのツバキの姿は赤面ものだからな。しかも、本人が全く隠さないしな。

「みんな疲れてるし、服を買い足したりゆっくりするか」

「そうだね。明後日から出発でいいね」

「ああ」

 ん!! そうだ! 船長が言ってたよな、今度の街の北側に勇者のマントがある塔があるって。

 どうしよう。これってもう俺が聞いたから行ってもいいのか? うわ、どうしよう。スルーしたらダメだよな。っていうかそのマントが是非とも欲しい。

 こういうことか、勇者は勇者伝説を読んではいけないって。知ったら知ったで動きづらい!



 ニタの荷造りが終わったので、ジュジュ達の部屋へ行く。


 トントン


 ノックすると、すぐに返事がある。


「はーい」

 リンの返事だ。


「もう荷造り終わったか?」

 まあ、無理だろうな。ジュジュが遅かったから。


「まだなの!」

 ジュジュの焦った返事。予想通りだな。

「食堂で待ってるから急がなくていいぞ! ジュジュ。出港も明日だから」

「わかった」

「はーい」

「うん」

 なぜ三人分の返事が帰ってくるんだ。先に部屋にいったツバキとリンもまだ荷造り中なのか?



 とにかくニタと食堂で待つ。

 ニタと話をしている間もずっと塔をどうしたらいいか迷っている。船長いわく勇者のマントとお供も何かあるみたいだ。まあ、それもどうせ一回キリだろうけど、やっぱり持っておきたい。

 どうせ塔は魔物がいるんだろうがこれだけ魔物を切ってきたら、塔に魔物がいたってそんなに気にならない。


 船に乗る前とじゃあ、大違いだな。乗る前は魔物から避けるように旅してたもんな。まさかの船での成長だな。



「トオル! お待たせ」

 ニタも待ってたけど、リン。

「じゃあ、行こうか」

 立ち上がった俺にツバキが聞いてくる。

「あれ? 船代の支払いは?」

「船長がいいってさっ」

「ラッキーだね」

 ニタが言う。今まで話をしててニタ、船代の事を聞かなかったけど、船代いくらになるか不安じゃなかったのか?




「さあ、行こうか!」



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