第十七話 船長
とりあえずまだ、戦闘態勢だからと四人は甲板に向かっていった。なぜかジュジュもツバキとリンが両脇を抱えるように連れて行かれた。まあ、いいか。
さあて、着ないとな。まずは無難なツバキのから。
なんでこんな変な集団になったんだ。妖精にメイドに踊り子に高校生で俺。どう見ても勇者一行じゃないな。どんどん勇者から離れて行ってるな。
ご飯を食べて交代だけど、ツバキめっちゃまわりに見られてるよ。ああ、ツバキに注意したい。なぜニタは平気なんだ。まあ、ニタの意見はツバキにサラッと流されるんだろうけど。ここから見てると異様な団体だな。せめてリンのメイドはどうにかしたかった。なぜメイド服を売ってるのか疑問だらけだがもう着ている。今更だな。次の街での買い物には是非参加しないと。どんどん変な方向に向かっていく!
*
「交代するぞ!」
船長の一言で入れ替わる。
「トオル。気をつけてね」
「ああ」
ジュジュは心配そうだな。
「服、着てくれたんだな!」
「うん。着心地いいよ。ありがとう」
「うん」
やたらと素直なツバキの後ろ、むくれたメイドがいるよ。自分のあげた服を着なかったから怒ってる? リン。
「リン。明日は着るよ。ね。うん」
ポンポンと頭を撫でてなんとかしようと頑張ってみる。
「うん。明日ね」
あれ? あっさりメイドの機嫌が直った。なんだかわかんないが良かった。
さあて、今日は何が出るか。魔物だけどな。
*
「おう! 坊主! 街は見たか?」
「いいえ。寝てました。出港してから起きたんで街を見るのは見たんだけど、大きな街ですね」
その大きな街に俺はしてやられたんだけどな。
「ああ、でも次の最終目的地の街はもっとデカイぞ。なにせ海の中心地だからな、世界中の物が集まって大にぎわいだ。まあ最近じゃ魔物が増えて徐々に衰えてるがな」
「へえー。」
他人事な返事をしているが他人事じゃない! 世界中って!! 何でもあるんだろ? ヤバイ。あの三人が理想の服を見つけるんじゃないのか。
俺の焦りとは関係なく船長の話は進む。
「まあ、勇者のお前には関係ないな。しかし、お前の連れてる連中すごいな」
「ああ、まあ」
そうだよな。すごいよな。俺もそう思ったよ傍目で見て。
「最初に乗せた時は人数合わせ程度に見てたんだが……」
やっぱりそうだったんだ。
「いや、あの魔法使い若いからかな、成長が早いな。もう火柱まで出すとは」
え!? 火柱? 聞いてないよ。俺。え!? ニタ、俺に服を見せてる場合じゃないよな?
「それにあの刀の子も素早く次々と切り倒してくし」
そういえばツバキの切り口がさらに深くなってた。魔物のダメージが大きくなってる。
「あと、あの造形魔法の子も魔物を一度に落としてくれるから大助かりだよ」
まあ、丸、三角、四角なんだけどな。
「あとは、フェ……あの子だけど」
「他の人も治癒してるんですか?」
フェアリーの治癒についてはわからないけど、頻繁に使ったらいけさそうだけど、この船内だ。負傷者が大勢いてもおかしくない。
「いや、魔術師がたくさんいるからな。それにそんなに負傷者出てないよ。あ、でも昼間に君んとこの魔法使いが胸を切られてたとか。その時には頑張ってくれたよ。胸の傷だとただの魔術師じゃあ、なかなか治らないからな」
「え!? ニタが!」
それで服買ってたんだな。胸を切られたなら服はボロボロだろう。っていうか! 服の報告が何で優先なんだよ。大事な話は後回しか!
「聞いてないんだな」
「ええ」
「心配かけたくないんだろうな。君たちは仲がいいな。勇者伝説には仲睦まじい勇者達はいなかったなあ」
そうだな。俺たちってなんだかんだと仲がいいな。俺にとって向こうの世界では仲が良かったのはただ一人だったのに。こっちに来たら4人もできるなんて。しかも魔王を倒しに行く旅なのに。
ん? というかなぜに船長は知ってるんだ。そんな細かい話を。まさかずっと起きてる程タフなわけないよな?
「あの、船長なんでそんなに詳しいんです? 昼間も起きてるってことはないですよね?」
「ああ。昼間は副船長が仕切っている。もちろ副船長が船も動かしてる」
だよな。眠ってる間も魔法かけてたらすごいよな。
「昼間に起こったことや変化は副船長から細かく報告受けてるからな。まあ一応俺が船長だからな」
そりゃそうだな。こんな危ない航海してるんだ。昼間の戦力も戦闘の様子もちゃんと聞いておいて把握しないとな。って“一応”船長なのかよ。
あ! それでか。報告だけだからか。服装についての話がないのは。
「しかし、変わった服装だな! お前たち! 見てて面白いよ」
バッチリ見られてたよ。
「あはは」
笑っとこう。明日は俺も仲間入りだ。言い訳するだけ苦しくなる。