第十六話 服のプレゼント
目が覚めたら夕方になっていた。まあ、いつもの事なんだけど。でも、一応興味があるんで窓の外を見る、お! 動いてるが岸が、街が見えた。大きな街だな。きっとあの三人張り切って買ってんだろうな、服を。
ああ、感想だよ。考えとかないと、きっと感想を求めて来るんだから、詰まると拗ねるからな。
トントン
「トオル起きてる?」
リンの声。もう来たよ。まだ何も考えてないのに!
「ああ」
って、早い! 部屋の扉を開けて四人入って来た。ってニタお前ここの部屋だろ。なに一緒にノックで入ってるんだよ。
はい。では解説。
ジュジュは妖精っぽさに磨きがかかってる。ワザと? ワザと、バラしてるの? ファンタジー色が濃くなってるが、なぜそんな服があるんだ。
そして……リン。目指してたのは猫耳だったよね? なぜにメイド服を着てるんだ。ってか、これこそなんで売ってるんだよ。いや、そりゃあ可愛いんだけどね。でも、魔王倒しに行く気ないでしょ? 完全に。
はあー。ツバキはやっぱり勘違いをしている。露出が増えてるし。もはや忍者の面影なし。どちらかというと……踊り子。そう踊り子だね。
で、なんでかニタまで衣装変わってるんだが。ニタは嬉しそうに服とツバキを見比べてる。きっとツバキに勧められて買ったんだろう。しかし、以前の魔法使いって感じの服から……ただの高校生だな。私服だよ。魔法を全く使いそうにない。
何だこれは!! ああ、みんなで見てるよ。ほら何か言ってくれって見てる。って、ニタもかよ!
「ジュジュ可愛いな。その裾のヒラヒラとか」
フェアリー丸出しで。
「そう!」
あ、嬉しそうにしてる。良かった。
「リンは、あの、可愛いよ。ただなんでエプロンがいるんだ?」
やっぱり聞きたい。なぜにメイド服なのかを!
「ほら、汚れちゃうでしょ? 魔物倒すのに。だから」
いや、魔物倒す服じゃないし、それにそのエプロンは魔物用ではない!
「ああ、そうだね。汚れるしな。だけど、動きにくくないのか?」
どうしても着替えて欲しい! 可愛いんだけどね。でも、戦闘には向かないでしょ。ジュジュは戦闘しないからまだいいんだけどな。いや、それよりそのメイド服を却下したい!
「私魔法使うんだから動かないよ!」
あ、ああ。終わっちゃたよ話。
次は難関のツバキ。
「ツバキあのそれは……」
「ん?」
やっぱり無理だ。褒めるしかない。
「あの可愛いよ。うん」
もう言葉がない。
あー。見つめるな! お前までが! なんでニタのフォローがいるんだよ。
「ああ、ニタ何か新鮮だな」
「そうなんだ! ツバキが選んでくれたんだ!」
ああ、俺の言葉じゃなくて、ニタはそれを言いたかっただけかよ。
「はい。トオル。トオルの分も」
「ほら破れちゃったでしょ」
「動きやすいぞ! はい」
破れたのは一着なんだけど目の前には三袋。三着あるよな。当然。
ああ、それでか! ニタが自分から服を買うなんて、変だと思ったら、これを選んでてツバキの一言に乗せられたんだな。
「ありがとう。見ていい?」
すごく気になる中身。すぐ知りたい!
「いいよ」
「早く見て見て」
「うん。いいぞ」
どうしようか。受け取ってみたが、嫌な予感しかしないぞ。
でも、やっぱり気になる。一つずつ開ける。一袋目はファンタジーな感じが少し袋から出しただけでわかる。が、広げて確認する。が、まだ着れる。良かった。これはジュジュだな、きっと。
二袋目を開ける。きっとリンだな。なんだろうリンの理想の勇者像なんだろうな。何とも言い難いご主人様感があるが、着れるのか? いや、着なくちゃいけないんだろうな。戦闘には不向きなこのスタイル。リンの視線が痛い。
うう、最後はツバキだ。どうしようか、すごい露出の服だったら。さすがに着れない。でも、着ないと怒るよなこれ。ああ、怖い! と思いつつ平気な顔を作って袋を開ける。え!? 意外に普通の服だった。今まで着てたのより田舎者感がなくなってる感じの服。これが一番着たいが、全部着ないとダメだろうな。心の乱れを隠しつつお礼を言う。なんでいつもこんなに気を使ってるんだ俺!
「ありがとう。大事に着るよ」
大事にで着る頻度の回数を下げたんだけど伝わってるのか?
「トオル。バンバン着てね!」
「もう毎日着てもいいから」
「戦闘にはこれじゃないとな」
撃沈。ダメだ伝わってないか。もしくは伝わったからダメだししたのか。
すでに目の前にいるメンバーがこの有様だ。もう船内で俺が何着ても一緒か。
船の中でほとんど交代での毎日だが、船が着いたら一緒に歩くんだよな。っていうか、また街に着くんだよな? そこでも買い物するんだろうな。もっと過激になったらどうしようか。すでにリンは目標に着地してるように見えるがこの上があるのか?