第九話 エビ襲来
目が覚めて窓の外を見ると夕暮れが近い。どうやら交代の時間かな? また食堂からのいい匂い。食べて寝ただけなのにお腹がすいてる。夜中の激闘を俺の胃袋が訴えてるかのようだ。何か音がする。廊下に出ると甲板での騒ぎが聞こえた。慌てて部屋に戻り剣を手にして俺は甲板へ走って行く。
エビが! 大発生したようだ。かなり侵入されている。これでは戦いはますます困難になるだろう。
手近な奴から切りにかかる。バサバサと陸地戦でも小回り切りの効果が出ている。
恨みがあるからエビ相手はムキになる。次々と真っ二つにするが、なんてことだまだ上がってくる。キリないって。
よそ見をしたのがいけなかった。
「トオル危ない!」
と、ニタの声に振り返るとエビが三匹並んでる。うわ! やばい。剣をかまえて一匹切ろうとするが端の奴の手が伸びてくる。無理だ。
ボーッツ!!
ん? エビが三匹同時に倒れた!? 倒れたエビの後ろにはニタがいた。倒れたエビは後ろ側が真っ黒に焼けている。一応怖いから焼かれた魔物に剣を刺しとく。
ニタ何をしたんだ。ガスバーナの火力じゃないよな? 今の。
それを話す時間はない。次々と魔物を真っ二つにして行く。後で掃除大変だな。これ。
なんて余裕が見えはじめたのはエビが上がってこなくなったからだろう。俺以外にも戦闘に気づいた者が参加したので何とか船に登っているエビは倒されている。あとは入れないように守る。ちょうど甲板がエビの残骸だらけで足場が悪くなってたんだよな。
戦闘終了。
エビを甲板から海へ放り投げる。みんな総出でやってる。なにせ足場がなくなるぐらい倒れてたからな。次は掃除。お腹がなる中、掃除する。いや、気持ち悪いからなこのままは。紫色の甲板。真っ二つってこういう時よくないな。サラッと切れないかな? サラッと切るイメージしながら掃除する。うーん。真っ二つにする気はさらさらないが切れちゃうんだよな。剣の切れ味よすぎと重さでつい。
掃除も終わって食堂へと行くように指示がある。ニタに聞くのは後だな。ツバキもリンもジュジュもいた。やっぱり遅めに起こされたんだな。
満腹になり甲板へ。もう一度誰も負傷してないか確認。まあジュジュが治すからわからないがその場合服は切れているから、念のため見ている。ちなみにツバキは露出が多い服なので太もも切っても服は無事だった。ある意味、戦闘向きな服装だ。
「おい、ニタ! 新しい呪文が浮かんだのか!?」
「うん。見てて」
おい! またここでやるのかよ!
ニタは船のはしに行き海に向かって手の平をかざす。すると手の平から炎が吹き出した。すごい! エビも丸焼けになるわけだ。火の魔法を戦闘で使ってるからかな? これも修行?
ニタ、一応場所をわきまえて魔法使ってたんだな。
「すごいな。これなら一度に大量に魔物をやれるな」
ああ、羨ましいよ。だんだん遠くも攻撃できるようになってるし。やっぱり魔法使いがよかったよ。勇者は剣って決めたの誰だよ!
リンとツバキとジュジュもニタと一緒に交代する。
「じゃあな。今日はジュジュ呼ばずに済むように頑張るからな」
「うん。トオル気をつけてね」
ジュジュ目が潤んでる。まだ俺やられてないから。
「いつでも呼びなよ」
いや、呼ばないようにするって言ったし、ツバキ。
「また明日ね。トオル」
ああ、リンの言うとおり、そうなんだ。そうなんだよな。明日になるんだ。
すれ違いまくりの勇者一行というか勇者だけ別行動なんだけど。
まあ、ニタ含めあとの三人が昼で、俺だけ夜なのにはその分割の仕方だけで意味がわかる。他の剣士や魔法使いを見なくても。夜は危険で体力も使うしハードなんだ。視界もよくないし。