第一話 船出港
翌日は船乗りとの交渉になった。船の料金がかなりの金額になったんで、戦闘できるとか治癒できるとかを売りに値切る。魔物が出てくるから、船の値段が高額になったと聞いたからだ。ちょっと船の上でも戦闘するのかと、うんざりするけど仕方ない歩くよりましだしな。
だけど、どう見ても怪しいし弱そうな集団だ、どこも受け入れてくれない。ヤバイよ。思ったより難航してるよ船に乗る前から。
「おーい! 坊主達乗る船ないのか?」
もう無理なんじゃないかと肩を落としていたら声をかけられた。船の上だ。見るといかにも船乗りだ! って男がこっちを見ている。
「はい。乗せてもらえますか? 戦いますんで! 治癒もできます!」
散々言って来たセリフを言う。
「アリストゼンまでで良かったらいいぞ!」
「どこだニケ?」
小声でニケに聞く。
「昨日僕が言ったところの辺り。」
「はい。お願いします!!」
今度は大声で男に言った。
「それじゃあ、乗って来い!」
「はい!」
やった。どうなる事かと思ってたけどなんとか船に乗れた。あれ? 料金交渉してないよな?
「いやー助かったよ。剣士も魔法使いもなかなか雇えなくって。じゃあ! よろしくな!」
船長はそれだけ言うとさっさと行ってしまった。雇われたのか? 乗客なのか? 疑問だらけの出港となった。
出港後にすぐにわかった。雇われてるよ。戦闘員じゃないのかよ! 船乗りも不足してるの言わないってないよ。
慣れない船で働く俺。ジュジュとリンとツバキが免除なのはわかるがなぜニタもなんだ!
働く俺に暇そうに話をしてる4人。理不尽だ!!
*
岸を離れてしばらくすると、やっと仕事から開放された。
ふうと息ついて休んでいると、声があがる。
「魔物が来たぞー!! 先端!」
見張りだろうか、上の見張り台らしきところから声が響き渡ってきた。
また仕事だよ。今度はニタもリンも、そして嬉しそうにツバキも参加する。ジュジュには後ろで避難してるように指示を出してる。
うわー。いきなり? いや、俺の想像だったよ。いや想像以上の迫力だけど。サメ。いきなりこれ出てくる? 鋭く何本もいや何十本いや百いくね。その牙剥き出しで船を登って来るよ。あーあ。船の先端完全に紫色だよ。例の煙でもう紫色になってるよ。何匹いるんだよ! サメ!
剣士も魔法使いも船の先端へ向う。
牙に注意しつつ次々に魔物をなぎ払う。魔物を船に乗せたらややこしくなるだろう、もちろん死骸の心配。後始末がな。登ってきた魔物をどんどんと海へと落とす。その隙にみんなの様子を見る。
別々に戦うのははじめてだから心配だ。
ツバキは大丈夫か? と見ると、やっぱり腕ぐらいバッサリとはいかなくて傷を負わせる程度だが、船に登って来てる魔物なのでツバキが切りつけると海に落ちて行く。どうやら大丈夫そうだ。
ニタはと見るとこんがり焼いてるよ。魔物。どうやら海の魔物は火には弱いらしく焼かれると悲鳴をあげて海へと落ちて行く。ニタ、意外に戦力となってるし。
リンも岩をゴロゴロと落としてる。岩で諦めたようだ。数多いから時間ないからな。
剣士もツバキぐらいの傷を負わせる程度だ。そんなもんなのか。
魔法使いはやっぱり迫力ある。一気に何匹も燃やしてる。やっぱり火なんだな。って、やっぱり俺も魔法使いがよかったよ。
一匹、一匹切って行くが、なにせこの剣重い。こんなに大量だともう腕の感覚ないんだけど。もう限界だってところで魔物の襲撃は終わった。
危ないんだけど。船の旅、いや移動?
どうやら一発で魔物を切れる俺が珍しいのか剣士がチラチラ見てくる。あ、剣の方だろうな。まあ、そうだろうな俺が剣士なら羨ましいよな。ただし! 魔法使いの方がずっといいが!
旅が本格的になりました。バトルに次ぐバトルです。