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第十三話 妖刀 如月

 貝の襲撃後、魔物に会うことはなく、なんとか街に到着。あの海岸沿いに魔物を攻撃したのが効いていたのか? 落ちて行った魔物、すごい数っぽかったしな。


 さて、ツバキのキラキラした眼差し。忘れてないって!

「じゃあ、武器屋を見よう」


 武器を売ってそうな店を見て回る。時々服屋に入ろうとするリンとジュジュを引っ張ってなんとか探す。リンとジュジュはわかるがツバキも一緒に服屋へ行こうとするのはどうなんだ! お前の刀探しだぞ!!


 お! ここいいんじゃない? なんか、いかにも老舗な武器屋って感じだ。

「ここ、見よう。ツバキ」

 ツバキの手を引き店の中へ。おお! なんかいいじゃないか! あ、店主がこっちを見てる………店主の俺たちの観察は終わりのようだ。店主は俺たちに興味がなくなったのかまた武器の手入れをはじめた。

 と、ツバキが俺の手を引きそのまま奥に行く。なんか見つけたのか? そこは、えー! ツバキもっといいのが壁とかに飾ってるよ。ほら、あの台とか。ツバキは一本いくら的な傘立てみたいにいっぱい立ててる刀の中から一本の刀を迷いなく抜き出した。


「つ、ツバキ。もっといいの、選んでいいんだぞ!」

 俺の懐の心配か? 安物だったら今の刀と変わらないじゃないか。ツバキ、魔物を相手にできる刀を選んでくれ。

「おお! 若いのそれを選んだとは!!」

 え? さっきの店主、席をたってこちらに向かってきた。

「ツバキ!! ここで刀を抜くなって!」

 ツバキは刀を抜こうとする。ああ、もう店内なのに。って!! なんだこの刀。鞘に入ってる時にはあんなにも普通な刀だったのに、鞘を抜いた刀は尋常じゃない覇気を放っている。


「す、すごい。なんだこの刀?」

「おお、これは勇者伝説の剣。お主が勇者とは」

 ここの店主も知ってるんだな、勇者伝説。勇者伝説って広まり過ぎな感じなんだけど。ってか、俺が勇者で不満かよ。まあ、俺もそう思うんだけどな。

「トオル、これ! これがいい!!」

 ツバキは取り憑かれたように刀を見ている。

「ほう、勇者一行に妖刀とは」

「妖刀?」

「世界に12本しかないとされる妖刀じゃ。これは如月という。妖刀の中でも一番の妖気をもっていると言われている」

 世界に12本ってなんか多い気がするのは俺だけ?

「そんな凄いのにここに入ってたけど?」

 そんな刀がなんでこんな扱いなんだよ!?

「妖刀は持ち主を選ぶ。この中に入っていても、妖刀が選んだ者しかこれを手にはしない」

 だからツバキはまっすぐにここに来てこの中から迷わずこの一本取り出したってことか。如月って妖刀にツバキが選ばれたってことか。


「あの、これで魔物を切れますか?」

 大事なことなんで聞いとかないとな。凄そうだけど魔物を相手にできる刀じゃないと意味がない。

「ああ、もう腕の一本スパッと切れるぞ!ただし、持ち主がそれなりに力を持たないとな」

 ああ、また修行なんだな。刀がいくらすごくても。


 うわー。でも、エライの選んでくれたよツバキ。俺の懐のさみしさに拍車をかけるぞ。

「あの、おいくらですか?」

 ついつい下から聞いてしまう。その間もツバキは刀を見てる。ニタもジュジュもリンも魔法専門なのでその辺の刀や剣チラチラ見てる。完全に興味がなくて暇してる三人。

「持っていけ!」

「え!?」

「妖刀は売り物じゃなく、持ち主を待っておるんじゃ。ワシはただそこに置いておいただけ。持ち主が妖刀を持って行くのは必然じゃからな」

「あの、じゃあただで、いいってことで?」

 確認してしまう。そんな凄い刀がただって。

「ああ。持って行ってくれ」

 あれ? なんか邪魔だったのか?この刀?

 まあ、いいか。魔物が切れる刀がただで手に入ったし。


 ツバキに渋々刀を鞘にいれさせて、俺たちは武器屋を後にした。


 何度も街中で刀を抜こうとするツバキを止めたり、ジュジュやリンが服屋に入ろうとするのを止める。なんか俺全く勇者感ないんだけど。


 とにかく宿屋へ。疲れた。なんだかいろいろ疲れた。




  *




 はあー。疲れた。もう寝ようとするとニタが真剣な顔で地図を広げて、こっちに見せてくる。

「トオル明日この街から船に乗るからね」

「え!? そうなの?」

「まさか、歩いて行く気だったの? 魔王の城まで!!」


 ああ。そうだね。行く気でした。田舎者は俺だけか。だから、ニタは海に向かってたんだな。船に乗る為に。

「いや。うん。この世界の広さの程度がわかんなくて。あはは」

 もう笑うしかない、俺のバカさ加減。が、そうか! 船に乗るのか、もしかして魔王の城の近くまで行けるのか?

「トオルって……」

 おい! 後の言葉はなんだよ! ニタ!

 まあいい。だいたいわかるから。傷口をこれ以上広げるのはやめておこう。


「なあ、どこまで行けるんだ?」

 俺の希望は魔王の城の真下の街! あ、でもこのまま魔王戦……無理だ。こんなに魔物から逃げ回ってるのに。

「ええと。多分この辺りだよ。さっきみたいに魔物が海にウジャウジャいるようになるから、ここまでが限界だと思うよ。何せ魔王の城が近くなるからね」

 海に魔物がウジャウジャ…ああ、思い出したあの貝を!


 ニタの指差した場所は地図の中間地点を少し過ぎた辺り。ああ、また道のりが遠くなった気がする。俺の希望が大き過ぎたみたいだな。


次話からは船にうつります。ここまで最弱チーム率いて魔物回避で来た旅。海でどんな冒険があるのか?

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