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第十二話 勇者の苦労と海

 それよりも、なんか異常に疲れた。警戒し過ぎ疲れだろうか?

 あれ? よく見るとツバキしょげてるよ。ああ、ジュジュも。なんだよ。勇者って慰め係り? 俺がこういう事態にした訳じゃないのに!


 まずは慰めやすいジュジュから行く。

「ジュジュ、ジュジュが力を使わないってことが一番いいんだよ。ジュジュが出てくるのは俺たちの誰かが怪我したって事だろ?」

「うーん。うん。そうだよね! そうかー。うん」

 立ち直り早くて助かるよ。あのでも、ジュジュ、俺に絡みついてこなくていいんだけど。


 ジュジュのご機嫌とりが終わった頃ツバキに挑戦! 難しいなあ。

 先にニタに情報を仕入れてみる。さすがこの世界の住人だ。田舎にこもって修行三昧な俺とは違う。まあ、修行を自発的にしてた訳じゃないんだけどな。村全体にはめられたんだが。

「なあ。ツバキ。あの刀なんだけどさ」

「え? 刀?」

 俺の意外な話の切り口にツバキが食いついて来た! よし!

「魔物にさ、歯が立たないだろ? 俺の持ってた剣もそうだったけど」

 もう邪魔なんで腰から下げてた剣はツバキに預けてある。

「うん。そうなの。加勢しても邪魔になる」

 ああ、ツバキがどんどんしぼんで行く。

「次は街みたいだからさ、探してみようよ、魔物にも太刀打ちできる刀を」


 さっきニタに聞いたのは次が街か村かだった。地図がすでに解読不可な俺では話にならないのでニタに聞いてみた。ニタはあっさり、ここの村と次の街を地図で指してくれた。あんなざっくり世界地図どうやって見てるのか気になるがまずはツバキだった。


「え!? いいの! トオル、ありがとう!」

 って、ツバキが首に巻きついてくる。ツバキには珍しい動きだが……今の言葉。俺のおごりってことだよね? 刀はプレゼントって解釈されたみたいだ。ああ、この懐さみしい旅なのに。ええい! もう! 仕方ない、経費だ。経費。

 ツバキの戦闘力が上がるんだ、仕方ない。

 ツバキ、嬉しいのはわかったからもう離れてくれ。ニタの視線が痛いよ。




 ふう、何とか二人の機嫌がおさまった。そんないい刀があるかはわからないが、こうして行き来している商人達がいるんだ魔法使いもついているが剣士もいる。きっと魔物用に作られてるのもあるはずだ。じゃなきゃ魔物に敵わない。





  *




 宿屋につき、ふと疑問に思い部屋で休んでいる時にニタに聞いてみる。

「なあ、ツバキのあの異次元魔法さあ。異次元に魔物をまるごと入れてやっつけるって訳にはいかないのか?」

 ふと思ったんだよ。お! それ便利って。

「ああ、それは危険だね。ツバキは異次元に荷物をなおしてるけど、ツバキはそこを固定しているんだと思う。魔物をそこと同じとこには送れないから、別の異次元に送るとなると別世界、つまり異世界に送ってしまうかもしれない。平和な異世界に魔物が次々と送られたらその世界は……」

「あー。それはまずいね。かなりヤバイね」

 俺の住んでいた世界にあの魔物が来るところ想像して、すぐに却下した。平和ボケしていて魔法もなく剣士もいない世界だ。あっという間に破滅だろう。俺は異世界をよく知ってるだけに実感がある。ありすぎる。




 ああ、残念。いい案だと思ったのに。まあ、それが出来るんならツバキがすでにやってるか。

 次の街にいい刀あるといいんだけど。


 地図で教えられた場所は何と元いた村からグッと下に下がって海の近くまで来てたみたいだ。おいおい! 遠回りじゃないか。ニタなんで言わないんだ。ただでさえ遠いのに! まあ、知らずにニタについて回っていた俺も俺なんだけど。




  *




 さあ、今日は港街っぽいとこまで出発だ。海のキワキワにある街だし、いい刀あるといいな。ツバキ! 俺にとっても。

 結構キツイんだよ戦闘後に慰めてまわるの。




 少し歩くとあっという間に海岸沿いの道に出た。うわー。海。懐かしい。変わらないんだなこっちの海も。

 ずっと村で育ったから、なんか感動だな。自然と足が遅くなる。海いいなあー。

 皆もそうなのか歩みが同じになる。皆それぞれの村や里で育ち、それぞれの事情で旅をしてる。海を見たのは初めてなんだろう。俺だけか海を見たことあるのは。あ、でもあれはこの世界の海じゃない!!!




 そうこの海は、この世界の異世界の海だった!!!




 忘れてたよ魔物の存在。しかも海から出てくるって。あーやっぱ一匹じゃないよ。あ、あれ? 魚人を想像してたんだけど、ことごとく俺の予想を裏切る異世界魔物。

 貝だなー。貝。でも怖いカッタカッタ開いて閉じて怖いよ。この海岸登って来たんだよね?人間探知機がついているのか? においか? あ、貝だけど。


 とにかく今上がった二匹で終わりかわからない。すでに海岸沿いには紫色の煙が上がっている。

「リン海岸沿いに岩を落として!」

「うん」

 ちょっと不服げなリン。もっと複雑なのが書きたいんだろうけど、そこのクオリティーは求めてない!

 リンの呪文が聞こえバラバラと岩が落ちる。

「ギャーギャー」

 何匹いたんだろうかなりの声が落ちてった。ヤバかった。


 とにかく残った四匹に集中だ。

「ニタ行くぞ!」

 あ、しまった命令間違い。あーあ、焼いてる。あれ? 意外に効果あるのか貝が倒れてる。あ、貝だもんな。ってそこか?

 なんて横目で見ながら一匹を縦切り、そのまま二匹目を横に切る。

 ニタも二匹目を焼いている。明らかに顔の貝を狙ってるね、ニタ。

 とりあえず、俺はニタに焼かれて倒れて、中身がすっかり見えてる貝じゃない、魔物を切る。そのあと、もう一匹も。必要あったのかな?すでに倒れてたけど。なんか中身が出てたし。まあ、いいかまたあの紫色の液体をみるのは気分がよくないけど、海岸沿いに沸き立つ紫色の煙の方がもう見たくない。

 さっきまでの足取りが嘘のように皆速足だ。あれって待ってたらすごい数になってた?想像するだけで嫌だよ。紫色の貝。しばらく貝、食べたくないな。

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