幼馴染みたちと同じ学校に入ってはみたが。
5月最後の日なので遊んでみました!
わたしにはキランキランな幼馴染みが3人いる。ほんとにキランキランだ。顔面偏差値が高すぎる。
そこの幼馴染みとは母親同士が大の仲良しで、今でも4人で買い物に旅行にと出歩いている。可哀想だからお父ちゃんにも構ってあげて。たまに泣いてるよ。
キランキランと言っても、それが顕著に表れたのは小学校高学年になってからだ。そして、そこに付随してくるのはおませな女の子たち。まだ男女の垣根がなかった頃は良かったけど、お互いに多少なりとも意識し出す年頃になるとキランの片鱗を見せ始めた幼馴染みたちに群がるようになる。そしてそんな幼馴染みがべったりべたべたにくっつくわたしを牽制しようとしてくるのだ。
正直に言えば、今も昔もわたしたちは変わってないのに、なんで無関係な子たちからやんや言われなきゃならん。と思ってるけど、そんなこと口に出すわけない。女は怖いのだ。いつの時代も。
ってな訳で、幼馴染みを説得して微妙に距離を取りつつ、フェードアウトをはかってみましてテへ☆
それがまさかこんなことになるとはね……。星出してる場合じゃないっつーの。
フェードアウトの賜物か、私立の全寮制中学に通った幼馴染みたちとは別に、公立の中学に通っていたわたしは今の生活に満足してた。休みの度に我が家へ来ては文句を垂れる幼馴染みたちの存在以外は。
そう。『同じ中学校に通おうね!』という約束をちゃんと無下にしてやった。小学校の二の舞にはなりたくないのだよ、わたしは。
非道いと言うことなかれ。女の嫉妬は面倒なんだ。それが男にわかってたまるか。
それが崩れたのが中学三年のゴールデンウィーク。いつも通り我が家へずかずかと上がり込んだと思ったら、
「ハル!勉強するよ!」
「苦手科目はなんだ。」
「学年トップのボクらがちゃぁんと教えるよん♪」
「結構だから帰れ。」
なんなんだ一体。わたしは今至福の一時なんだ。邪魔すんな。
「3年前、俺らと交わした約束を破ったんだから、高校こそは同じところに入ってもらうよ!」
「その為には今から受験勉強が必要だ。ゲームをしてる暇はないぞ。」
「元々ハルちゃんは頭いいから大丈夫だと思うけどねぇ~。念には念をってね!」
チッ。諦めてなかったのか。仕方ない。ここはおとなしく、
「イヤに決まってんでしょーが。大体あんたらの学校全寮制でしょ?わたしは家が一番好きなんだ!出ていく気はない!」
「受かる自信ないの?」
「ハッ。そんな見え透いた罠に引っ掛かるかアホ。受かる自信の前に受ける気もないわ!」
「なら仕方ないね。アキ!おじさんに連絡して裏口入学の準備を!」
「この手だけは使いたくなかったが、致し方あるまい。ポチっとな」
「相変わらず言うことがオッサンくさいなアキは。それよか!ナツ!堂々と裏口入学とか言うな!電話するな!入学させるな!」
「だってハルちゃんが悪いんだよ~?受験させてあげるって言ってるのに、それを蹴っちゃうから。心苦しいなぁ~みんなは実力で入ったのに、ハルちゃんだけ裏口かぁ~後ろめたいな~でもしょうがないよねぇ~ハルちゃんが受けたくないって言ったんだもんねぇ~。」
クッ……フユも相変わらず陰険だ。人の弱味に付け込むようなこと言って……
「~~~っっ!わかったよ!受験すればいいんでしょ!そのかわり!あんたらの助けはいらないからね!自力でやってやるわボケ!」
「やっとその気になったんだね!その言葉、忘れないでね!」
そうやって言質を取られたわたしは(ボイスレコーダーにも録られてた)、諦めることなくなんとかギリギリで落ちようと画策したが、この言葉に感動した母によってスベリドメを受けることが許されず、幼馴染みたちと同じ学校か中卒かを選択しなければならないという窮地に立たされた。
もちろん中卒はイヤだから泣く泣くあいつらと同じ学校に入学するハメになった訳だが。
入学して半年。わたしはブレザーに"ズボン"という格好でいる。これには理由があって。
入学するにあたり、わたしには一切触れるな・話すな・視線を寄越すなの三ヶ条を突き付けたのだが、『絶対イヤだ!』と言い張る3バカに母が一言。
『ハルちゃんも男の子になっちゃえば?そしたら女の子の嫉妬もなくなるわよ!』
とのたまった。
何を馬鹿な…とわたしは呆れ返っていたんだが、『それイイ!』と3バカがノっちゃったもんだからあら大変。
理事長であるアキの父親によってわたしは『男』として入学、『男』として入寮、『男』として生活をせざるを得なくなった。
アホか!!!親なら止めろっ!!!
そう思わんでもないが、おじさんの面白いこと好きは昔っからだから今更どうしようもない。
そして現在に至る。
「ハル~どったの?あ!俺が昨日寝かせてあげなかったから寝不足なの!?」
「誤解を招く発言はいい加減止めようかバカナツ。腐女子の皆さまにネタを提供すんな!」
「そうだぞナツ。寝れなかったのはオレのせいであって、お前のせいじゃない。ハルがねだるからつい、な。」
「だから!アキものっかるな!なんでか知んないけど、お前が言うとヤローどもが顔赤らめるんだよ!」
「んもぉ~二人してハルちゃんで遊ばないでよねぇ。ハルちゃんはシャイなんだからぁ~。イケナイ扉は、ボクと開くんだよね…?」
「開かねーよ!なんだよイケナイ扉って!やっぱ説明しなくていい!聞きたかない!」
毎日こんな感じだ。
キランキランな幼馴染みのせいでわたしまで注目を浴びる。まぁ女子の嫉妬やら嫌がらせがないのは良いけど、4人合わせて『四季』って呼ぶのは恥ずかしいからほんとにやめてほしい……。
「あ、悪い。このあと呼び出しされてんだ。もう行くわ。」
「呼び出し~!?俺のハルになんてことを!」
「どうせまた女子からの告白だろ?ハルがちゃんと出向くからひっきりなしなんだ。いい加減無視したらどうだ。」
「そ~だよぉ。ボクとその子どっちとるの~?」
「いや、今日は女の子じゃなくてヤローっぽいんだよな。なんか聞きたいことがあるとか。ま、すぐ帰ってくるから。」
「「「絶対行っちゃダメ!」」」
そう言ってわたしの行動を制限するのも日常茶飯事。なんなんだよ一体。
でもとりあえずこの生活にもあまり不満はない。4人一緒の部屋だけどちゃんと仕切られてるし、そもそも3バカはわたしを女として扱わないから周囲にバレることはなさそうだし。……まぁ腐女子に色々妄想されてるのは知ってるけど実害はないし。このまま平穏無事に暮らしていければいいな~。
なぁ~んて呑気なことを考えてたわたしが悪いのか。
このあと、実は3バカが水面下で争いあってたことも、女子にも男子にもモテてたわたしを取り合いになる抗争が起きることも、それを眺めてどんなカップリングが萌えるかを論争しあってた腐女子と貴腐人の存在も、この時のわたしには知るよしもなかったのだ。ってか面倒だなおいっ!
そのうちちょこちょこ加筆修正するかも……。思ったより短かったもんで。