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第2話 そして、王国と精霊の話

 ディメイラ王国。


 テインの生まれた王国は小さな国だ。

 『勇者』が生まれた国よりもさらに小さい国。

 すぐ隣に面しているのは、大陸一強大な軍事国家パルゲイア帝国、神を信仰する聖カルリナ神皇国、魔法大国ボーグイン。

 そんな、三つの大国に囲まれたディメイラ王国が、侵略もされずに何百年も歴史を重ねて来られたのには、理由がある。

 

 ディメイラ王国は、精霊に愛された国。それが大きな理由である。

 小さな王国には、他の国とは比べ物にならないくらい精霊が存在している。


 精霊とは、魔法を使う上で、力を貸してくれる存在である。

 魔力のかたまりのようであり、意思のある自然そのもののようでもある。だが、個人の魔力量によって、使える魔法のレベルが変わってくるので、おそらくは、呼び出した者の魔力を消費して自然の力を行使している意思のある“何か”なのではないかと言われている。


 精霊は、大きく分けて6つの属性が存在する。


 水属性

 火属性

 土属性

 風属性

 光属性

 闇属性


 中でも、光と闇属性が使える者はかなり限られている。光は、聖カルリナ神皇国の者しか使えないとされているし、闇に至っては『魔王』のみだ。


 だが、そんな限られた属性の精霊さえも、使える者がいないにも関わらず、ディメイラ王国には多く存在しているのだ。

 魔法使いたちに、「もし魔法を使いたければ、ディメイラに行け」と言わしめるほどである。精霊たちは、他国が悔しがるほど、ディメイラを愛しているのだ。

   

 もちろんそんなにもディメイラ王国が精霊に愛されている理由は存在するのだが、それは知る人ぞ知る、まさに国家の秘密とされている。


 そんな、精霊に愛された国は、攻めれば精霊の加護を失うと言われており、永く侵略の危機に遭うこともなく、長らく平穏な時代が流れていた。


 いや、長らく、平穏な時代が流れすぎたのだ…



 いつしか、人々は精霊の恩恵を当たり前のものとして享受し、感謝を忘れつつあり…


 そんな状況に、精霊が嘆き悲しんでいても、それに気付くこともない…


 愛されることに慣れきった人々は「約束」を忘れ、精霊を愛することもなくなり…

 

 国を離れる精霊も現れ始め……




 …崩壊の時は近い…






≪ああ またしんでしまった≫


≪しんだの?≫


≪あんなに あいしたのに≫


≪あいしていたの?≫


≪わたしは ここを さるわ≫


≪でていくの?≫


≪でていくの!≫


≪どうして?≫


≪あんなに あいしたのに あいしてもらえなかった≫


≪かなしいの?≫


≪わたしは あいされたい≫ 


≪わたしは どうすれば いい?≫


≪…あなたは どうしたいの?≫


≪…わたしは あのこを みていたい≫


≪あのこ?≫


≪あのこは あのこ≫


≪どんなこ?≫


≪あのこは あいを しらないこ≫


≪あいを しらないこ からは あいされないのでは ないの?≫


≪あいを しらないから あいされていても きづかない≫


≪あいされなくても いいの?≫


≪いいの≫


≪こうかい しない?≫


≪あいされなくても わたしは あのこを みつづけたい≫


≪こうかい しないなら そのこを あいしつづけなさい≫


≪ありがとう さようなら かぜ≫


≪さようなら いとしい こ≫




 その日、ディメイラ王国でふと一瞬、風が止んだ。


 崩壊は始まったばかりだ…

 

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