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#4-2

 役所から出たフリードはとりあえず宿をさがす事にした。しかしどの宿も満員で宿泊は不可能だった。せめてロビーで寝かせてくれと頼み込んだが拒否された。


ぐぅ~~~!!


「腹へったな。考えてみれば今日は何も食ってねえじゃねえか。てか今日はいろいろ有りすぎた」


 思えば今日はフリードにとって激動の一日だった。

 朝食も食べずに馬車に揺られ、昼時に賊に襲われ、そのまま町を目指してひたすら歩き続け、そしてかなり軽めにしておいたがオウカへの反撃も果たした。

 ここまで濃い一日になるなんて誰が予想できただろうか。


「そういや食料奪ったの忘れてた。どっか落ち着く場所で飯にするか」


 ぼやきながら夜の町を徘徊するフリードだった。





「はぁ~……」


 用意された部屋でオウカはベッドに腰掛けた。あの後役所の職員に賊に襲われたことや、王宮へ向かわねばならないことなどを説明していたら。すっかり遅い時間になってしまったのだ。


「今日は厄日ですわ……」


 今までオウカは辛い経験などしたことがなかった。

 第一王女ということで甘やかされて育てられた。あれが欲しいと言ったら直ぐに買い与えられ、あの使用人が気に入らないと言えば五分後には別の使用人がやって来る。願えば大抵のことは叶えてもらっていた。

 そんな幼少期を過ごしていたせいで何時しか自分は特別な存在なんだと思うようになっていた。


 しかし今日は何時もと違った。理不尽に命を狙われて危うく死ぬところだったのだ。そして生きるために折角購入した奴隷を手放すことになり、挙句の果てにその奴隷から暴力を受ける始末。彼女にとっては人生最悪の日だった。

 

「うぅ……まだ鼻が痛みますわ。何でわたくしがこんな目に。

 というか何が『 このままお前の奴隷として生きるよりも命懸けの ギャンブルをする方がまし 』よ!!信じられないわ!!」


 今朝までいいように扱っていた奴隷に反抗された事はオウカにとっては理不尽以外の何物でもなかった。


「はぁ~……もう今日は寝ましょう。だいたいあんな男の事で悩むのなんて時間の無駄ですわ」


 オウカは用意された寝間着に着替えて直ぐに眠りについた。







 ドオン!!


 突然鳴り響いた爆発に驚き思わず本を落とす。何があったのか尋ねると賊に襲われたと説明された。

 御者は必死に馬を走らせる。それでもいずれ追い付かれると言われ一気に血の気が引いた。

 そして遂には馬車に攻撃が直撃した。激しく揺れる馬車、御者がこちらを気遣い声をかける。そして--


「殿下!ご無事で--ウギャアア!!!?」


 目の前で御者が火に包まれた。




「イヤァァァァァァァ!!!」


 飛び起きたオウカが窓の方を見ると既に日は昇っていた。


「ハァ……ハァ……夢?」


 普段偉そうにしていても所詮14歳の少女、生まれて初めて感じた死の恐怖を昨日の今日で拭えるはずもなかった。


「今日は……やはり一刻も早く王宮へ向かうべきですわね」





 オウカが仕度を終えて部屋から出ると、さっそく役人に詳しい事情を聞かれた。オウカは昨日の夜と同じように説明した。


「そういえば、賊は全員統一感の無い格好をしていましたわ。ただの盗賊ではなくて寄せ集めの傭兵という印象でしたわ」


「傭兵ですか?しかしそうなるとそいつらは誰かに依頼されて殿下を襲ったのかも知れませんね。もっともただの傭兵から盗賊になったばかりという可能性もありますが」


 誰かに依頼されて、といわれてオウカは顔をしかめた。今後も襲われる可能性があるからだ。そうなると自分の別荘は既に押さえられているかもしれない。しかしかといって首都へ向かうのも危険が伴う。



「そうです!殿下、王宮から護衛を呼び寄せましょう!それなら安心です」


 どうするべきか悩んだところで役人から提案される。到着が遅くなるが仕方ないと断念し、その案を採用することとなった。


「それじゃわたくしは部屋で休んでいますわ。護衛が到着したら教えなさい」


 首都からの距離を考えて二、三時間はかかるだろうと考えてオウカはその間に仮眠をとることにした。悪夢を見たせいで満足に眠れていないのだ。

 しかしそれはできなかった。なぜなら--


「た、大変です!!」


 扉が外れんばかりの勢いで若い兵士が駆け込んできた。


「馬鹿者! 殿下の御前だぞ!!」


「し、失礼しました!! しかし報告があります!!

 憲兵が公園にて魔族と交戦及び捕獲しました! その際に憲兵十人が負傷しました!」


「魔族だと? 他に被害報告は?」


「ありません! ですがもう一つ報告があります!!」


 兵士は咳払いをしてから改めて報告をする。


「首都ニルバーナから騎士団がお見えになりました!」


「騎士団だと!? 何故そっちを先に報告しないんだ!」


 日ノ本勇国の騎士団は全身を包む銀色の鎧が印象的な一団で、日ノ本がまだZ国と呼ばれていた時代から存在する歴史ある騎士団である。

 そんな騎士団なぜヨクハマに事前連絡無しで来たのかは解らない。しかしオウカの護衛を依頼する予定だったため、すぐに通すことになった。


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