表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

悪役

作者: 優吾

悪役、辞書では『1 映画や芝居などの悪人の役。敵役(かたきやく)悪形(あくがた)

2 (比喩的に)人に憎まれる役回り。「―にまわる」』と書かれている。


私の生活は悪役のようになっている。


会社では人事部という役職についていて、その業務はだれを残してだれを首にするかを選別する仕事をしている。会社では、悪役として扱われ肩身が狭い。


切るときの相手の顔は阿修羅をも凌駕する顔で私を見て、そのほかの人もびくびくして話しかけても来ない。こういう悪役は世の中には必要であることは分かっているが、精神的にくるものがある。


しかし、やめたところで何になるというのか。


どうすることもできなから私は悪役を演じ続けている。




11月の半ば、上司から一つの案件を渡された。この中からだれかリストラをする人を選んでくれと言われた。会社の経営がよくないらしい。私は二言返事で応じた。


どれも、この会社では経験が豊富な人が多くそこそこ能力はあった。しかし、いまは海外に拠点を置くことを考えていてできない人が邪魔なのだ。


重荷なのだ。


不必要なのだ。


私は、その人の周りから個別で面談をした。彼らは正直だった。いや、そうすれば自分はやめさせられないのだと思っているのだろう。口々に「暗い」、「指示があいまい」、「業績が悪い」などと言っている。みんなこういってしまっては、だれを選ぶかはまとをしぼれない。いっそのこと全員を辞めさせてしまおうか?


日をおいて、直接本人に面接をしてみた。しかし、彼らの目からいまにも流しそうな涙が浮かばれた。家のローンの返済がまだだ。家族がいる。まだ会社に恩を返し切れていない。そう訴えられると、私はなぜ悪役をやっている。


「いいくらしがしたい」、「金がほしい」、「物がほしい」などと言っている奴よりもこの人たちをけなすのか?


解せない。まったくもって解せない。




数日後、私は会社に報告書を提出した。どういった経緯で辞めさせるか、彼らの今後についても詳細に書いた。私はデスクに戻って机に突っ伏した。


ただ、黙々と仕事をしているよりはましに思えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ