2話 出会い
「…禄?」
「なんだ?」
「顔色悪いよ?」
「…大丈夫。」
「んもー…っ!」
「っ、」
ことん、
頭が勝手に横に倒れていった。
隣を見れば真剣な顔つきな狼がいて、
「ダメ、寝て?
もう授業始まっているから諦めて寝な?
時間になったら起こすしさ?」
「…わかった。」
狼は頑固だから1回こう言ったら譲ろうとはしない。
だからこれは諦めて寝るしかない。
結局自分は狼に弱いのだ。
…いつからだろ、こんなに狼が近くにいるようになったのって。
確か入学してすぐ話しかけられたんだっけ。
ずっとつきまとわれていた時僕が階段から落ちたのがきっかけだったや、そういえば。
今みたいに怪我の治療のために妖怪の力が出てきてしまって、それを見られたんだ。
そうしたらいきなり目の前に犬神がいて…ってだんだん意識がなくなってき…
「ごめんね、禄…。
俺、知ってるんだ…。」
『ねぇ、知っている?』
『知っているわよ、あの子の事でしょ?』
『そうそう。
碧の狐様とか崇められている碧禄。』
『まったく、不吉極まりないのに。』
『佐々もどうするのかしらね…。』
『―ねぇ、しぃ。』
『はい。』
『…僕はいらない子なの?』
『そんなことないですよ、碧禄様。』
『…しぃ、離れないで、ずっとずっと僕と一緒にいて…?』
『ふふっ、わかりました碧禄様。』
―あぁ、綺麗だなぁ、しぃは…。
「―――く、禄っ!」
「…ん、」
「鐘鳴ったよー?」
「…そうか、…。」
「って寝るなーっ!」
…母様、今日も綺麗な蒼です。
そう、母様のような…。
「…なんだ、ここのクラスじゃないんだね。」
「らしいな。
でも噂はすごいみたいだが。」
紫規の噂は学校全体にまわっていて、あの紅賀が負けた!とかなんとか。
ほんとに噂が大好きな奴らがたくさんいるものだ。
でも紫規自体には冷たい独特の空気が流れていて誰も近寄れず、遠巻きから黄色い声をあげるものばかりだった。
自分が紫規の周りにいる時だって、特に周りの大人に必要以上に媚びたりはせず