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少年銀河  作者: 白和希弥
隣の君、前の君
2/3

1話 平穏

太陽と月がくっついていて

風とは逆の方向に草がなびいている

ここは人間しかいない

自分はどこにいる?

わからない

でもこの世界を見渡していた

人間が人間の上に座っている

おかしいようなおかしくないような

月と太陽には顔があって、そんな下にいる人間を見て

太陽は泣いていて、月は笑っている

くっついているのに、違っている

それはまるで人間の心のようで滑稽だった

強い者は弱い者に対して笑い、弱い者は強い者に対して泣く

あぁ、この世界は混沌としている







そんな事を思った瞬間に目が覚めた。

また変な夢を見たものだ。

でもこの世界もこんな感じで回って時を進めているんだろうなとぼんやりはっきりしない頭で思った。

そんな世界で自分は生きているだと考えたら吐き気がした。






―ピンポーン




「…きたか。」


毎日繰り返しならされるチャイムにはもう慣れた。

"同じ"

それがいかに退屈で大切かを僕は知っている。

何かの障害や歓喜は一時的な波で、いずれかはおさまってしまう。

だったらそんな身を滅ぼすような変異ある人生より、いつも同じの人生をおくりたくなる。

それにもう、僕は疲れたんだ。



人に視線をむけられるのは、嫌だ。

いろんな感情が一気に感じるから、僕は人の目が嫌だし興味が失せた。





「おはよーう、禄。」

「…はよ、狼。」


にひって笑うコイツは番犬。

まさに周りからはそんなイメージがあるはずだろう。

毎日毎時間となりにいるコイツは何がいいのかわからないが俺のことを崇拝している。



「今日のお弁当自信あるんだーっ。」

「…あーそ。」

「禄が大好きな卵焼きも上手にできたんだー。」

「そか。」


反応が薄くて、普通は首をかしげるか怒る人が今までが多かったのに、コイツは少々頭がおかしいようで笑顔でさらに喋りだす。

僕が5文字以上の言葉を発すると嬉しそうに尻尾振り、こちらをキラキラした目でこちらを見てくる。

…別にその先はなにもないのに。

ただ言おう。


僕だって喋るさ、失礼な奴だなぁ。



「あれ、狼…。」

「んー?なになに?」


今日は中間テストの順位が貼り出される日。

1位は僕。

まぁこれは当たり前だ。僕が1位以外ありえない。

だって毎回満点なんだから。

ただいつもと違う点がいくつか。

まず、狼が2位にいない。

そして見覚えのある名前が2位は貼り出されている。

最後に、そいつは絶対ここにいるはずのない人物だということ。


…あぁ、名前を見ただけで嫌気がさす。

段々自分の眉間に皺が寄っているのがわかり、あいつのことで自分が乱されるのがすごく嫌だ。




なんで、あるのかな…





"今岡紫規"





死ねばいいのに。

名前を睨みながら強く思った。







「見たことないなー…。」

「…。」


字を睨んでいたらぼそっと狼が呟いた。

狼は暗記が得意で高等部にいる生徒、教師は全員言えるだろう。

その狼が知らないというのだからあいつは転校生ということだ。





…何故?




「…まさか、家…?」

「禄?」

「っ、なんだ?」

「いや、なにもだけど…。」




禄、震えてるよ。



狼に言われて初めて気づいた。

普段は低いといっても感じ取れる体温が今はなく、手は真っ白だった。

完全に何かに染められている自分。

声も遠くなっていて、世界に1人になった気分だ。



「禄っ!!」

「っ!」

「…大丈夫だから、ね?」

「ろ、う…っ。」



自分とは違う体温。

それがいかに心地よいかわかった気がする。

でもそんな気分はすぐに吹っ飛んでしまった。






「碧禄。」

「っ!」

「…禄?」

「…知らない、あいつ。

だから早く行こう、狼。」

「碧禄、」



やめろ、名前を呼ぶな。

僕が手に入れた平穏な日常が壊れていく。


…苛々する。

あぁ、こんなに誰かに感情的になるのは久しぶりだ。






「…ねぇ、禄。」

「…っ、」

「もう大丈夫だから、1回とまろう?」

「…っ、」

「…耳、出てきている。」

「…狼…っ。」

「大丈夫、もう俺しかいないから。」


ほらタオルあげるー。

狼の笑顔に癒さている自分が情けなく思えた。

1人で生きていくなんてよく言えたものだよな、本当に。

あいつの姿見ただけでこの有様なのに、これからどうやって1人で生きていくんだよ。



「禄、だーめ。

今ちょっとだけ変化しているから手血でちゃう。」


4割変化してしまっている体は耳は生えてくるわ、犬歯はのびてくるわで狐というのがまるわかり。

尻尾がスラックスの中で動いてとても邪魔だ。

あまり変化するとまたスラックスを買わないといけないから抑えないと…。


「カラコン溶けた…?」

「うん、バッチシ。」

「…あいつ高いのに…。」

「大丈夫、あげるからっ!」

「お前のやつへんなやつが多いから嫌だ。」

「えー赤いいぐはあっ!」



狼は僕の目を気味悪がらない。

どこがいいのやら、この不気味な瞳。




「大丈夫、禄の目はキレイだよ。」


…変な奴。






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