別荘って、ココ? 2
大学を出発して30分程で、建物がほぼなくなり、それから、
かれこれ1時間程、ずっと森の中を走ってる。ところどころに
桜7分咲きの桜の木がたくさんあり、ほっと和む。
「ここから先は、紅葉山家の土地だよ。」
「じゃぁ、もう着くんですね。別荘はどこですか?」
おれは、辺りをキョロキョロして、必死に探す。
「ははは。別荘は、方角からいうと真正面にあるけど、まだ見えな
いと思うよ。なんせ、木が多くてね。お祖父さまが、”自然に倒
れたもの以外は、切ってはならぬ”とか言うものだから、生やし
放題なんだよ。右に見えるのが、紅葉ばかり生えてる山で、この
山が終わると、左に桜の山が見えるよ。ここは、うちの大学より
気候が寒いから、まだ、硬いつぼみ状態だけどね。」
その他にも、梅や、林檎や、桃や、梨や、ツツジの山や、茶畑も
あるという。みかんも植えてみたんだけど、さすがに寒くて育たな
かったらしい。
「すごいなー。
会長の実家は、超特大級の金持ちなんですね。」
「・・・・・
あれ?知らない?!
桜庭君、紅葉山総合病院って聞いたことない?」
「知ってますよ。大学の近くの、すっごく大きな病院ですよね。
・・・あ?もみじやま?・・・・・・
ああああああっ!!!」
オレは、驚いて立ち上がり、車の天井に頭をぶつけた。あまりの痛さ
に、頭上に星がでて、くらくらした。
「やっぱり、知らなかったんだ。何か、話がいまいち、かみ合ってない
なと思ったんだよ。」
「すみません。オレ、何も知らなくて。」
しゅんと落ち込む。
「いいんだよ。葡萄の棚が見えてきたから、もう少しで着くよ。」
「葡萄といえば、ワインかな?
自家製ワインとか造ってたりして・・・」
「あるよ。」
あっさり、言われてしまった。やっぱり、すごいや。