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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

悪の秘密組織「FL団」

作者: カラカナ
掲載日:2026/01/20

ヴィラン物って面白いなって思いました。

 ごく少数の人類に発現した超能力が世界に慣れて30年ほど経ち、力を悪用するヴィランに対抗する組織「ヒーロー連盟」が平和を維持するようになり人々は安心して暮らせるようになった。


 しかし突発的に発現する能力に対しての対応策はなかなか進展せず、日々ヒーローになる者、ヴィランになる者は後をたたない。


 そんなわけで今日も一人の人類がヴィランにされそうになっていた。


「あなた、ヴィランに興味ないかしら?」


 一言でヴィランと言っても必ず能力を所持しているわけではなく、無能力者でもヴィランとして活動する者だっている。


 逆に能力に覚醒していても周囲に秘匿し、ヒーローにもヴィランにもならない者だって当然存在するのである。


「ヒーロー呼びますよ?」


 決して自分の能力をひけらかしていたわけでも無いのに、どうして勧誘をされているんだか謎だが通報した方がいいだろう。


 季節は春先なこともあり変質者が冬眠から覚めて活動を始めたせいだな。


「まってまって、今だけ特別に幹部の席が空いてるからそこに座って欲しいの、ちゃんと給料も出るし結構緩い感じだから、未体験全然オッケーだから考えてくれない?」


 大学を卒業したのにも関わらず就職できず、晴れてニートになった自分には効果抜群の謳い文句に心が傾き自制心が崩壊した音が聞こえた気がした。


 就活失敗したのってこの日のためだったのでは無いだろうか、これは運命ではなかろうか?


 アカン、ヴィランになってまう。


「具体的には月給どのくらい…」


「ボスが会社経営してるから幹部は初任給から50万くらいはだしてくれるそうよ」


 うん、今後の人生ヴィランやってこう。まともに働くとか馬鹿らしい事は考えずにボスの犬になろう。


「労働契約書にサインでもすればいいですか?」


 それまでの不審者を見る表情をしたニートは既に消えていた。


 そこに居るのはヴィラン勧誘するお姉様と新卒幹部の2人だけ、そのまま本日から出勤となった。






「勧誘成功したの?今時ヴィランの立場かなりアレなのによく着いてきてくれたね」


「本日からお世話になります!幹部として頑張ります、よろしくおねがいします。」


 深々と頭を下げ恭順の意を示す。ニート回避、これから僕も社会人。


「えっ、幹部の席もう埋まっちゃったんだけど…」


 !?


「あれ、ボスが空いてるって言ってたのは?」


「昨日入ってくれた子に任せるって言ったじゃん……」


 つまりあれか?騙された…


「ちょっと話が違うじゃ無いですか」


 勧誘してくれた女性の肩を掴んで抗議する。なんだこの人、体幹すごくて揺すぶってるのにびくともしない。


「それじゃあ普通に戦闘員枠での採用で」


 ボスの一声に悩む自分がいる。


 元々ニートなんだし働くだけ働いてみるべきではないか?幹部で50万だけど平でもそこそこ貰えるんじゃないのか?


「ボス!本日からよろしくお願いします」


 僕は何事も無かったかの如く恭順を示した。






「それでは、本日の活動を伝える。」


 ボスへの挨拶から1時間、支給された戦闘員スーツに着替えて外に出た。


 編成は5人、勧誘してくれた張本人であり、美人であり、この組織FL団幹部の一人である共埼(トモザキ)さん改て【ダークスター】さん。


 昨日入団したらしい僕の幹部の席を奪った同期の幹部構成員武田君改て【土塊(ツチクレ)】さん。


 今年で2年目になる先輩戦闘員で無能力者の石井さん改て【戦闘員1号】さん。


 石井さんと同期で同年代の無能力者の佐藤さん改て【戦闘員2号】さん。


 そして僕【戦闘員3号】の以上5名である。


 このFL団は小規模らしく他の人員はボスと秘書さんしかいないらしい。ボス1人幹部3人下っ端戦闘員3人の計7人の悪の組織とは、弱小悪の組織すぎるだろ。


「本日は新人のために軽く活動内容を見てもらおうと思ってヒーローと戦ってみましょうか。」


 そう言って大通りに出るといつの間にか持っていたナイフを一般人に突き付けた。


「こんにちは、FL団幹部のダークスターです。あなたは人質です、抵抗しないでください。」


 顔面まで隠れたスーツを着た一般戦闘員3人と目立つ赤い軍服を着たダークスターにローブを目深に被った土塊に対して周囲は奇異の目で見ていたがダークスターの行動に周囲で悲鳴が上がり一般人が逃げ出していく。


「新人君たちもボサっとしてないで人質捕まえてみようか、軽い暴力くらいなら振るっていいから。」


 呆気に取られていた自分に気づき標的を探すために周囲を見ると戦闘員の先輩2人も適当に一般人を確保していた。


 土塊も能力であろう岩を地面から隆起させ3人の一般人を捕まえていた、ちゃんと強いのかよ幹部なだけあって。


 出遅れた僕は既に距離が空いている一般人を追うのを諦めて、逃げる大人によって転んで逃げ遅れた女の子の元に向かった。


「お嬢ちゃん大丈夫?怪我しちゃったのか」


 泣いている小学生くらいの女の子に声をかける成人男性、事案である。


 他の大人は逃げちゃったから仕方なくと自分を殺して女の子を人質にしよう、ヒーローも子供が捕まってたら動揺するでしょ。


「膝擦りむいちゃったか、痛いよね」


 負傷箇所にペットボトルの水をかけて洗い流してから絆創膏を貼る。今度から消毒液やガーゼも持ち歩くようにしようかな。


「歩けないだろうから抱えてくしかないか」


 小学生女児くらい軽々持ち上げられるだろうとお姫様抱っこしてみたらただの運動不足、腕が痛いです。


 なんとか皆んなの元へ連れ帰るとゴミを見る目を向けている男性陣が。


「女児を人質に取るとか、悪魔か?」


「ヴィランだからってなんでもしていいわけじゃないんだぞ、人質の相手は選ぼうぜ」


「同期がヤバい奴すぎてドン引きなんだが?もしもしポリスメーン」


 なんも言い返せねぇ、ぐぬぬと唸っているとダークスターがフォローしてくれた。


「性癖は人それぞれだから口出ししたくはないけど、ヒーローには有効だと思うわ、私はやらないけど。」


 アカン、味方に味方がいねぇ。


 よく見ると1号と2号は男性を、ダークスターも男性、土塊は男性2人に女性1人


「そ、それでこれからどうするんですか?人質こんなに要ります?解放してもいいのでは?」


 この空気どうにかさせてくれよ。


「まあヒーローが来たら用済みではあるけどうちは殺しとかはしないから拘束してヒーローを逃げれなくさせるように捕まえとかなくちゃいけないの」


 入社後いきなり実践だから聞くの忘れてたけどそう言えば具体的に何する組織なんだ?


「そういえば組織の目的って何なんですか?ヒーローと戦う必要あるんでしょうか」


「おいおい、そこすら聞いてないのかよ、世界征服して自由に生きるがうちのキャッチコピーだろうよ、まあ本質はヒーローに立ち向かい続ける事だって話だけど。」


 1号先輩が説明してくれたが、ヒーローと闘い続ける?手段ではなく目的としてヒーローと戦うと?


「うちのボスはかなりの変人だからね、あの仮面を外したとこ見た事ないし、でも男の浪漫が口癖の人だよ。」


 2号先輩の発言に疑問を持った。浪漫って、浪漫で悪の秘密組織作ったの?ヤバいやつじゃん。


 でも今更退職したところで経歴は既に傷だらけだし辞めるに辞めれないんだが。


 そんな雑談をしている間に敵影が見えてきた。ヒーローの到着である。


「そこまでにしてもらおうか。」


 現れたのはテレビでも有名な炎を扱うヒーロー【フレイムテラー】だ。


 実物のヒーローは初めて見た。報道されている通りなら掌から炎を出す能力者のヒーローだ、勝てるのだろうか。


「それじゃあ実際に戦ってみましょうか、1号と2号は3号に、私は土塊に指導するから」


 先輩方から指導があると言うが、無能力者がどうやって立ち向かうんだろうか。


「支給されたバールを持つんだ新人」


 マジですか、炎タイプにバールで立ち向かうって、本当に取り巻きの役かよ。


「人質を盾にしちゃダメですか?」


 熱いの怖いしダメかな。


「君人の心無いの?」


 はい、NGが出ました、当然ですね。


「俺たちは取り巻きだから普通に倒されても大丈夫だから、今回相手は1人だしダークスター様が戦うから俺らは勝っても負けても平気」


 そういうものなのか、幹部ってチームの代表的な感じなのかもしれない。下っ端でよかった。


「つうわけでとりあえず戦ってみるぞ、今回は燃やされるだけだし心配いらないぞ」


 燃やされるだけとは、とても嫌です心配です。


「ヒーローにも規定があって殺人を犯したヴィランには殺害許可が出るけど逆に殺しをしなければ半殺しで捕まえてくれるってわけよ、だからうちは殺人NGなわけ。」


 2号先輩の説明中に1号先輩が焼かれたが確かにピクピクして生きているようだった。スーツは燃えてなさそうだし頑丈なんだな。


 説明は終わりだと2号先輩もヒーローに向かって行ったので僕も走り出す。


 フレイムテラーが放った複数の火球を先輩はかわしてヒーローに肉薄するが体術もできるらしく2号先輩も投げられて燃やされて戦闘不能になった、僕は受け身ちゃんととれるだろうか。


 ひとまず追い付いたのでフレイムテラーの後頭部を思いっきりバールで殴りつけた。


 ヒーローだし大丈夫だよね、なんか倒れて動かなくなっちゃったんだけど。


「すみません、ダークスターさんこれ大丈夫ですかね?」


 土塊を見ていたダークスターがこちらにきてフレイムテラーを観察する。


「ううーん、とりあえず呼吸は聞こえるから大丈夫かな、戦闘員3号が倒しちゃったから私はやること無くなったけど。」


 僕が倒す必要はなかったようで少し申し訳なくなったが問題ないそうだ。


 背後を確認すると土塊が人質を逃した別のヒーローを相手にしていた。


 新たに現れたのは美剣士と名高いヒーロー【彩極(サイギョク)】のようだった。


 彩極はフレイムテラーより強いヒーローだからそちらの相手をするのだろう。


 ヴィランにヒーロー連盟が危険度からランクをつけるようにヒーローにも格に応じてランクわけされている。フレイムテラーはC級ヒーロー、彩極はA級ヒーローだ。


 武田君もとい土塊は大丈夫なのだろうか。


「倒したヒーローはどうすればいいですか?土塊がやばそうですし応援に行ってください、こちらは僕が頑張りますので。」


「それじゃあ邪魔にならないところで休ませてあげといてくれる?そのあとは1号と2号を回収していつでも撤退出来るようにしといてね」


「了解です。」


 ダークスターは土塊の方に向かって行き声援を飛ばした、戦わんのかい。


 さて、こちらはヒーローを担げないので脚を持って引っ張って建物の影に連れていく。


 殺すと不味いようなのでツーショットで写真を撮り、ポケットから黒のマーカーを取り出した。


 3号画伯の芸術センスをとくとご覧あれ。


 SNSに落書きフレイムテラーを投稿して満足した。


 あとは何をしようか、持ち物を探ってみたけど財布に家族の写真が入ってるくらいで所持品が少なかった、奥さん美人っすね。


 勝利記念に写真の裏にサインだけして先輩の回収に向かった。






「そろそろね、撤収するわよ」


 幹部ダークスターの号令により我々FL団は撤退を開始した。


 叩き起こした先輩方と手ひどくやられた土塊を背負ったダークスターと共に走り出す、ちょっと皆んな早すぎない?


 逃げ出した我々を彩極は追わず、なんとかアジトまで逃げ帰ることができた。


「皆んなお疲れ様、土塊は手当が必要だからアレだけど他は本日解散」


 戦闘員の先輩方は焼かれてたけど大丈夫なのだろうか、足取り軽く出て行ったから大丈夫なのだろう。


 僕のロリコン疑惑を解消したかったが行ってしまっては仕方がない、またの機会にしよう。


 僕も帰ろうかとするとバッタリボスと鉢合わせた。


「あっ、3号君お疲れ様だったね、どう?やっていけそうかい?」


 ボスは正体不明で仮面を被った変な人だけど少しの時間でいい人だとわかった。羽振り良さそうだし、わざわざ気にかけてくれるし。


「今日は初日でミスばかりでしたが次からは失敗を活かして改善していけたらと思います。」


 女児拘束とか、次は絶対しないと誓う。


「やる気があっていいね、うちは土日休みだから明日もよろしくね」


 なんだかんだでホワイトなのだろうか、悪の秘密組織なのに。


「ところで、ヒーローを倒した場合ボーナスって出るんですか?」


 一瞬惚けた後すごい勢いで驚いたボスに驚くと申し訳なさそうにボスは言った。


「うちはヒーローと戦う事が業務だから倒す倒さないで査定は変わらないんだ。やる気を尊重したいんだけど組織の方針でどうしてもね」


 慌ててこちらも謝罪しておく。ヒーローと戦う目的の組織って何なんだろうかという疑問もあるがまだ初日だからね。


 ボスと別れて帰路についた。今日の活動でわかった事はヴィランにもいろんな人がいる事がわかった。


 報道される凶悪犯とはごく少数でうちはだいぶクリーンなヴィラン組織なのかもしれない。


 下っ端戦闘員になった事だしもう少しモブっぽい行動を勉強しようと思った。


 社会人になっても学ぶことばかりなんだと感じたいい日だったと思う。


 投稿したヒーロー撃破の写真がバズったので明日からも頑張れそうだった。



2030年4月3日

 ヴィラン活動日記1日目 鬼沼 骸(キヌマ ムクロ)

秘書さん出てきてないや、お蔵入り〜

お付き合い頂き感謝でござい。

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