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第一章"戻ってきた日常"4

ようやく物語が進む気がします。

「よ、朔月」



「おはよ悠斗。眠そうだね」



「いやぁ、ついゲームを……やめどころわかんねーんだよなぁ」



こちらに帰ってきてから早何週間か。本日日直らしい梓は先に登校していて、僕と悠斗は二人で歩いて行く。

アレから鍛錬もしてるけど何か魔物みたいなものに遭遇することもなく、そして幼馴染達とこうやって一緒に何かしてるのが一番こちらに帰ってきたことを実感させてくれる。



「そういや朔月」



「うん? どうしたの?」



「お前、なんか悩み事でもないか?」



唐突に悠斗が不思議なことを言い出した。悩みなんてないと思うけど……



「いや、特にはないけど……どうして?」



「なーんか、お前事故に遭ってから雰囲気変わったっていうかさ。なんて言うんだろ、なんか考え事してそうな感じっていうか」



「……」



驚いた。なるべく表には出さないようにしてるのに悠斗にはバレていたらしい。

とはいえ悩みってほどのものでもなくて、単純にあちらとこちらの世界のギャップや現状についてまだいろいろ追いついてないだけだけども。



「なんて言うのかな、二日だけどちょっと自分が眠ってたって実感がなくってさ」



「あー、まぁお前からしたら突然のことだしなぁ。

でも、俺達本当に怖かったんだからな。まったく反応しなくてさ」



「それについてはごめん……でいいのかな」



「朔月は悪くないだろ」



悠斗は昔から人のこういった変化に鋭い。それがモテる理由の一つでもあるんだけど、特に僕には幼馴染だからか同性の親友だからか、鋭い上に容赦なく聞いてくるからたまったもんじゃない。

昔は例えば僕の初恋が始まる前に終わってから、内心悠斗に負けたくないと対抗心を燃やしていたりしたときも僕のことをずっと心配していた。勝てないなって思ったのをよく覚えてる。

その時も今も、僕の内心をキミに言うことはできないのがちょっと罪悪感。



「とりあえず、悠斗が心配するようなことはないから大丈夫だよ。テスト勉強できなかったから結果が怖いなぁって」



「……言うな、朔月。俺と梓は結局お前と勉強できず薙紗さんにチクチクされながらやったけど、多分ダメだったから」



仮にも入院してたので勉強会は無しになったのでどうなったかと思えば、ため息吐きまくりで教えてる薙紗さんが目に浮かぶ。



「いいんだ、期末頑張るから。朔月も一緒にな」



「はいはい」



きっと僕はこれからもこうやって悠斗を甘やかすんだろうなぁ。

精神年齢では僕の方が少し上になってしまったから、余計にそういう気持ちが強くなってるかもしれない。



「……平和だねぇ」



「いきなりなんだよ朔月、そりゃ平和に決まってるだろ」



「そうなんだけどさ」



悠斗の隣にいる時は僕はこちらの僕として日常をそのまま受け入れられてる気がする。

ほんと、人たらしな男だなぁ。



─────



「……はい?」



平和だと言ってから十数分経って、下駄箱を開けたらそんな僕の平和は一瞬で消し飛んだ。

いや、だってこれ──



「手紙……だよね……」



上履きの上に置かれた薄いピンクの封筒。漆間朔月さんへ、と丸っこい字で書かれたそれは間違いなく僕に向けられた手紙であった。



「えー、いやなんで僕? 悠斗じゃなくて?」



我ながら大概な事を言ってる自覚はあるけど、あまりにも経験したことのないことなのでちょっとおかしくなってても許して欲しい。



「どうしたんだよ朔月、なんかあったのか?」



下駄箱から出てこない僕をどうしたのかと悠斗が見に来た。

そんな悠斗の視線には当然僕の手元の手紙に向いていて──



「ま、まさかそれ! ラブレターか!?」



「しーっ! うるさいよ悠斗!」



言わんこっちゃない。リアクション大きめな悠斗の声に何人かがこっちを向く。やめて、見ないで。



「……漆間くん、今のそれ……本当?」



一瞬刀を持とうか悩むくらいの冷たい声に、僕はゆっくり振り向いた。

そこには、いつもの誰にでも笑顔を振り向く姿じゃなくて本性ほぼ丸出しに近い柊がこっちを見つめていた。

ああ、どうしてこんなことに……

Tips

三崎 悠斗

人のことを思い遣れる優しい男の子。友達想い(異性含む)

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