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プロローグ"いまのはじまり"

これにてプロローグは終わりになります。

第一章からようやくキャラクターを動かせる……気がします。

よろしくお願いします。

ゆっくり目を開ける。

僕のこちらでの記憶はそれで一旦終わって、気がついたら異世界にいた。生きてたので異世界転生ではなく異世界召喚だった。

よくある……って言ったら良くないけど魔王に進軍されている世界でその状況を打破する為に異世界から協力者を召喚したらしい。

物語で良く聞く異世界ものと違って僕は勇者として喚ばれたわけではなく、勇者の協力者として喚ばれたのは正直面食らった。いやまぁ勇者になりたかったわけじゃなかったけどね。



「怖かったなぁ」



異世界召喚による影響かどうかわからないらしいけど、僕の魔力の量はあの世界でも尋常ではなかったらしい。そんなことを言われても十七歳の高校生にいきなり戦えなんて言われてはいそうですかともなるわけでなく、最初は勇者と賢者の二人に守られてばかりだった。

そんな僕が()を手に入れて在り方を定めてからは勇者パーティの先駆けになるなんて、人間どうなるかわからないものである。



「勇者の(つるぎ)だっけか」



いろんな二つ名や渾名をつけられた。さすがに何年も戦ったし相応の強さを身に着けた自覚もある。

でも、ここにはもう彼らはいないし、現代は平和である。

──平和である、はずだ。



「なんだろ、この感じ」



起きてから何日か入院生活をしてて、少しずつ違和感を覚えていく。

気のせいかな? って思っていたそれは、段々と違和感から懐かしい感覚に変わっていく。

……それは、この現代で感じるはずのない感覚。明確に僕を狙っている敵意のようなナニカ。



「異世界なんてものがあるんだから、こっちに非日常的なものがあったとしてもおかしくはない……のかな」



もし何かが起こるのならば、僕は僕であることを全うするのみだ。

もちろんそれは杞憂かもしれないけれど。



─────



「……ん」



眠っていたのに、唐突に目が覚めた。時計を見れば深夜二時を回ったところ。

普段目覚めるような時間じゃないのに起きた理由は一つ。



「……僕が美味しそうに見えてるのかな、なんて」



昼間に感じたナニカの気配がとても強い。放っておけば僕の病室へ向かってくるだろう。

どうする? ナースコールなんてもってのほか。僕はこれを誰にも悟られることなく対応しないといけない。



「──いいよ、僕から出迎えてあげる」



病室の窓を開けて夜空を眺める。この時間なら外で何かあったとしても騒ぎにはならないだろう。

この病室は六階にあるけれど、一切の躊躇いなく僕は窓から飛び降りたのだった。



─────



夜の闇の中を朔月は落下していく。顔色一つ変えずに落ちて、地上にぶつかるタイミングで体勢を変えて着地。

六階の高さから落ちたにも関わらず無傷どころか、一切の音を立てずに地面へ降り立った。



「ほら、来てあげたよ」



入院着を軽く腕まくりして夜の木々へと微笑みかける。

十七歳にしては小柄な体格の少年の微笑みは、しかし獰猛な狩人の笑顔にも見える。



「あちらの世界で魔物を呼び出す時とかにさ、僕の魔力を解き放って撒き餌にしてたんだよね。なんでも僕の魔力は魔物達からはご馳走に見えるらしくて。

起きた日に一度魔力を使ったからキミたちもそれ目当てで集まったのかな?」



闇に紛れて()()は徐々に輪郭を見せてくる。

土が人の形を(かたど)って、ツギハギだらけのままくっついていく。一通りくっつくと、顔の部分にあたる所から口だけが生み出された。



「まぁ、病院は怖い話でよく挙げられる場所だしね。何かしらの力が作用してこんなのがたくさん生み出されることもなくはないか。

ひーふーみ……数えるのも面倒なくらいいるや」



朔月は土くれを数えることを諦めて、右手を自分の真横へと伸ばした。

少年の中で、カチリとスイッチが切り替わる。本来何もない虚空の中にある自分の武器。手に掴んだ感触と共に朔月はそれを正面に構えた。



「──僕は刀だ」



その手に持つのは一振りの刀。腰にはいつの間にか鞘が付いており、刀身は夜の闇でも銀色の輝きを放っていた。



「斬ると決めて、斬るモノであると定めた。故に僕は一切の区別なくあらゆるモノを斬り捨てる」



刀──異世界には存在しないその形状は、彼があちらの名匠に特注し、最高級の素材で打たれた業物である。



「だから、お前たちはここで……消えてしまえ」



瞬間、世界から音が消えた。

否、一つの風切り音と共に幾つもの銀の閃光が夜の闇ごと斬り裂く。その景色が世界から音すら奪ったように錯覚させた。

斬撃の余韻が引くと共に音が戻って来る。



「──あっけない」



彼にとってはただ手に持った刀を無造作に振っただけに過ぎない。

魔力による身体強化も行わず、軽く払っただけ。

それだけで無数にいた土くれの軍勢は一つ残らず斬り裂かれ元の土へと還っていた。



「まぁ、こんなもんだよね。ここにいるのがバレても面倒だし、部屋に戻りますか」



光の粒子となって刀は消えていき、朔月はその場から病院の壁を蹴り登っていく。そのまま六階の自分の病室へと戻ると一度伸びをしてベッドへと横になった。



「異世界から帰ったらこういうこととはおさらばなのかなって思ってたけど、案外そうでもないのかも」



呟く声は、少し弾んでいた。

少年は気付いているかわからないが、表情も少し嬉しそうである。



「でもまぁ、やることは変わらないけど。彼らに誓った通り、僕は僕の敵と定めたモノだけ斬って捨てる」



それでも。と続けて朔月は眠りに落ちていく。

明日から続く日常に──



「……この力を持て余すよりは、嬉しいかもしれないね」



──いまからはじまる非日常に。



プロローグ.fin

Tips

漆間 朔月

異世界での通り名の一つは"勇者の剣"

名前の通りジョブ的なものは剣士。ちょっと常軌を逸しているけれど剣士。

身長は162cm、幼さ残る顔立ちで小柄なためその強さとのギャップが凄いことに。

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