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プロローグ"ふたつめのはじまり"

はじめまして、四方木みつばと言います。ヨモギです。

自分の好きな属性全部混ぜてお話にしてみたいという欲求に従って書き始めました。

少しでも刺さる方がいたら嬉しいな、くらいですが、よろしくお願いします。

──暗闇の中に僕はいた。ついさっきまで僕を仲間だと言ってくれていた大切なみんなと涙で顔をくしゃくしゃにして別れを告げて、意を決して光の渦へ飛び込んだ。そこまでは覚えている。

たくさんの戦場を、修羅場を乗り越えてきた。けれど今この暗闇はそんな僕ですら呑み込むような……あらゆるものを塗りつぶすかのような不安を覚えさせる。



「……大丈夫、僕にはみんながいた。そして自分が何者であるのか、何であろうとしていたのか……それはきっと忘れない。僕は僕だ」



声に出せば安心する。あの時から決意した自分自身。

暗闇に折れることなく前を見つめていたら不意に光が見えて、僕はそちらへと歩き出した──



「……ここ、は……」



白い天井が見える。光の正体はこの天井だったのかもしれない。

知らない天井だ。って言うのがお約束だったっけ?



「病院……だよね?」



痛みはどこにもない。身体を起こすと何かが僕に繋がれていて、機械が僕の心拍数を表していた。

現代の機械だ、僕がさっきまでいた世界にはなかったモノ。つまりは……



「帰って、来たのかな……?」



いざ目覚めてみるとあまりにも実感や現実感がなくて。今まで見ていたのは夢だったのかと、そんな風にすら思える。

ふわふわした感覚が抜けず、定期巡回に来たであろう看護師さんが僕に声をかけるまで僕は虚空を見つめていた。



─────



「朔月!」


「サツキ!」


まず両親が、そして次いで来たのは忘れもしない二人。僕の幼馴染にして親友の三崎 悠斗(みさき ゆうと)柏木 梓(かしわぎ あずさ)だった。

二人も両親に負けず劣らず目を真っ赤にして僕の元へ小走りでやってきた。



「サツキ! あたし、目の前でサツキが轢かれた時頭が真っ白になっちゃって、サツキが死んじゃうって……」



「俺も、どうすればいいかわからなくて……良かった、本当に良かった……」



泣きながら安心したように話しかけてくる二人が()()()()()()と被って、心配してくれる人に失礼だな。なんて思いながらも僕は笑った。

こんなにも大事に僕を想ってくれる二人に、自然と涙が零れる。



「ありがとう、二人とも。心配かけてごめんね」



先程両親にもかけた言葉をまた言ったら二人は感極まったのか抱きついてきた。嬉しいのでされるがままになって、僕は成り行きを見守っていた先生に視線を向けた。



「取り込み中のところすまないね。私がお話しても大丈夫かな?」



「はい」



そんなやり取りをしててもがんとして僕の傍から離れない幼馴染二人に笑いながら、先生と改めて向き合う。



「自分の名前は言えるかい?」



漆間 朔月(うるま さつき)です」



「よろしい。どうしてここにいるか思い出せるかな?」



「……確か、帰宅中に交通事故に遭って……」



「そう、君は暴走車に轢かれたんだ。幸いこの通り傷はなかったものの、頭を打っていたようで意識を失っていてね。丸二日眠っていたんだよ」



「丸二日……」



なるほど、二日間だったのか。

あちらの日付では五年の月日が流れていたのに。



「何か気になることでもあるかい? 痛むところや、思い出せないこととかは」



「今のところは、何も。ちょっとまだ突然のことすぎてふわふわしてると言うか……」



「無理もない。外傷がほとんどなかったのも奇跡みたいなものだったからね。

一応、これから検査の為に一週間ほど入院してもらうよ」



思っていたよりは冷静でいられていると言うか、受け答えがちゃんとできてて安心する。

それどころか──

──今まで僕はただ夢を見ていただけなんじゃないかと。あの出来事は全て眠っている僕が見ていた幻想なんじゃないかと。

そんなことを考えたら、途端に胸に穴が空いたような錯覚がした。



─────



「……ゆめ、か」



家族や悠斗達が帰って、ベッドに横になりながらひとりごちる。

端的に言えば僕は異世界に行っていた……はずだ。

そこで勇者と賢者と呼ばれていた二人と世界を救う旅に出た。そして何年もかけてたくさんの戦いと出会い、勝ちも負けも味わって僕たちは成し遂げた。世界を救ったんだ。そして役目を終えた僕はこちらへと帰還した──



「そうだ。夢かどうか確かめてみればいいんだ」



僕が異世界に行っていたかどうか確認する方法が一つだけあった。

それは魔力。異世界に召喚された僕は身体に膨大な魔力を有していた──結局ロクに用いる手段を取れなかったので魔力を使うときはもっぱら身体能力の強化に充てていたけれど。

あの出来事が本当なら魔力の解放ができるはず。もし夢なら、僕は頭を打った衝撃で夢見がちな男の子になってしまっただけの話。



「スゥ──」



息を吸い込む。身体に流れる()()()を感じ取る。

……ある。淀みなく自分の中を流れる力。これは間違いなく、僕の魔力だ。

小さく息を吐きながら魔力を解き放っていく。どうせ現代、あちらだったらこれに反応して魔物やら何やらが出てきたかもしれないけれどこっちにそんなのいるわけない。



「……夢じゃ、なかった」



自分が今異常な状態であることを自覚できてる。つまりこれは今あの世界で居た時と同じことができるわけで、好奇心に負けた僕はベッドのパイプを軽く握った。



「良かった。みんなとの繋がりはまだあるんだね」



ベッドのパイプには、僕の指がめり込んでいた。

仲間達と一緒に歩いたあの日々が決して幻想でなかったことに、僕は今日三回目の涙を流したのだった。



─────



同時刻深夜、日本中の()()()()が驚愕に震えた。

彼らは一般社会に溶け込みながらも魔の物を滅する──

いわゆる退魔と呼ばれる者達、そしてその退魔と争う魔の物達、またどちらにも属さないまま異能を持つ闇の住人達。

一般の人が感じられないモノを感じ取れる彼らは、自分達がおよそ受けたことのない力の奔流に、深夜であるにも関わらず大慌てで各地に状況確認及び情報把握をするべく動き出した。


ひとつめのものがたりはおわり、ふたつめのものがたりがはじまる。

──これは、現代に帰還した勇者と旅をした少年の新しい異聞奇譚(ものがたり)である。


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