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第21話 レミリアのP活疑惑

 ある日の朝、カイエンは村の噂で頭が真っ白になるほど驚愕する情報を耳にした。


 「妹のレミリアが……自分のパンツを売っている――?」


 え、何を言っているんだ……カイエンは思わず耳を疑う。


 しかし噂はどんどん濃くなる。どうやら、レミリアが売ったパンツを買った人が、嬉しそうにそのパンツを食べているというのだ。


 ……カイエンはその瞬間、世界の重力が反転したかのように膝から崩れ落ちそうになった。


 頭を整理しようと深呼吸していると、前にベルクスから聞いた未来知識の言葉が蘇る。「かわいい若い女の子の中には、自分のパンツをおじさんに売って金を稼ぐ者がいるらしい……それを『P活』と言うらしいぞ」


 ……カイエンはただただ口を開け、呆然とするしかなかった。


 その時、村の外れから見知らぬおじさんが現れた。


 「レミリアさんはいないかい? お金を持ってきた!」


 ……カイエンの目の奥が完全に凍りついた。


 どうやら噂は現実化しつつある……いや、そんなことがあってたまるか。


 混乱したカイエンはすぐさまベルクスに報告した。すると、兄の目つきが鋭く変わり、突然、自分の貯金箱を割ってお金を数え始める。


 「レミリアたん! パンツの在庫は……!」


 カイエンはあきらめるしかなかった。どうやら、ベルクスは「自分の妹が身を削って金稼ぎしているかもしれない」ということを心配していないらしい。


 そこでカイエンは祖父タイカンと父ティガーに相談する。


 「レミリアが……パンツを売っているかもしれません!」


 ティガーはのんびりと答えた。


 「うちはお金に困っているのか? そうでないなら、心配無用だろう」


 祖母パナメーラは聞いた途端に顔が青ざめ、右往左往しているが、結局何もできないまま。


 ミュレーヌは家事を終え、充電中――いや、父ティガーの服に顔を埋めてゴロゴロしているだけだ。ベルクス曰く「充電中」というらしいが、要するに猫化しているだけである。


 カイエンはまず捜査を開始することにした。レミリアの部屋に侵入すれば、事の真相が分かるはずだ。


 しかし、レミリアの部屋は高度な安全、防護対策で守られていた。


 ベルクスの未来知識を駆使したシステムらしく、彼の侵入すら阻止するために頑丈に作られている。


 カイエンは頭を抱えた。


 「……なんで、ベルクスの侵入阻止のための防犯を、侵入阻止したいベルクスに頼むんだ……」


 結局、部屋への侵入は諦めざるを得なかった。


 次にカイエンは、四天王に聞き込みを行うことにした。


 「ねえ、レミリアがパンツを売ってるって噂、知ってる?」


 しかし、四天王たちは全員首をかしげる。


 「小耳に挟んだことはあるけど、実際に売っているかは分からないわね」


 「なるほど……」


 情報は途切れ、カイエンの頭の中で「パンツ問題」が迷宮入りしかける。


 だが、探し続けると、家の厨房からガサゴソと音がする。


 恐る恐る覗き込むと、そこには小柄なレミリアが立っていた。手には小麦粉とこねたパン生地。


 「……レミリア? パンツを売って……ないよね?」


 レミリアはにムッとして言った。


 「そんなわけないじゃん! 私はパンを作ってるだけよ。パン屋のおじさんに卸して、お小遣い稼いでるだけ!」


 カイエンはその説明にようやく安堵した。


 「そ、そうか……パンか……パンなら安心だ……」


 しかし、どうやら今回は伝言ゲームのように「パンを作っている」「パンツくってる」「パンツ食ってる」と情報がすり替わっていたらしい。


 村中で勝手に広がった噂の正体は、レミリアがパンを作っていた事実だけだったのだ。


 そのとき、ベルクスがニコニコ顔で登場した。手には割った貯金箱から取り出したお金。


 「レミリアたん! パンツ売って!」


 瞬間、レミリアのアッパーカットが炸裂する。ベルクスは悶絶し、床に倒れた。


 カイエンは天を仰ぐ。「……これが、俺の一日かよ……」


 結局、レミリアはパンを作って売るだけで、パンツ売買など全くなかった。しかし、村中の噂は一日中止まることなく広がり、カイエンは放心状態で家をうろつくしかなかった。


 四天王たちはその光景を見て、思わず吹き出す。


 「カイエン、あんた一体何を心配してるの?」


 「未来知識、恐るべし……」


 結局、村は平和であり、パンは売られ、噂は誤解として片付いた。


 だが、カイエンの心の中には深い爪痕が残ったまま。


 「……妹の噂にここまで振り回されるとは……俺もまだまだ甘いな……」


 こうして、レミリアのパンツ噂事件は幕を閉じた。だが、カイエンの心の中では、今日もベルクスの未来知識がどこかでうごめき、彼の頭を悩ませ続けるのだった。


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