第21話 ◆流石勇旗のダリタキガル◆
「ぱっつん前髪を前にして、やるしかねぇ!! 」
勇旗は黒い石で、地面を力一杯叩いた。
片膝を曲げ、ひざまずくように、拳に握りこんだ黒いそれを、地面に突き立てるようにして叩きつけた。
『キィィン』と響く金属音はヴァーサの時よりも数段に高く、広場の遠くまでよく通る音だった。
「頼む、何か起きてくれ……! 」
祈るように、つぶっていた勇旗だったが、数秒待って、そっと片眼を開けた。
目の前に見えたのは、さらさらの前髪をもつ少女。フィスカ・ルンダース。
「何も…… 起きない? 」
(見よう見まねでは、さっきの二人みたいな不思議現象は起きるはずもないか…… )
「やはり、やはりそうか。 勇旗も…… 」
フィスカはしゃがみこんだまま、ゆっくりと上を上を見上げる。
勇旗もそれに続いて、視線をずらすと、不気味な青い影達は、2人に覆いかぶさろうとしていた。
恐怖で無言になる勇旗。 自分を守るよう反射的にバッと、石を握っていた方の腕を、顔の前に回す。
ゆっくりと近づくそれに、指先が触れた。
その刹那、青いそれはドロドロに溶けて、地面一杯に広がっていく。
勇旗に痛みは無かった。 ドロドロの液体は、溶ける前の色よりもわずかに緑色をしている。
それは、連鎖的に他の青い影を溶かしてさらに広がっていく。 溢れた液体の一部は道路の端の排水溝から流され、やがて、多くが地面に染み込み始めた。
最初に溶けた1体のドロドロが、勇旗の体を伝って地面に流れ落ち、引いていくと、勇旗の腕の上に残っているものがあった。
「これは、生きているのか? 」
肉まんほどの大きさのそれは、体のほとんどが溶けている。青い半透明の質感をしていて、それが絶えずかたちを持とうとして隆起するが、数秒も持たずに崩れてしまう。
そのかたちは一瞬だが、人間の形のようにも見える。
「フィスカ、これって…… 」
「勇旗、お前の力だ。 その青いダリタキガルの意思情報と操作権限は、いま勇旗の中にある。 もう敵ではない。 出てくるぞ、たくさん」
その言葉を待っていたかのように、勇旗たちを囲むように出来た青い染みから、ダリタキガルが次々と這い出して来る。
青いドロドロのダリタキガルは、かたちを維持できるものや、数秒で溶けるものなど、個体差はある様子だったが、どれも皆一様にその場から移動せずにいる。
「こいつらは、何をしているんだ? 」
「さっき言っただろう、権限は勇旗にある。 『何をさせるか』は勇旗次第だ? 」
「何をって…… ダリタキガルが生き物ってことすら怪しいのに、命令? 何が出来るかなんて」
青いダリタキガルはどんどん湧き出して、気付けば勇旗の体も足元から、その影に埋もれてしまいそうだ。
「勇旗、まずは深呼吸して、なんでもいい、ゆっくり命令を出してみろ」
そうこうしているうちに、向こうの方からは、新たに敵の不気味な青い人型が近づいて来ている。
(そういえば、ヴァーサはダリタキガルを自分の周りに集めていたな…… フィスカも数は少なかったけど、蜥蜴は自分の方に向かってきていた。 つまりこいつらも、俺のところに寄せるのが正解?! )
「よし…… 俺の側に……!! 集まれ! 」
勇旗は緊張しながら、腹の底から声を張り上げた。
勇旗の号令直後、一斉に動き出したドロドロのダリタキガルは、四方八方へと散っていく。
「あれ?! 俺今集まれって言ったよね?! 」
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