第2話 ◆流石勇旗◆犯人になる。
はてさて? フィスカさんは何を言いたいのか。
さっぱりわからん………いや、いやいや。わからぬ。
わかりたくないっ!
勇旗はテレビ画面に詰め寄ると、その両端を力強く握る。
「凶悪? 犯罪者扱い?! 誰が? 俺達が?! 無断で少女を家に置いている時点でも結構アウトなのに! 」
テレビでは勇旗が未成年者であることは伏せられ、窃盗の罪だけでなく、国家転覆を目論むテロの疑いとして報道されていた。
数秒の沈黙の後、くるりと体の向きを変えた勇旗は
『シャッ! シャッ! 』
猛スピードでベランダのカーテンを閉め、一呼吸。
ふぅ……
「あァァァア?! 」
頭を抱えて床に崩れる。
「返しに行って 道に落ちてましたよ―――なんて通らないよな」
怖いお兄さんのいる機密施設に投獄されて、有ること無いこと白状させられ、犯人に断定されるに決まっている。
゛疑わしきは罰せよ゛でまわるこの世の法律は、裁かれるべきアホ《フィスカ・ルンダース》ではなく、裁きたい者を裁くのだ。
こんな状況にして
(はっ!今のこの姿勢、テーブルの下から向こうに、フィスカの絶対領域がっ! )
なんてことに気が付いた。
勇旗は勇旗で、常人からすればだいぶ思考が狂っていた。
いやいや、年端も行かぬ少女に俺は何を求めているのか。
この狂乱の時においても、心はパッつん前髪一筋、と我に返った勇旗は
「あぁ、思えば17年間。良いことなんて全然なかった! どうせ同じ罪人扱いになるなら、本当に悪事をしてでも楽しく生きたかった! 」
せめてもの救いは、最高にぱっつんな前髪と共に最後を迎えられることか。まぁ、元凶をつくったのもこの前髪なんだけど。
くそ! そうだ! 全部この前髪のせいだ!!
「この! 前髪やろう! 最高の前髪はお前だよ! 前髪齧らせろ 」
意味不明な発言に、フィスカが若干引いている。
『ドン!! 』
足音やサイレンのような予兆はなかった。
いきなり窓ガラスを叩く鈍い音が部屋中に木霊する。
もう警察がここまで来たのか。
ドンドンドンドンドン!!
あぁ、窓を開けられてしまったら、終わってしまう。
せめてもう少し、感傷に浸らせてくれ。
ドン、ドンドンドン!!
勇旗の考えをよそに、フィスカがスッと立ち上がった。
絹のような細い髪とスカートがふわりと宙に舞う。
「思ったより早かったな 」 とフィスカは迷いのない足取りでベランダの窓に向かい、一切躊躇ことなくカーテンを開いた。
明るさに目を細めると、そこには全身紫色の着ぐるみが立っていた。
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