第17話 青い人影◆ダリタキガル??◆
それは明らかに異常、不自然で……ひと言で表せば、気味が悪かった。
本来、自然でない様子を示す意味で作られた【グロテスク】という言葉は、きっとあの物体の為の言葉だ。
汚く煤け、日影の落ちた、ほの暗い高架下。
勇旗とフィスカのすぐ背後に、淡く青い物体が2人。
「人間の……… こども? 」
勇旗には、それは人の形をしているように見えた。
フィスカより少し小さい、140センチくらいの背丈さで、青くぼんやりとした輪郭は、薄く光っているようにも見える。
その異様さとフィスカの言い方から察するに、きっと、さっきの黒い奴と同じ――
「これも、その……ダリタキガル、なのか? 」
青白い影はまるで、かくれんぼの鬼が隠れている子供を見つけたときみたいに、此方を向いてクスクスと笑っている。
声ではない雑音、風が枯れ枝を揺らすような掠れた音は、不思議とそれらが笑っているんだと、勇旗に思わせた。
『っておい! 聞いてんのかコラァ!? 』
「 ――!! 」 リエットの声に勇旗はハッとした。
青い影は、一歩、また一歩とゆっくり此方に迫ってくる。
(今は、思考を止めちゃ駄目だ!)
「リエッ―――」勇旗の言葉が届くより先に
「リエット。 青だ、複数きてる。 そっちからはどうだ? 見えていなかったのか?」
とフィスカが、勇旗が手に持っていたスマホを奪い取った。
ひらりスカートをなびかせて、足は肩幅に開き、両袖を捲って灰色の地に立つ姿、まさに歴戦のパッつんがごとし。
『 あいつが…… で、それで…… 』
「なに? 勇旗の話が長くて監視を怠っただと? ふむ……。 なら仕方ない」
「おい? 」
(電話先でリエットが何と言ったかはよく聞こえないが、なんか俺のせいにしてやがるな? )
『 すでに広場はダリタキガルが…… 戦闘は長期戦にすべきでは…… 』
「向こうにもそんなに? ヴァーサも本調子ではない、ここの位置はキープしたかったが、ん? 戻れだと? そんなのは断固拒否だ。 」
なにか揉めているのかな?
でもフィスカの口調は怒ってるというよりは、得意げなんだよな。
なんであいつは常に偉そうなんだ?
『 » 』
「はっ! そっ、それは………うぅ。 わかった、肉まん買って帰るから、それはナイショで、うん…… 」
おっ、電話が終わった。
おそらくフィスカが弱味を握られ、肉まんで手を打った模様。
フィスカを黙らせるほどの弱味……! 内容を今度ぜひとも教えていただきたい。
にしても、みんな好きだよなぁ、《《だたり駅名物》》、《《だだが屋の肉まん》》。
「てか、呑気にお土産の話してる場合じゃないって! ヤバいって! 」
そうこうしているうちに、青い影はフィスカのすぐ手前に。
勇旗は思わず、フィスカの手首を掴んでぐいっと引っ張った。
しかし、当のフィスカは至って冷静。
服の裾から赤いビー玉のようなものを取り出し、
「ええい! 」と投げつける。
投げつけられた青い影は、当たった場所から、まるでガラスが砕けるみたいに崩れてしまった。
地面に転がり、キラキラ光っている欠片を前に、フィスカは一度、そっと目を閉じた。
「勇旗、さっき渡したチョコの包み紙は持っているな? 」
「あぁ後ろポケットに入ってるけど 」
「なら、転がっている欠片を1つ、それに包んでおくように。 そいつらはどうせすぐに復活する。 急いでヴァーサの所に行くぞ 」
「おい! ちょっと待てって! 」
ほんとに、説明なしに次々とことが進んでしまう。
ダリタキガル……。
いったい、フィスカたちは何をしているんだ。
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