八幡編その3
穴門に行くのよ、さあ何をしているの?準備はできたの?
神功皇后は美しい風貌であったが、性格は男のそれのように強く、そして、とても短気だった。
オヤシロ様が待っているの。
穴門周辺は敦賀と並んで朝鮮半島からの渡来人であったが賑わっていた。神功皇后にとっても国に帰ったようでもあり気分は華やいでいた。
事実、神功皇后は仲哀天皇と穴門で7年間暮らすようになるのである。
神功皇后が暮らした7年間は新羅からの度重なる侵攻のために常に戦時下にあったといってよい。
神功皇后の乗った船はまた、瀬戸内海を回るルートをとって穴門に到着した。
途中、仙酔島によって、神仏に祈願した。この事実はあまり知られていないが、この縁をもって、その後の歴代天皇の「仙酔島詣で」が始まることになるのである。それは今に至るまで続けられている。
この仙酔島が厳島神社を作るときの候補になっていたが、上のような理由で選考を外れ、厳島神社は宮島に作られることになった。
神功皇后様がお着きになられました。供の者の声が聞こえた。
仲哀天皇は、おお、お着きになられたか、と言って邸宅の門のところまで出迎えた。
オヤシロ様。
ささ、今日のところはお休みなされ、さぞお疲れでしょう。
では、お言葉に甘えまして。と言って神功皇后はニッコリ微笑んだ。
神功皇后が微笑むと周囲の者の動きが止まるほどの力があって、強烈に皆を癒しに導くのだった。
仲哀天皇もしばしうっとりして、神功皇后の後ろ姿を見送るのだった。
しかし、穴門の優雅な雰囲気に反して、海の向こうでは日本に侵攻する動きが始まっているようであった。
次回、眷属物語 八幡編 4 に続きます。(©️2022 keizo kawahara 眷属物語)