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ネーペ  作者: PpEe
8/10

情報提供者

 そろそろ約束の時間が迫っている、パン屋の中に時計があるおかげで時間を把握出来ているようだが、まだこの付近には警察や沢山の野次馬がいるため小林は情報を渡す人間が現れるのか不安な気持ちが湧いてきた。


「来ますかね? 情報を渡すにしても人の目には触れたくないと思うんですけど」


「この事態を想定してたかは知らないけど、メンバーの誰かが持ってくるから下手なことはしないだろう」


 約束の時間になったが周りには怪しい人物は見当たらない。


(流石にそれらしき人物はいないか、ここは人が多すぎるし早く離れたいな)


 遠くにいた若い警察官は何か用があるのか小林達に近づいてきた、落ち着いているようだがまだ経験が浅いのか今回の死体を見て顔を歪めていたのを小林は覚えていた。


「ご協力感謝します、今回の事件、襲撃者が何かしらの能力で操られている可能性が出て来たのですが、何か心当たりはありますか?」


 若い警察官がいうには、今回の襲撃者は何かの能力で操られていたようだ。


(このタイミングで操られた襲撃者が来たのは間違いなく微睡みの天使だ、問題はこの警察官に話して大丈夫か、こちらが追っていることを知っているのなら情報が漏れているな)


「こちらが追っている能力者の可能性が高いですね、能力は判明してないのですがこの襲撃者が操られていたのなら、人を操ることができる手段を有している能力なんでしょうね」


 警察が敵になる可能性がある以上、無難な発言しか出来ない小林にネーペは助け舟を出した。


「こっちも情報を集めているからさ、何か情報見つけたらそっちに共有しておくよ」


 全く情報を渡す気がないネーペは、この場から離れるためにそれらしい事を言って去ろうとしている。


「了解です、そのように伝えておくのでもう帰ってもらっても構いませんよ」


「では能力者を探さないといけないので」


 警察官には早く何処かに行きたいという意思が伝わったのかすぐに離れることができた、小林が悩んでる間にも、どんどん路地裏の方へ進むネーペに置いていかれないように追いかける小林。


「あそこにいたら被害が出てたね」


 いきなりあの場所にいたら被害が出ていたというネーペに驚きながらも、小林は有り得た未来を理解していた。


「やっぱりパン屋で襲ってきたことですか?」


「僕が戦えば周りの人間が死んでたかもしれないのにあんなことしたんだから周囲の人間が死んでも問題ないんだろうね、それに微睡みの天使は僕の能力が分かってないはずだからきっと遠くで見ていただろう」


「そうなるとこの付近には居ないのか、でも情報が合わされば特定出来る程の距離にはいますね」


 会話している2人に人が近づいてくる。


「ネーペ、情報持ってきたよ」


 元気がなさそうな女性の声に振り返ると、可愛らしい高校生ぐらいの女の子がパンを片手に立っていた、ネーペはなにかを思い出したのか指をさしながら女の子のことを見ている。


「あっー! そういえばパン屋の中にいた!!」


「パン屋の中にいたなら教えてくださいよ、なんで忘れてるんですか!!」


「ごめんごめん、もう来てるとは思わなくてね」


 おちゃらけた感じに笑いながらも、小林に対して多少の罪悪感からか素直に謝っていた、女の子はそんな2人を見ながらも表情を変えることはなく、落ち着いた佇まいで情報を話し出す。


「微睡みの天使についてだけど、どうやら調べた感じ2人ぐらい仲間がいることがわかったよ」


「2人ぐらいか…」


「2人までは確定してる、3人目がいるのかいないのかが分かんない、もしいるなら相当上手く隠れられてる」


 濁して伝えてきたことには納得したが、微睡みの天使に仲間がいる事実について考えていた。


「仲間がいるってことは何か企んでるんじゃないんですか?」


「狙われてるから殺されないために何かしようと頑張っているんだろうね、僕が誰かよく知っているだろうし」


「それと仲間の一人の場所は分かってる、この辺の壱柄(いちがら)っていうお店の店長だよ」


 小林はすぐにスマホで壱柄を検索してみると現在の位置から2km離れたところにあるようだ、レビューの評判は良いみたいなので怪しい人物が出入りしていたりするようではない、ネーペは小林のスマホを覗き込むと、手を顎に当てながら悩んでいる様子。


「場所が分かっているのは罠なのか、能力次第では初見殺しかもしれないけど、手掛かりがそいつしかいないのなら兎に角行ってみるか!」


「どう考えても罠の予感しかしないんだけどな」


「気にする必要はないさ、それと友里(ゆり)ちゃんありがとね〜」


「命令だから」


 特に何も感じていないのか、全く表情を動かさずに淡々と言い切った。


「もっと顔が動けば愛嬌があるのにね〜」


「からかわないで早く向かいますよ」


「はいはい」


「情報感謝します、それでは」


 小林達は路地裏から抜け出し携帯を見ながら壱柄を目指して歩いていく、後ろにいたはずの友里の方を振り返って見ても既に消えていた。

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