直感と推理?
とりあえず、微睡みの天使に関する情報を3時間後に得ることが出来る小林、たがあのネーペが3時間の間に何をするのかが問題だ。
「さっきは助けてくれてありがとうございます」
「元々僕が提案したことだからね、君が死にそうなら助けてあげるさ」
ウインクをして都合のいい事を言ってるネーペに、呆れながらこれからの事を聞いてみる。
「これからどうしますか?3時間後に情報を届けてくれるらしいですが」
「どうせだし、3時間以内に微睡みの天使を探してみようじゃないか」
(ネーペはまたゲームを仕掛けてきたのか?)
「ゲームだなんて、ただ3時間の間退屈だなって思っただけさ」
どうやらネーペの頭の中に3時間待つという考えは無いみたいだ、だが小林の能力では3時間以内に探すのはどう頑張っても難しい、ネーペが手伝うのなら話は別だろうが、こんなゲームをしている時点で3時間以内に微睡みの天使へ辿り着くような情報を渡すことがないのは分かっていた。
(どうする、3時間以内に探せるのか試している可能性まで出てきてしまった、ルートンと戦わせようとしたのも実力を測る狙いがあったのかもしれない)
「それなら微睡みの天使について知ってる人を探すしかなさそうですね」
「それじゃ、その知ってる人っていうのを探すのはどうするんだい?」
(国塚さんに聞くのが一番だが、恐らく求められているのなら安直すぎる選択、だからといって微睡みの天使について知ってる人間に心当たりがない)
国塚以外に思いつく人間がおらず、ネーペの考えも分からないまま答えを出す。
「国塚さんに聞いてみます、あの人なら何かしらの情報を持ってるでしょう」
(何も答えないよりは情報を持っているであろう人間に聞くのが一番いい)
「だけど僕に頼っても連絡先ないよ」
スマホすら持っているか怪しい人にわざわざ頼ることはない小林は、ネーペに会う前にあらかじめ国塚から電話番号を教えて貰っている。
「国塚さんの電話番号は持っているので連絡はできます、ただ条件によってはこちらへ情報は渡せないのではと思ったのですが」
ネーペが情報を渡させてない時点で、契約における条件に組み込まれているか、口頭で情報を持ってこなくていいと言ったのか二つの可能性を考慮していた。
(試しているのなら条件の事に触れておけば多少評価はしてくれるだろう、試していないのなら条件に引っかかっていないか聞くことは自然な質問で終わり気づかれる可能性は低い)
そしてもう一つの可能性に勘づいていた、それはネーペの性格にある、ネーペと考えている際は思考を読み遊んでいるが、ルートンとの戦闘前だったりで能力の発動条件について考え、質問する際は先出しして答えて来なかった事に対して違和感を感じていたのだ。
(さっきから思考を読んでるにしてはおかしい部分がある、もし今考えていることが正しいのなら、俺の直感はこれが真意だと囁いている、そして記憶違いの可能性すら含まれない疑問への解答になりうる)
「よく気づいたね、条件に含まれているよ」
多少感心したように褒める、嬉しいだとか悲しいなどの感情的なものではなく、まるで答えをあらかじめ知っていたかのように素っ気なく返事を返す。
「だけどあと一つ気になることがあるんです」
「それは何かな?」
「さっきから試されてるような感覚、俺の能力を試しているのかと思ったけど何か違う」
話を聞いているうちに段々とネーペが笑顔になっている、目は先程よりも灯りを灯し、待ちわびていたのか口角は上がっていった。
「本当に試されているのは自分の能力を当てることができるのか、これは直感ですがネーペの能力の一つは"思考の中にネーペと考えが混じってしまうと相手の思考を読むことがが出来る能力"思考が読まれる時と読まれない時の差は記憶している限りではこれが条件ではないのかと考えているけど、当たってる?」
惚けているのか分からないが、整っている顔の
面影すら感じなれない程、狂気へと染まったおぞましい笑みがその顔に現れている。
「ヒトメボレしちゃいそう❤」
嫌悪感しか湧かない小林の心情は、今までの人生史上でも最悪の状態になっていた。
(コイツの能力は当てれたのは偶然に過ぎない、性格からして人を弄ぶ事が好きで堪らず、つい壊してしまう危うさを兼ね備えていることを分析出来なければ試されている事にすら気づくことはなかった、そんな遊びに耐えることができる知能と能力を併せ持つ人間を欲しているのか)
どうしても憂鬱な気持ちに走ってしまうが、この能力を当てることができなかった場合を考え、前向きに気分を入れ替えようとしている。
「気づいたのはルートンとの戦闘前、ネーペの性格なら先に答えてくるであろう疑問を答えて来なかったことだ、その他にも思考にネーペと混じってない時は思考を読まれ遊ばれることはなかったのが頭の中で引っかかった、ただの直感にすぎないけど」
「それは世間一般に言う直感ではないよ、小林くんにしかないものさ、絶対記憶がすべてを記憶していることに加え、君は頭がいいからね、無意識のうちに頭の中で整理していった結果が直感の正体さ」
(だからか、この能力が発現してから妙に直感がいいと思ってた)
小林は心の中ですんなり納得していた、今まで生きていた中で直感に助けられた事もあり、絶対記憶による影響だったのをネーペに教えられたからだろう。
「あなたみたいな人間としばらく一緒に居なきゃいけないとは・・・」
「この2時間程度で随分僕への態度が変わったみたいだね?」
「正直今後の自分を考えて悲観してますよ、あなたに対しての好感度は最悪だ」
「ならあとは上がるだけかな?」
「上がればいいですね」
小林には今後ネーペに遊ばれる光景が嫌でも浮かんでしまう、いつかは限界を迎えるのだろうか。
「だけど期待どうり動いてくれて嬉しいよ、私の真意を読み取れたの者はそう多くない、君の上司の国塚君も気づいてくれたんだよ」
「だけど気づかなかったら?」
「遊ばれていることにも気づかずにいつかは壊れてしまうね」
明らかに歪みきった異常な本性は、到底人とは思えないまでに狂っていた、表面上は綺麗に見える人間が気づけばその残滓すら残さずに消え去ってしまい、小林の中で死ぬまで住み着くバケモノが目の前にいるのかもしれない。
(コイツを殺さないといつかは自分自身が喰い尽くされてしまう、だが自分より強いバケモノに勝つ手段を有してはいない、頼れるそうなのは一人・・・)
「改めて今後ともヨロシクね! 最高の出会いに感謝するよ」
「最悪の出会いに感謝します」