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ネーペ  作者: PpEe
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ルートンとの近接戦闘

「それにしても、どうやって微睡みの天使を見つけるんですか?」


「こんな私だが友人がいてね、少しばかり手荒い連中だが」


「戦闘になっても、俺の能力じゃ太刀打ち出来ないかも知れませんよ」


「少なくとも僕と一緒にいれば死ぬなんてことは起こりえない、それに久しぶりに顔を見たかったからね」


 動機としては孫に会いたがってる老人だが、荒い連中と言ってる相手がどう考えてもマトモな訳がない。立場的には捕まえる側になりそうだ。


「そういえば、契約(・・)条件(・・)って具体的にはどんな契約を結ぶんですか?」


「なんでも、それこそ人を生き返らせる能力が欲しいのなら契約をそう結べばいい、欲しいものがあるのなら」


「だがそれだけの能力を得ようと思うなら、それだけの対価を支払わなければいけないんじゃ?」


「気分だよ、気に入った相手ならただであげちゃうこともある、気に入らない相手にはそれ相応の対価を支払ってもらうことになる」


「じゃ、深い知識はそれとは違うんですか?」


「言っちゃったら意味ないだろ?」


「確かにそうですね」


(やっぱり聞くことはできないか、知識と言っていることから能力関係のものを聞き出すことができると思ったんだけど)


 現在小林が歩いてる所は治安が良いとは言えないような場所だった、ネーペの荒い連中とやらもまさにこんなとこにいるんだろうなと思えるほど怪しい雰囲気を醸し出しており、所々に見える人間を観察するとあまり柄は良さそうには見えない。


(それにしてもネーペがコネを持つなんて一体誰なんだろうか)


「犯罪者集団だよ、有名な子達だけど」


「有名な犯罪者集団ってなると、・・・ハデスですか?」


「しっかり勉強してるんだね」


(毎回考えていることを読まれるのは余りいい気分ではないが、そんな事よりも今からハデスに会うことになるなんて。)


 能力保持者の犯罪者集団となるとハデスが日本では有名だ、確認されたのは今から7年前、詳細な人数、能力も不明、今まで捕まえようとしても捕まらず、あまりの危険さから殺害が許可されようと結局はハデスを追い詰められずに逃げられてしまった、現在は裏の人間からは恐れられ、恨みを持たれた人間から賞金まで付けられるようになってしまっている。


「けどハデスが今回の依頼対象を見つけてくれますかね?」


条件(・・)だよ、彼等との契約によりあっちは僕のお願いを聞かなきゃいけないんだ」


「ハデスと契約(・・)を結んだんですか、どんな契約(・・)を?」


「グイグイくるねぇ?まぁ教えたところで特に問題ないし教えてあげよう!」


 本当に教えてあげられるような内容なのか疑問だが、ハデスとの間で交わした契約(・・)について教えてくれるらしい。


「彼らが願ったのは家だよ、何者にも邪魔されない見えない家」


「何故そんなものを?」


「それは教えられないよ、知りたいんだったら自分で考えてみたらいい、その能力(・・)は君にはある」


 詳細までは教えてくれることはない、それでもハデスに関する情報を知ることが出来たのは破格と言ってもいいだろう。


(仕事柄聞いてみたが恐らくハデスが捕まらないのは家の存在が大きい、ただの家じゃなく何かしらの能力がついてることは分かったが強力な能力等を望まなかった事を考えるとハデスのメンバーは足りている可能性が高い、なら安全な場所が欲しかったのか?)




 しばらく歩いていると突然地面に穴が空いた。本当に突然の出来事で反応できなかったが、穴の全容は分かる、木製のドアがアスファルトの地面に浮かび上がっており、そのドアが内側へと開いているが中の様子は真っ黒な空間が続いて見ることはできない、先に落ちた足から沈むように見えなくなっている。


(どんどん吸い込まれていくけど、この先がどこに繋がっているかは大体分かる、恐らく―――)


 小林の全身が呑み込まれると、ログハウスらしき家の中に移動させられていた、部屋の奥にはソファに座ってネーペを見ている男が首を傾げながら淡々と話し出す。


「久しぶりだな、ネーペ」


「やぁ、久しぶりだねルートン、元気だったかい?」


「問題ない、それより隣にいるのは誰だ?」


「僕の新しい監視役さ」


 ルートンと呼ばれている男の髪は、紺色のウルフカットが首辺りまで伸びている、紫色の目は無機質に見えるほど輝きが見当たらず、首には猫の肉球らしきものが付いた細いチョーカーを巻いていて、フード付きのパーカーと着古したジーンズを履いている。


「あの、ネーペの監視役代理を言い渡された小林と言います」


「なるほど、能力管理の奴らか」


(第一印象全然良さそうじゃないけど大丈夫か?)


「連れてきちゃダメだったかい?」


「いや構わない、それより今日来たのは何か用があったんだろう?」


「今日来たのは微睡みの天使って子を探して欲しくてね」


 ルートンは少し考える素振りを見せると空虚な瞳をネーペへ向けた。


「無理だな、こっちもやることがある」


 ネーペの話していた契約(・・)条件(・・)の話はどこに言ったのか問い詰めたい気分になる小林だが、ここから話の行方がどこへ向かうのか気になるので黙って話に耳を傾けておく。


「それは残念だな〜、だけど微睡みの天使をこっちは探して欲しいんだよ、どうしても無理って言うなら無理矢理やらせちゃうけど?」


「脅しか?そんな事するつもりないだろ」


「バレちゃったか!ならゲームに興味は?」


 意味深な笑みを浮かべながらネーペはルートンを見つめている、いい予感はしないがルートンはゲームと聞いて興味が湧いたのか内容について聞いてきた。


「詳細は?」


「ルートンには小林君と能力無しでの近接戦闘をやってもらう、勝利条件は相手の身体に攻撃を当てること、ちゃんと攻撃を防げれば攻撃にはカウントしないよ」


(だいぶ勝手に話が進んでいるけど微睡みの天使に関する情報を得るためにはルートンに勝たなければいけない、能力無しのおかげで勝てるかもしれないけど俺の能力は絶対記憶(スタンプメモリー)、常に発動しているから能力無しでの勝負にはならない)


「ですが俺の能力はパッシブで発動しています、これでは能力無しの勝負にならないのでは?」


「ネーペ、コイツの能力は戦闘関連か?」


「いや違うね、能力に攻撃性は含まれてないよ」


 小林はネーペに対して何か違和感を感じつつも今の問題を解決するために頭の片隅へ追いやった


「なら俺だけ能力無しで構わない」


 堂々と、端正な振る舞いで能力を使用されても問題ないと言い切ったルートンに、小林は目の前の人物がハデスのメンバーだと再認識する。

 小林から見て、ヤル気を出してる今のルートンは今まで見た人間の中でも間違いなく3本の指に入ると分かるほど、濃密な殺気を醸し出していた。


「戦うことは分かったんですけど、どこで殺り合うんですかね?」


「それなら問題ない、場所はここだ」


 そう言った瞬間に今まで居た空間が白いだけの不思議な空間へ変わると、ルートンの立ち位置から外側へと円形の闘技場に姿を変化させた。


(この家って呼んでる物スゴすぎだろ!?)


 これだけの代物を持っている事と、一瞬にしてログハウスから円形の闘技場になった能力に対して純粋に驚いていた。


(これだけの物を契約で手に入れるなんて、一体どれだけの対価を支払ったのだろうか)


「判定はネーペに任せるとして、お互い5メートル離れた位置から開始しよう」


 お互い5メートルの距離をとると、小林は棒立ちのルートンをみて思わず固唾を呑む。ルートンとの間にある歴然とした差を身体で味わっていた。


(ルートンと戦えば負けることは火を見るより明らかだが、この勝負は一発でも相手に与えられれば勝てるからカウンター狙いなら勝ち筋はある)


「それじゃ、スタート」


 遂に試合のゴングが鳴った、やはり先手を取ったのはルートン、身体を小林の方へ倒れるように傾け、そのまま地面についた手を起点とした右足での蹴りを小林の太ももへと放った。


(あっぶな、完全に先手必勝の攻撃を仕掛けてきたな、何とかバックステップを踏んで避けれた)


「よく避けたな」


「何とか避けれッ!」


 話してる途中に容赦なく、左手で突き刺すように右肩を狙ってくる、これは右腕で防ぎきれたが追い打ちをかけるように右足で左脇腹目掛けて押し出すように蹴ってくるが、右足を軸に左足を後ろに引いて躱す。


(チャンス!今なら右足に攻撃することが出来る)


 右足に攻撃しようとした瞬間、また倒れ込むかのようにして両手をつき、地面についてる左足の力と両手を使い後ろ向きに空中へ回転し、勢いを殺さずにそのまま左足で攻撃を仕掛てきた。


(いくら何でも身体能力高すぎだ、これで能力使ってないなんて体の構造が違うんじゃないのか?)


 腕をクロスして防ぐことが出来たがこのまま戦い続けても勝てないことは分かりきっている。


(どこかで隙を見出さないとジリ貧だな)


 先程の攻撃で小林の身体はルートンの攻撃を無理に防いだ事によるダメージが蝕んでいた、上手く受け流そうとしてもペースを乱されたり、隙らしきものがないことによる焦りと絶対記憶(スタンプメモリー)によって攻撃の型を読もうとしても観察する余裕がないため反撃の兆しさえ見当たらない。


(こうなったらできる限り上手く受け流して型を読み切るしか勝算がないか、そうなるとこっちが完全に読み切れるかの耐久勝負になっちゃうな)


 その後も上手く受け流すがルートンの巧みな攻めによって反撃の機会すらなく、状況としては圧倒的なまでの差によって覆りそうにない、小林からは時折受け流せずに防いだ際の鈍い音が辺りに響いていた。


(そろそろ限界だが観察していて分かったことがある、左手の攻撃時は多少だが右に比べて速度が遅い、それにさっきからルートンより左に居ると左手でフック仕掛ける癖があることは絶対記憶(スタンプメモリー)で完璧に記憶している、左手の際にカウンターを決められるかがこの勝負の鍵だ!)


 その後も一方的な攻防があったが、ついにこの戦いの終わりが訪れた。

 ルートンの左を取る小林、予想通りに左手でフック気味に放ってくる際、前へ駆け顔をずらし紙一重で避ける、がら空きの脇腹へ小林は当たる確信を胸に抱きながら左足を軸に身体を捻り右足の速度を上げて蹴りを入れるその時。


「いい線いってるが、経験不足」


 蹴りを入れられる瞬間にルートンは地面を蹴り身体を引く、当たると思っていた蹴りは空振り、完全に無防備な状態なってしまった。


(確かにフックを放っていたはずなのにすぐに引くことが出来たという事は、あのフックは元々ブラフだったのか)


 唖然としながらも攻防を交わす時とは打って変わって、今までの攻撃とは違う殺気を纏った右手による手刀が小林の首目掛けて飛んでくる。


(無理だ、避けられない、でも避けなければ確実に首へ届き出血による死は免れないだろう)


 ルートンの攻撃が届く瞬間、いつの間にか移動していたネーペによって死神の鎌は片手でいとも簡単に防がれた。


「おいおい、いくら何でも殺されたら困るよ」


「元々お前がこんな提案した時点で、どんな攻撃しても防がれてたのは分かってた」


 ネーペによって防がれた攻撃だったが止めなければ間違いなく致命傷になっていただろう、そしてルートンは元々ネーペが止める事が分かっていたようだ。


(いつの間に移動してきたんだ? 最後の瞬間は確かにネーペが離れた位置から見守っていたのは覚えているが、移動の動作すら見えていないとなると何かしらの能力か)


「後小林だったか、最初から受けの姿勢で挑んできたところでカウンター狙いの一発屋だって事ぐらいどんな馬鹿でも気づく」


 何故か説教されてるが、的を得た意見に感心してしまう、言ってることは間違いなく小林のスタイルの弱点をついていたからだ。


(確かにその通り、そして格上相手の経験が浅いのも今の自分の弱点だ)


「教えてくれてありがとうございます」


「後もう一点、微睡みの天使の情報だが3時間後に届けておこう」


 さっきまでやらないと言っていたのは何だったのか疑問に残るが、どうやら微睡みの天使について情報を持ってきてくれるらしい。


「感謝するよ、ツンデレを発動しなかったらもっと簡単だったんだけどね」


「残念だがそんな能力は持ち合わせていない」


「本当に? なら能力じゃないのかもね」


 二人の会話に相変わらず追いつけない小林だが、今考えていることは先程の戦闘でいつの間にか移動していたネーペについて考えていた。


(あれが能力だとするなら、気づかれることなく一瞬にして移動が可能なわけか)


「なら3時間後にまた会おうね」


「俺は忙しいから他のやつが届けに行く、残念だがしばらく会うことはないだろうな」


「ありゃりゃ、それは悲しいねぇ、せっかく弄りがいがあったのに」


 お互い本心は全く残念がって無さそうだが、どうにか微睡みの天使に関する情報を得ることが出来そうだ。


(ほかのメンバーか、やっぱりルートンと同じくらい強いんだろうな)


 そんなことを考えていると、いつの間にかドアに呑み込まれる前の場所に移動させられている。



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