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クズ野郎異世界紀行  作者: 伊野 乙通
ep.6 タクティカル・アトランティカ
154/187

#5 いざないのオルファン

 海辺の小さな町の、とある民家。正装を着込んだキミヒコはホワイトと共に、その民家で人と会っていた。


 相手は、ネイティブ・オーダーという、先住民族のレジスタンス組織の人間だ。

 いつもはルセリィという名の、先住民族の族長の娘が来るのだが、今日は違った。


「ですから! 私たちは、散々虐げられてきた彼らに、この島を返すためにも——」


 キミヒコの前で熱弁を振るっている人物が、ルセリィの代理だった。


 名前はエミリア。先住民族ではない。

 栗毛のボブカットに青い瞳の、快活な印象を受ける少女だった。


 ルセリィのやつ、舐めてんのか? こんな小娘を送ってよこすとか……。でも、先住民族じゃないってのも妙だよな。何か、理由でもあるのか……。


 キミヒコがエミリアという人物について考察している最中にも、彼女の演説は延々と続いている。「そうなんだー」とか「大変ですねー」とか、いい加減な相槌をしながらキミヒコはそれを聞き流していた。


「ガルグイユ人もカイラリィもシュバーデン帝国も! みんな自分勝手です! 無理やりにここを支配して、先祖代々住んでいる人々を蔑ろにして——」


 ネイティブ・オーダーという組織の道徳的、倫理的正しさについてエミリアは説いているが、キミヒコは全然興味がない。自らに利さえあれば、正義の組織でも悪の組織でもどうでもいいのだ。

 関心があるのは、ルセリィという人物がこのエミリアという娘を送ってきた理由についてだ。ルセリィはしたたかな人間だと、キミヒコは認識している。


 なんか、変な思想にハマった若者って感じ……。カレンとは似ても似つかないな、この小娘……。


 だが、しばらく我慢してエミリアについて観察を続けても、出てくる感想はこれくらいだった。腰には剣も差しているが、全然強そうに見えない。魔力も普通だ。


「ルセリィさんはキミヒコさんを買っているんです! この大義のため、是非あなたの力を——」


「いやもうわかった! 感動した! エミリアくんの理念は素晴らしい!」


 もういいだろうと、キミヒコは話を強引に切り上げた。

 あとはもう「検討させていただいて、後日連絡します」とか言っておけばいい。当然それきり連絡はしない。ルセリィの思惑がどうあれ、キミヒコは絶対に傭兵仕事などやりたくなかった。


 だが最後に、質疑応答をすることにする。この少女自身は先住民族ではないというのに、ずいぶんと彼らの肩を持っているのが気になったのだ。


「そ、そうですか……。では、キミヒコさんも我々ネイティブ・オーダーに——」


「ていうか君、ガルグイユ人なの?」


 エミリアの勧誘の言葉を遮って、キミヒコが聞く。

 その質問に対して、エミリアは不快な顔をして「違います!」とすぐに否定した。


 言葉を遮られたからではないだろう。ガルグイユ人と思われたことに対して、気分を害したようだ。先の熱演でも、ガルグイユ人やカイラリィについて散々に文句をつけていた。


「それなら、カイラリィの人?」


「違う! そんなわけないです!」


「じゃあどこの誰さ」


 キミヒコの問いかけに、エミリアは言い淀んだ。


 彼女は見た目からして先住民族ではない。しかし、ガルグイユ人でもカイラリィの人間でもない。当然、帝国軍の人間でもない。

 言うか言わないか、しばらく悩んでいたようだが、彼女は意を決して口を開いた。


「あなたと同じで、他所から来た人間ですよ」


「……この島の出身じゃない? なら、どこから来たんだ?」


「言ってもわからないと思いますが、ルーマニア社会主義共和国っていう……あ、いや、今は社会主義共和国じゃなくなったけど……」


 エミリアの言葉に、キミヒコはフリーズした。


 ルーマニア。キミヒコの記憶では、それと同名の国家はアマルテアにはない。その国家が存在するのは、キミヒコの元いた世界の欧州だ。

 そして、社会主義共和国というのもキミヒコの気にかかった。キミヒコの知る現在のルーマニアは、そんな国体ではなかったはずだった。


「どうしたんですか? ちょっと怖いんですけ——」


「誕生日は?」


 キミヒコが問う。その質問には、結構な圧が込められていた。キミヒコの左目、金色の瞳が刺すような視線をエミリアに送っている。

 唐突に態度を豹変させたキミヒコに、エミリアはしどろもどろだ。


「え? ……え?」


「だから誕生日は? 何年何月何日生まれだよ?」


「日付は……わからない。孤児院で育ったから……」


「おおよそでいい。何年生まれだ?」


「1970年代の後半くらい……。あ! 暦は言語教会の使ってるやつじゃなくて——」


「いや、もういい。だいたいわかった」


 キミヒコとしては他にも確認したいことはあるものの、とりあえずは会話を打ち切った。


 1970年代生まれ……? だが、この娘、俺より歳上には見えない。転移した時間がずれている? それに、ルーマニア……。欧州の近代史なんて詳しくないからわからんが、社会主義共和国ってことは当時は共産圏だったのか。


 黙考するキミヒコを、緊張の面持ちでエミリアが見ている。


「エミリアくん。自分の出身について、他に誰かに喋ったことある?」


「え……と、世話になった、族長さんの一家で、話しました……けど」


「他は?」


「ないです。ルセリィさんに口止めされてます」


 それだけ聞いて、再びキミヒコは黙ってしまう。

 エミリアはこの部屋に来た当初の熱意を完全に削がれてしまって、所在なさげな様子だった。


「あ、あのどうしてそんなことを? やっぱり何か良くないことが——」


「口止めされたことを、どうして俺に喋った?」


 そちらからの質問は許さない。キミヒコはそういう雰囲気をわざと出して、彼女の質問にさらに質問をぶつける。


「それは、その、ルセリィさんが、キミヒコさんには喋っていいって……」


「喋っていいじゃなくて喋って気を引け、じゃないのか?」


 エミリアが沈黙する。キミヒコの指摘は図星だったようだ。

 今回、キミヒコの方から出身を尋ねることにはなったが、断られる雰囲気になった際には彼女からこれを話す算段だったのだろう。


 ルセリィが、この少女をわざわざ送りつけてきた理由を、キミヒコは理解した。そしてその手段は、気に入らないが効果があった。


「いったん、帰れ。お前たちの組織へ参加するかどうかの返事は、保留する」


 キミヒコがそう言うと、エミリアは露骨にホッとした顔をする。が、すぐにその表情が悩ましげになった。

 この唐突に始まった圧迫面接みたいな状況から逃げられるのは嬉しいが、返事は保留というのが気がかりらしい。


「それと、ルセリィと面談したい。アポを取ってくれ」


「えっ! ということは、前向きに検討するってことでいいですか!?」


「それはルセリィと話すことだ。君が組織内でどういう立場か、俺は知らないしな」


 キミヒコの言葉に彼女はとりあえず満足したようだ。

 ルセリィとのアポイントメントをすぐに取ることを約束し、「是非、是非よろしくお願いします!」と言ってキミヒコと握手をしてから退出していった。


 彼女が出ていって、しばらくして。


「……ホワイト。周囲はどうだ?」


「誰もいませんし、盗聴の心配もありません」


「あの小娘、お前はどう見る?」


 冷酷な声色で、キミヒコがホワイトに問いかける。

 不可解なことや、不測の事態が起こった時、キミヒコが最も頼りにするのはやはりこの人形だった。


「要警戒です。騎士級の戦闘能力を保持しています」


「なんだと? そんなふうには見えなかったが」


「身体スペックや魔力の質、量などは確かに並以下といったところです。ですが、あの女の深層……芯の部分が、強力なプレッシャーを発していました」


「プレッシャー?」


「はい。アーティファクトの持つ神秘性に近いものですね」


 ホワイトにしては珍しく、その言葉は抽象的ではっきりしないものだった。だが、この人形が強いと認識しているのなら、確かにエミリアは強いのだろう。

 全然そんな警戒はしていなかったのに、先ほどまで相対していた人物が騎士級の戦力と聞いてキミヒコは恐れ慄いた。


 真世界出身で騎士級の戦闘能力。おまけに一見してその能力はわからない。キミヒコの中で、エミリアという少女は第一級危険人物のカテゴリに入った。


「あいつは異世界人だ。それはわかるか?」


「いえ、そこまではわかりませんでした。どうやって見破ったのです?」


「奴の出身国は真世界にある。それに誕生日を聞いた際の暦も真世界のものだった」


「なるほど。では、あのプレッシャーは、大いなる意思のもたらした神秘によるものですね」


 ホワイトの見解に、キミヒコは沈黙で答えた。


 大いなる意思。願いの神とも呼ばれる超常の存在。キミヒコはこの謎の存在によってこの世界に来たらしい。そしておそらく、あのエミリアも。


「……貴方。また来訪者です」


 考えることが多いため、黙して思案に入っていたキミヒコに、人形がそう言った。


「誰だ?」


「さっきの異世界人と、前にも貴方と会談した銀髪の小さい女です」


「アポを取れって言って、すぐに来やがった。近場で待機してたか」


 キミヒコがぼやくと同時、部屋の扉がノックされる。


 どうぞと言うと、「失礼するよ」と前置きしてから二人の人間が入ってくる。


 先に入ってきたのは、先ほどキミヒコと会談したエミリアという少女。後から入ってきた方は、ネイティブ・オーダーのトップ、ルセリィという女だ。

 先住民族らしい小柄な体躯に、腰まである銀髪をポニーテールにして纏めている。キミヒコと同じ年齢らしいが、とてもそうは見えない。

 先住民族だからというのもあるが、それ以上に顔立ちが幼く見える。この島の雇われガイド、スミシーもキミヒコと同じくらいの年齢の先住民族だが、彼の顔はしっかり大人の顔だった。

 対して、このルセリィは普通の幼な子といった感じである。


「やあ、キミヒコ殿。エミリアから聞いたよ。前向きに検討してくれるそうだね。嬉しくなって急いで来てしまったよ」


 舌足らずな声で、ルセリィが言った。

 そのまま、キミヒコの同意も得ずに、対面の席に座る。


「アポを取ってくれと、俺はそう言ったと記憶してるんだが?」


 目の前のルセリィではなく、入り口に立ったままのエミリアにキミヒコは文句を言う。


「あの、いや、そのですね……」


「まあまあ気にするな。私が無理を言ったのさ」


 エミリアが何かを言う前に、ルセリィが代わりに返事をする。図々しい物言いだ。

 ルセリィという女の相変わらずな調子に、キミヒコは嘆息した。


 毎度毎度、強引な女だな……。まあいいか。アポを取ってから、わざわざ会談をセットするのも面倒は面倒だしな。


 そう思い直して、扉の方、エミリアに向けて顎をしゃくってみせてから、ルセリィに視線をやる。

 それだけのアイコンタクトで、ルセリィはキミヒコの意図を汲み取った。


「エミリア。外してくれ」


「え……その、私は一応、ルセリィさんの護衛も兼ねてるんですけど……」


「いいから。頼む」


 数秒悩んだ後に、エミリアは部屋を出た。

 バタンと扉が閉じる音がしてから、ルセリィがニヤリと笑ってみせた。その可愛い顔に不釣り合いな、どこか邪悪さを感じさせる笑みだ。


「ハニートラップがうまく通じたようだねぇ……」


「どこがだよ。ハニートラップなら、もっと色っぽい娘を送ってよこせ。あんな芋くさい小娘を抜擢するとか、人事担当はクビだな」


「じゃあ、今度からキミヒコ殿が人事担当だね」


 ルセリィは一組織のトップとしては、異様にフランクな態度だ。キミヒコもそれに応じた態度でやり取りをする。

 すでに何度か会っているので、互いに気の置けない仲だった。交渉は決裂続きではあるが。


「……あの小娘を、釣り餌にしたか。俺を釣り上げるための」


「そこまで明確な意思はなかったよ。ただ、キミヒコ殿は教会と縁深いと聞いている。あの娘の経歴は、面白かろう?」


「エミリアを売るのか? 口止めしていたのを、わざわざ喋らせて……」


「売らないよ。うちの主力だし、いい子なんだよ、彼女」


 ルセリィの言い分に、キミヒコは胡乱な目を向ける。


 異世界からこの世界に来た物体や生物が見つかった場合、大抵、言語教会が研究目的で回収を試みる。言語教会にエミリアが連れて行かれた場合、おそらく彼女は悲惨な末路を辿ることになる。

 教会は真世界の探究のため、ありとあらゆることをやっている。そこに、人道的配慮などは存在しない。


「あの娘、どこから来た?」


「さあ? この島の、私たちの集落付近をフラフラしていたのを、保護したんだよ。本人の言ってた故郷とやらは聞き覚えのない国だったし、どうやってこの島に来たのかもわからないそうだ」


「出自を口止めしたのは?」


「島外の出身……それも、よくわからない場所の出身らしいからね。この島の住民、排他的だから。それで口止めしたんだ」


 矢継ぎ早に質問を浴びせるキミヒコに対して、ルセリィは淡々と答えてくれる。その応答に澱みはないが、真偽のほどはわからない。確かめようもない。

 しかし、明確に怪しい点もある。


「嘘をつけ。俺と言語教会の繋がりから、あの小娘の出自で興味を引けることをお前は知っていた。口止めはそれ関連だろう。お前は教会との繋がりがあるんじゃないのか?」


 キミヒコの追及に、ルセリィは観念したように両手を上げた。


「……その昔、私によくしてくれた言語教会の司教がいてね。彼が、私に色々教えてくれた。この嘘っぱちの世界とは別の、素晴らしい世界が存在するとかそんな内容。エミリアはもしかしたらそこから来たんじゃないかって私は——」


「その司教、今はどこに?」


 ルセリィに最後まで言わさずに、質問を重ねる。彼女はそれに「さぁ? ずいぶん昔のことだから」とだけ答えた。


 それきり、キミヒコは腕を組んで黙って思案に暮れる。

 その様子を、ルセリィは興味深そうに眺めていた。


「というか、彼女、売れるのだな。……言語教会が買い手かな?」


 沈黙を破って、ルセリィが問いかけてくる。


「そう。売らないのなら、教会にはあの娘の出身は伏せておくのがいい。……教会深層は、魑魅魍魎の巣窟だ」


「忠告、痛みいる。……ちょっと迂闊だったみたいだね。私は」


「迂闊だよ。……その有様でやんちゃしていると、そのうちにコロリと死にそうだな」


 キミヒコはそう言いつつも、目の前のこの女が何をどこまで考えているのかは計りかねていた。この小さい女は、必要があればエミリアを売りそうな気もしているのだ。

 ルセリィという女は、気の良さそうな態度と裏腹に、冷酷な一面も持ち合わせている。それをキミヒコは理解していた。


「なら、あなたに支えてほしい。ヴィアゴル戦役の立役者のあなたに」


「あのクソみたいな戦争で、戦争ってやつに俺は嫌気が差したんだ。傭兵はやらない」


「そのクソみたいな戦争が、カイラリィに致命傷を与えたんだ。あの忌々しい老帝国に。あと一息だよ。この島に逃げ込んできた残党を抹殺して、あの老帝国の息の根を止めようよ。一緒に、さ」


 今まで朗らかだったルセリィの口調が、憎悪の声色へと露骨な変化する。

 ルセリィは熱烈なアンチカイラリィだ。かの老帝国への憎しみを隠そうともしない。


 ……カイラリィ、この島でさんざん無茶な搾取をやったらしいからなぁ。こいつによっぽど恨まれることをやったんだろうな。まあ俺には関係ないけど。


 冷めた目をして、心中でそんなことを思う。


 今までの経歴上、キミヒコはカイラリィとは敵対的な組織に身を置くことが多かった。それゆえに暗殺者を送られたりもした。

 だが、別にかの老帝国に対して積極的に攻撃しようとは思わなかった。どうせ放っておけば、消えてなくなる国だ。大陸にある本国はすでに陥落している。


「別にその人形を戦わせろとは言わないよ」


「……欲しいのは、帝国軍とのコネか?」


「それもある。けど、本気で欲しいのはあなたのアドバイスかな。各地の戦乱を渡り歩いた、あなたの、ね」


 後方勤務で構わないとルセリィは言う。危ない前線には行きたくないキミヒコとしては、その提案は有りではある。

 だが、そもそもキミヒコは仕事を探していない。金銭的余裕はまだまだあるのだ。


 今、こうして会談を続けているのは、エミリアという異世界人について気がかりがあるからであって、この戦乱の行く末には全く興味がない。


「私が天下を取ったら、あなたの地位は約束するよ」


 微妙な顔をしているキミヒコに、ルセリィがそんな提案をしてくる。


「へーそうなの。じゃあ俺もカイラリィに倣って、民衆から巻き上げた金で私腹を肥そうかなー」


「いいねぇ。私もやる予定だよ。そのためにも、邪魔する奴らは全員消えてもらう」


 キミヒコのどうでも良さげな発言に、ルセリィは獰猛な笑みと言葉で返した。幼い顔立ちと声からは想像もつかないようなセリフである。

 彼女の弁は、ハッタリではない。少なくともキミヒコはそう判断した。


 他勢力が把握しているのかは不明だが、ネイティブ・オーダーにはエミリアという騎士級戦力がある。このうえホワイトという最強の駒と帝国軍とのコネクションを手にして、うまく立ち回ることができればどうだろう。天下を取るのも不可能ではない。


 現在のこの島で騎士級戦力を抱える勢力は他に二つだけ。帝国軍の暗黒騎士たちと、総督府に身を寄せている、カイラリィ本国の崩壊から落ち延びてきた騎士たちだけだ。

 この情勢下では、エミリアの存在は相当に大きい。

 通常兵力は心許ないが、そこは立ち回りでうまくやるしかない。どこかの勢力に入って、組織内で発言力を伸ばし、最終的に下剋上をするなど、方法は色々ある。


「どうかなどうかな? 私はな、君を買っているんだ。共に良い未来を築いていきたいと、そう思ってる」


「プロポーズみたいなセリフはやめろ」


「本当にプロポーズってことにしてもいいよ?」


「もっとご飯を食べて、身長を伸ばしてから言いなよお嬢ちゃん」


「あー惜しーなー。私も大きくなれたらなー」


 両手で、自らのその小さな身体を抱きしめるようにして、彼女はクネクネとその身を揺らしている。

 ルセリィの調子に、キミヒコは嘆息する。


「とにかく、さっきあの小娘に言ったとおりだ。返事は保留。後日、必ず返事をしよう」


 そう言って、キミヒコは話を切り上げて席を立った。そのまま退室するキミヒコに、ホワイトが無言のまま付き従う。

 退室するその背に、「じゃあ待ってるからねー」という声がかかるが、そのまま返事もせずにキミヒコは部屋を後にした。

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― 新着の感想 ―
流れ変わったな 真世界からやってきた人間に見られる深層って事はホワイトから見たキミヒコもその神秘性を秘めてるんだろうか
 キミヒコさんのチート(洞察力・推理力)がかなり覚醒しているのが面白い。  物品が流れて来る事があるのなら、人間そのものが流れて来る事があってもおかしくはないですね。  果たして、この世界に謎に迫…
マジかー チャウシェスクの子供たちかあ……
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