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クズ野郎異世界紀行  作者: 伊野 乙通
ep.5 天使たちのノスタルジア
118/185

#0 プロローグ

 アマルテアに存在する小国家の一つ。


 その国は地政学上、周辺に仮想敵となるような国家もなく、平和そのものだった。

 肥沃な土地があるわけでもなく、鉱山資源が多いわけでもない。豊かな国とはいえないが、ここに住む人々は牧歌的な暮らしを謳歌していた。


 そんな国の、とある都市。


 その都市の大通りを歩くヒョロリとした長身の男と、その後ろをついて歩く毛むくじゃらの魔獣がいた。


 毛むくじゃらの魔獣は体高約二メートル。青い八本の足、オレンジ色の腹部、そして青緑色の頭胸部には八つの目と二本の長い牙がある。

 鮮やかな色彩の、巨大な蜘蛛のような姿の魔獣だ。魔獣が歩くたびに、バチリバチリと、何かが弾けるような音がする。


 前を歩く男の名前はシモン。魔獣使いのハンターで、その後ろをついて歩くのは彼の使役魔獣だった。


 この都市では使役魔獣に関する規定が緩かったため、こうして彼は相棒を連れて堂々と歩いている。

 だが、この都市でそれができなくなるのも、そう遠いことではないだろう。


 市民たちは皆、彼の魔獣を見て顔を顰めているし、疲れた顔をした役所の職員たちが距離をとってついてきていた。役所にクレームの嵐がきて、仕方なく監視しているらしい。

 このままでは、この都市の法律が変わって、使役魔獣の規定が厳しくなるのは想像に難くない。


 それは当然、シモンにもわかってはいたが、まるで気にしていない。この都市に長居をするつもりがないからだ。


「コロ。お前はここで待ってろ」


 お目当ての場所を視界に収めると、シモンは足を止めてそう言った。

 コロと呼ばれた魔獣は、それを受けて足を止める。表情からはまるでうかがえないが、主人の言葉をきちんと理解しているらしい。


「心配いらねえよ。友人に会ってくるだけなんだからさ」


 相棒に笑ってそう語りかけてから、シモンは再び歩き出した。


 向かう先は、郊外にある一軒家。前情報のとおりなら、そこにお目当ての人物がいる。

 この都市に来るまでは、その前情報にシモンはそれほど信を置いていなかった。


 だが今は、情報は正しかったと確信している。


 歩きながらその目の端に映る、あのおぞましい魔力の糸。久方ぶりに見えたそれが、シモンにそう思わせた。


 極力それを視界に入れないようにしながら歩き続け、目的地に到達する。


 武器は携行していないし、相棒の魔獣は離れた場所に待機させた。当然、相手はこちらの存在を察知しているはずだが、敵意がないのはわかるはずだ。


 そんなことを考えつつ、この一軒家の玄関口に立ち、呼び鈴を鳴らす。

 しばらく待つと、返事はないものの、その扉が静かに開けられた。


 ドアの先、薄暗い玄関を見て鳥肌が立つ。


 悪魔だなんだと恐れられている、あの白い自動人形が立っていた。開けられたドアから差し込む日光を反射して、二つの金色の瞳が輝いている。


 静かに佇むその絵面だけは美しいのだが、とてもそんなふうに見ることはできない。

 この人形の恐ろしさと暴力性を、シモンはよく知っていた。


「ひ、久しぶり……。キミヒコに、取り次いでくれる……?」


 声を震わせながらも、どうにか言葉を絞り出す。

 だが、人形はそれに答えない。ただ無言で、佇んでいる。


「いや、あの……もしかしたら忘れちゃったかもしれないけど、俺、君の主人の友達だから、ね……?」


 冷や汗を流しながらそんなことを言うが、人形は反応しない。

 ただ、じいっと、こちらを見据えるだけだ。


「あ、駄目? 駄目っすか? 失礼しました。帰りまーす」


 人形のプレッシャーに音を上げ、シモンは踵を返した。そのまま逃げるように立ち去ろうとする。


「おいおい……。そこはもうちょっと、根性見せろよ」


 そのままドアも閉めずに退散しようとするシモンの背中に、声がかかった。


 その声にハッとして、振り返ってみれば、見知った顔がその目に映る。


「お、おお……! 久しぶりだな、キミヒコ」


 かつて、ある都市でハンターとして活動していた際に知り合った男。人形遣いと呼ばれるハンター、キミヒコがそこにいた。

 彼を探して、シモンはここに足を運んでいたのだ。


「ああ。久しぶりだな、シモン。まあ、とりあえず上がれよ」


 キミヒコはそう言って、人形の手を引いて奥へと歩いていく。

 人形のプレッシャーから解放されホッと息をついてから、シモンもその後に続いた。


「なあ、その左目、どうした?」


 キミヒコの後ろをついて歩きながら、問いかける。


 久方ぶりに見た友人の顔で、以前と明確に異なる点があった。

 左目の瞳の色が、以前と違っている。


「ああこれ? ファッションだよ。オッドアイって、ちょっとかっこいいよな」


 明らかな嘘である。


 キミヒコの左目は普通ではない。彼の左目に流れ込むような魔力のゆらめきが、シモンにそう感じさせた。

 魔術や魔道具で瞳の色を変えることは不可能ではないが、どうもそれだけでなさそうだ。


「ふぅん。まあ、わからなくもないかな」


 さも当然のように嘘を言うキミヒコに、シモンは苦笑しつつもそう返すだけだ。

 言いたくないのなら、深くは詮索しない。この男との付き合い方をシモンは心得ていた。


 そのままキミヒコに連れられ、シモンは部屋に案内された。


 金は持ってるって話だが、その割に簡素な部屋だな……。


 部屋を見て、シモンは心中でそうこぼす。


 キミヒコという男は金遣いが荒い方だ。夜の街での豪遊ぶりは有名だったし、それが可能なくらいの資産もある。

 だが、そうした一面に対して、この部屋は質素すぎる。掃除は行き届いているが、必要最低限の物しか置かれていない。


 勧められて腰掛けた椅子も、眼前にあるダイニングテーブルも、質は悪くはなさそうだが、それだけだ。持ちうる資産に対して質素すぎる家具である。


「ホワイト、コーヒーを頼む。二人分な」


 シモンの対面に腰掛けたキミヒコが、人形にそう言った。


「あ、俺の分は砂糖とミルクをいつも通りな。……お前はどうする?」


「……じゃ、ブラックで頼む」


 主人と客人のオーダーを受けて、あの白い人形は無言のままキッチンの方へと引っ込んでいく。

 あの気色悪い糸はそこらじゅうで蠢いているものの、その大元である人形が視界から消えてシモンはほっと息をついた。


「で、どういう風の吹き回しでここに来たんだ?」


「ギルドだよ。人形遣いに仕事の依頼をしたいけど、どこにいるか分からんから探してくれってな。……苦労したよ。雲隠れしたお前さんを探すのは」


 単刀直入に用件を尋ねるキミヒコに、シモンはそうぼやいた。


 実際、キミヒコを探すのは苦労した。


 聞くところによれば、キミヒコは大口の傭兵仕事で大金を手にしたらしい。結果、金に困らなくなった彼は、ギルド経由の仕事をしなくなってしまった。おまけに、何を恐れているのか足取りを消しながら用心深く移動しているらしく、ギルドではまったく動向がつかめない。

 おかげで、こうして知り合いであるシモンにお鉢が回ってきたということだ。


「そりゃ、苦労してくれなきゃ困る。……どうやってここを見つけた? ギルドの依頼なんてもう受けてないから、そこからは辿れないはずだが」


「ギルドからの依頼で探してたってのもあるが、言語教会からもお前さんに話があるらしくてな。教会からいろいろ聞いて、そこからあれこれ苦労してって感じかな」


 シモンがこうしてキミヒコを見つけることができたのは、教会の協力を取り付けることができたらからだった。


 キミヒコが教会とよろしくやっていることは、シモンも知っていた。それで、駄目で元々で教会を頼ると、意外なことにすんなりと協力を得ることができた。

 教会は教会でキミヒコに頼みたいことがあったのだが、当人が雲隠れして困っていたようだ。ついでに教会の依頼も伝えることを条件に、いろいろと話を聞くことができた。


 そんな話をシモンがすると、言語教会という単語にキミヒコは露骨に嫌な顔をする。


「えぇ……教会もかよ……」


「お前、教会には結構世話になってるんじゃないの?」


「そうだけどさ……。前に教会が仲介した仕事で、俺、死にかけたんだよな」


 そう言って、キミヒコは教会の話を嫌がった。


「そりゃあ大変だったな。だが……」


「わかってる。ここのところ、教会からの頼み事は連続で断ってるからな。そろそろ、一回くらいやっとかないと、心証が悪い。内容次第だけどさ」


 観念したようにキミヒコが言う。

 なんだかんだで、その辺のバランス感覚は備わっているようだ。


 あの人形の暴力とそれによって得た財力を持ち合わせているキミヒコだったが、相変わらず公権力には弱い。権力欲のようなものはなさそうなのだが、国家や教会のような巨大権力に逆らいはしない。逃げはするのだが。


 そんなことをシモンが考えていると、キミヒコから胡乱げな視線を向けられていることに気が付く。


「お前、本職はハンターじゃなくて探偵か? 前もスパイみたいな仕事やってたよな」


「あー、まあ、昔とった杵柄でな……」


 キミヒコの疑問も、もっともなことだった。今回だけでなく、シモンはこういった探偵じみた仕事を請け負うことが多い。


 シモンが言いづらそうにしていると、キミヒコは「そうか」とだけ言って追及をやめた。


「まあ、教会は置いておくとして、だ。俺に仕事の依頼をしたいギルドってのは、どこだ?」


 その言葉に、シモンは無言で書類を渡してやることで答える。

 キミヒコもまたそれを無言で受け取り、表書きに目を通した。


「複数のギルドの連名、か……。相当やばそうだな。現地のギルド単独じゃ、どうにもならないわけか。受けたくねぇ……」


「ま、受ける受けないは、そっちで決めてくれ。俺は依頼書を持ってきただけだからさ。……ほら、ついでにこっちが、教会からのやつ」


 そう言って、シモンは教会からの手紙も手渡す。キミヒコはため息をひとつ吐いてから、渋々といった具合にそれを受け取った。

 それから、キミヒコは受け取った二通の手紙に目を通し始めた。


 手持ち無沙汰になったシモンは、座ったまま足を組んで、椅子の背に寄りかかるようにして天井を見上げた。

 ぼんやりとしているシモンの耳に、ゴリゴリという音が聞こえてくる。キッチンからだ。あの人形が、コーヒーミルで豆を挽いているらしい。


 しばらくして、今度はケトルの沸騰する甲高い音が響いた。


 そろそろコーヒーの用意ができるのかな。そんなことをシモンが考えていると、キミヒコが手紙を読み終えたようだ。バサリとテーブルの上に手紙が放り投げられた。


「読み終わんの早いな。……で、どうすんの? 結局」


「シモン。お前、この手紙の内容は知ってるか?」


 ギルドと教会、二つの組織からの依頼をどうするか尋ねれば、逆にそんなことを聞かれる。


「いや、知らんよ。届けるように言われただけだし、勝手に見たらやばいだろ。特に教会の方はさ」


 シモンの答えに、キミヒコは「そうか」とだけ言って、黙り込んだ。腕を組み、目を閉じて、思案に暮れている。

 どうすべきか、考えあぐねているようだ。


 そうこうしているうちに、人形がキッチンからやってきた。その手のトレーにはマグカップが二つ。湯気の立ち昇るそれを、人形は静かにテーブルに並べた。


「……ありがとう。いただくよ」


 そう言って、極力、人形の魔力を意識しないようにしながらカップを手にとる。出されたコーヒーを口に含むと、程よい苦味と酸味が口の中に広がった。


 あ、このコーヒー、美味しい……。いい豆使ってんな。それとも、この人形の腕がいいのかな。


 シモンはそれほど、コーヒーについて造詣が深いわけではない。だがそれでも、これが良いものだというのはひと口でわかった。

 あのおぞましい人形が入れたことを忘れて、シモンはコーヒーの味を堪能した。


「あー……糖分が脳に染みる……」


 コーヒーの香りをシモンが楽しんでいると、キミヒコのそんなぼやきが聞こえる。

 悩むのはいったん中断したらしい。カップに口をつけて、砂糖とミルクがたっぷり入っているらしいコーヒーを飲んでいる。


「お、いったん保留か?」


「ああ。急いで返事をする必要もないしな」


 そういうことならと、シモンは雑談に入ることにした。

 久方ぶりの再会で、キミヒコに聞きたいことはそれなりにあるのだ。


「つかさ、俺、お前を見つけんのすげー苦労したんだけど。なんでこんなコソコソしてんの?」


「前の仕事で、こいつを暴れさせすぎたんだよ。良くも悪くも、名前が売れすぎた」


 言いながら、キミヒコは隣に佇む人形の額を指で小突いた。人形の首から上がカクンと揺れて、白い髪がたなびく。


「あー、聞いたことある。あの最強騎士、剣聖オルレアを殺したとかなんとか。……マジなん?」


「オルレアを殺したのはマジ」


「……一国の騎士を皆殺しにしたってのも?」


「それは話に尾ひれがつきすぎ。殺ったのは四人だよ。六人中のな。ついでに言うと、軍事作戦の一環でやったことだから、ホワイト単独で殺ったわけでもない」


 キミヒコの言葉に、シモンは人形を凝視する。


 以前、この人形がドラゴン狩りをするのシモンは目にしたことがある。それゆえ、この人形がとんでもない化け物だということはわかっていたものの、今回の話はそれ以上である。


 騎士は国家における武力のバロメーターにもなっている存在だ。それを四人、この人形は殺したらしい。しかもその中には、アマルテア最強と称されていた騎士も含まれている。


「いや、十分ヤバいんですけど。単騎で国を落とせそうだな……」


「大袈裟すぎ。騎士は殺せても、ホワイトだけで国家の相手ができるわけないだろ。お前みたいなのが過大評価するから、コソコソしてんだよな」


「大袈裟か……?」


「そうだよ。こいつにできるのは、しょせんは殺しと破壊だけ。それも局地的なものだ。拠点の制圧や維持なんかはできないし、インフラ整備もできない。もし仮に、まともな軍隊が俺たちを殺しにかかってくれば、俺は逃亡生活を余儀なくされるだろうよ」


 キミヒコはそう言い切った。


 確かに、その発言に理解はできる。いかに騎士が強大な戦力になろうとも、それだけで戦争はできないから、各国しっかりと軍隊を整えているのだ。個の力で戦争はできない。


 とはいえ、彼の言い分は、あの人形をいささか過小評価しているようにもシモンには思えた。この男はあの人形についての真実を、易々と話すような人間ではない。シモン相手だから、そう言ってみせているだけかもしれない。


「そういうもんかねぇ……」


「そういうもんだ。……仕官の誘いとかうざいほどくるけど、こいつを当てにしすぎて無茶な戦争に駆り出されても困るんだよな」


「宮仕えはしたくないか。……傭兵仕事で一発当てたし、早々の楽隠居をご希望なのね」


 シモンはそう口にしたが、それは難しいだろうなとも思う。

 周囲はこの人形を放ってはおかないだろう。その力を取り込みたいというのもあるだろうが、放置するのが危険だというのもある。


「楽隠居か。まあそれが理想なんだけどさ。こうしてコソコソ暮らしてても結局、ハンターギルドだの、どこぞの役人だの、銀行員だのに追い回されてる。世の中うまくいかないよな……」


 キミヒコがそんな愚痴を吐いた。

 シモンの想像どおり、理想の生活とはいかないようだ。


「役人だのギルドだのはわかるが……銀行? 借金でも踏み倒したのか?」


「ちげーよ。連中には俺が金持ってんのバレてるからな。融資させてほしいとか、投資の話とか、そういう営業がうるさいんだよ」


「投資はともかく……融資って、なんで? 金持ち相手に融資なんて意味があるか?」


「金持ちだからだ。連中にも融資のノルマがあるからな。超低金利でもなんでも、貸し倒れの不安のない相手に金を貸したいんだよ」


「……なんだそりゃ。俺が借入をお願いに行っても門前払いなのに、金持ち相手にはそんななのかよ」


「ま、焦げつきそうになったら、容赦なく金を引き上げるだろうがな。銀行は、晴れの日に傘を貸して雨の日に傘を取り上げるなんて、よく言ったもんだ」


 益もない雑談に興じるシモンだったが、どうにも気になることがあった。今話題にしている金融業界のことではない。あの白い人形のことだ。


 シモンと雑談をしているキミヒコに、あの人形がベッタリとまとわりついている。

 細い手足を主人の体に絡ませて、気持ちの悪いあの糸を巻きつけて、ベタベタと甘えるように張り付いている。


 時折、さすがのキミヒコも鬱陶しくなるのか、小突いたりデコピンを喰らわせて人形を引き離す。そうするとしばらくは離れておとなしくしているのだが、少しすればまた元どおりだ。


 これが犬や猫なら可愛いものなのだが、やっているのはあの悪魔みたいな人形である。シモンからすると、あまりにおぞましい光景だった。


「キミヒコ……お前、俺が前にした忠告、覚えてる?」


 気味の悪い状況に、そんな言葉が口から漏れる。

 人形に取り憑かれないよう、注意しろ。シモンは以前、キミヒコにそんな忠告をしたことがあった。


「……もう忘れた」


 たっぷりと間を置かれてから、ようやくキミヒコがした返事がこれだった。


 どうやら、しっかりと覚えているらしい。忠告は無意味だったようではあるが。


「そ、そんなことより、シモン。お前はこの仕事、受けんのか?」


 気まずさを紛らわせるかのように、キミヒコが言う。


「いや、俺はお前に手紙を渡すよう言われただけだ。内容は知らないけど……まあ、報酬次第かな」


 正直にシモンが答えた。


 実際、シモンはここに持ってきた仕事の内容は全く知らない。依頼でそうしただけとはいえ、自分で持ち込んだ件なので、協力するのはやぶさかではない。無論、内容次第の話だが。


「ギルドと教会、それぞれから仕事の依頼があった。ギルドの報酬、通行証は俺がいただくが、金はくれてやる。教会の方の報酬は折半。それでお前も協力してくれ」


 キミヒコはそう言いながら、ギルドと教会、それぞれからの手紙をシモンに投げてよこす。


「……二件同時に受けるってことか?」


 手紙に目を通す前に、シモンが口頭で確認を入れる。


「依頼場所が同じだ。同じ場所の案件を選んで、教会は話を振ってきたんだろうよ。……まあ、ギルドの方は即断しない。受けるかどうかは現地で決める」


「どこ?」


「こっから北の、リシテア市だ」


 リシテア市。聞いたことはある。

 アマルテア北方に位置する都市国家で、つい十年ほど前にとある列強から独立した。


 どうやらそこで、ギルドと教会が何かしらの問題を抱えているらしい。


 これ以上の判断は仕事内容を確認してからだ。シモンは黙って手紙に目を通し始めた。

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[良い点] いつの間にか更新ウレシ…ウレシ…
[良い点] 楽しみにしていました
[一言] 更新再開に今頃気付きました。 ともあれ本当に嬉しいです。今回はシモンが巻き込まれそうですが、シモンなら何とか無事に生き延びられる、といいなぁ。 キミヒコに残された数少ない知己、しかも色々弁え…
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