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ヤマトシリーズ

 

 八王子中央第2ダンジョン前へ行く前に、『真・闘界連盟』というクランへ寄り、天峰さんを呼び出す。

 先日、新しい剣を出したら教えると約束しまったし、売りに出す前に感想を聞きたいのも正直なところだ。


 立派というほどでもないが、文明崩壊前の日本にあっても不思議じゃないくらい立派な建物だ。

 高名なクランなので、いろんな方面の力を借りているのだろう。


「丁度よかった。これから20層のボスに挑戦するところだ。早速、訓練場で見せてくれ」


 建物の裏に広い空き地があり、幾つかの試し切り用の畳や丸太などが置かれている。

 さすが大手クランと言ったところか、ダンジョンの外でもしっかり訓練を積んでいるようだ。


 俺は片手剣にヤマトソード、両手剣にヤマトグレートソード、ナイフにヤマトナイフと名付けている。

 こっ恥ずかしいが、名前を考えるのが面倒になってしまったし、フジヤマト商店の商品なのだからまあ許されるだろう。


「なんだ、片手剣以外にもあるのか。専門外だが振ってみても良いか?」


 天峰さんは全ての武器を順番に手にとって試し切りをする。

 すると興味深そうに、それぞれの武器を交互に持ち替えたりなど、色々試しているようだ。


「すごいな、重心の位置も考えてあるし、今までの武器より圧倒的に握りやすい。私にはヤマトソードが合いそうなんだが、もう少し重心を剣先に寄せることはできるか?」

「ああ、できると思うよ。ただ、それだと初心者が扱いづらくなるかもしれないな」

「悪いがお願いしたい。いくらで作れる?」


 いくらと言われてもなあ……。

 原価は10MSもあれば充分だが、天峰さん一人のために木型を作ってってなると、50MSは欲しい気もするが……。


「心配ない。完成すれば量産できるのだろう? なら私の名前を使って広めれば飛ぶように売れるさ」


 俺の考えなどお見通しのようだ。


「なら30MSで良いよ。その代わり天峰ソードって名付けるからな」

「その、剣に名前を入れるのはどうにかならんのか……別に構わないが」


 商品名はわかりやすくしたほうが良いに決まってる。

 これで交渉成立だな。


 また明日ここに寄って、試作品を渡す約束をする。

 ヤマトシリーズ自体は非常に良い評価を貰ったので、これから八王子中央第2ダンジョン前で店を出市に行こう。



『扱いやすい! ヤマトソード 20MS』

『破壊力抜群! ヤマトグレートソード 36MS』

『とにかく軽い! ヤマトナイフ 14MS』


 予め用意していた看板を出す。

 それぞれミスリル鉱石を使う比率は少なくなっているため、相当数を担保できている。


 店を構えるとすぐに通行人の多くが足を止めて興味を示す。

 何度かここで商売をしているので、人づてに多少は有名になってきているようだ。


「ああ、これが天峰さんの言ってたやつか」

「へー、これなら俺の剣より良いかもな」

「保険にナイフ一本持っとくか……」



 天峰さんが俺のミスリス武器を使ってくれていたこともあり、中級者が買ってくれるようになる。

 あとは中〜上級者がサブの武器としてナイフを持っておくケースが多いようだ。

 逆に両手武器であるグレートソードは利用者が少なく、あまり手に取られないな。


 それと、品質が上がって価格を上げた分、初心者から手が出しづらくなってしまったようだ。

 初心者を呼びこむ事は探索者人工を増やす、将来の良いお客さんになってもらう、たくさん素材を稼いできてもらう上で大事だから、しっかり投資していかないとな。


 同時に通行人を見ていると、剣だけでなく槍を持つ人や棍を持つ人、中には杖を持つ人なんてのも出始めている。

 ダンジョンの探索が進むに連れアイテムの多様化、敷いては戦闘スタイルの多様化が起きてきているのかもしれない。



「このミスリルソードって買い取ってくれますか?」

「あ、ああ。いいですよ。売値の半分になるけど」

「構いませんよ。お願いします」


 そうか、新しく品質の高い装備が出たら、古いやつはいらなくなるよな。

 俺が新しく商品を作るたびに、過去の商品がまた手元に戻ってくるのか。


 ミスリルだから消耗しにくいし、新品同様に扱っても良いと思うのだが、なんだか気が引けるな。

 探索者市場が活発になれば冒険者同士での取引も増えてくるだろうし、それを良しとするか、俺の手元に戻ってくるような仕掛けをするか……。


 有名になってきた分、そろそろいろんな課題が浮き彫りになってきた。

 武器のバリエーション、古い武器の取り扱い、この辺りをどうするかは近いうちに決めておこう。



 朝一から昼前に掛けて、少しのヤマトグレートソードを残し、完売する。

 このグレートソードは後で解体して、人気武器の素材にしよう。


 ちなみに売上は818MSで、鉱石系素材はほとんど消費しきってしまったとは言え、大きな黒字である。

 これはそろそろ、ダンジョン探索の時間を犠牲にしないと、投資と回収が追いつかないな。


 課題が山積みだ……一個一個解決していくしか無い。

 正直、サラリーマン時代より圧倒的に大変だが、いわば個人事業主なのだから当たり前なのだろうな。



 今日はダンジョン探索を保留にして、昼の間にDSS機構派出所へ行く。


「すみません、相談なんですけど……」

「はい、なんでしょう」


 俺は今自分がダンジョン産の素材で商売している旨を伝え、なんとか正式に事業化できないか聞いてみる。

 大きな問題は、これができないと人を雇えないという点だ。


 民間人は生活基盤を作るための係活動かダンジョン探索が義務付けられている為、他のことができない。

 俺自信もダンジョン探索のノルマを達成しなければならないが、それは元からそのつもりなので、メインはやはり協力者を雇えないというのが厄介だ。


 そこで、俺の商売を正式に事業化できれば、その制約を解決できると思ったのだ。

 本来なら現在民間人を取り仕切っている自衛隊に話すべきことなのだろうが、まずはDSS機構を味方につけようと考えている。


 DSS機構はエネルギー資源を掌握している最重要組織であり、影響力が最も強いと言っても過言ではない。

 そして俺がしようとしている事業は間違いなくDSS機構にとってプラスになることであり、俺の味方になってくれるからな。



 職員に相談すると16時に上司がいるので、その時にまた来てくれと言われる。

 誰にどこまで裁量が有るかわからないが、相談に乗ってくれる気はあるみたいだ。


 時間になるまでサクッとプレハブで売れ残り商品の解体と天峰ソードの制作に取り掛かる。

 集中しているとあっという間に時間が過ぎ、約束の時間に派出所へ戻る。



「やあやあ、君が噂のヤマトくんか。DSS機構、西東京地区長の浜路はまじです」


 派出所の奥にある接待部屋、と言ってもくたびれたソファと机があるだけだが、に通されると、思ったより若く、人懐っこさそうな上司が迎えてくれる。

 西東京を管轄しているということは、地区長ラインだと東京23区とか大阪辺りの次に偉いんじゃないか?


「知っての通り、通貨がほとんどMSに変わってしまってね。これはほとんどの国で共通の価値として扱われそうなんだが、これが資本主義の根本を揺るがす事態でね、法の整備が追いつかないのが正直なところなんだ」


 外国でも同じ様に文明が崩壊しダンジョンが現れている、という話を小耳に挟んだ事があるが、こうやってお偉いさんに話を聞くと現実味が増してくる。

 心のどこかで、じつかどこかから助けが来る事を期待していたのかもしれない。


「ただ、私は君の取り組みを推している。今後は必ず『ダンジョン産業』が生命線になると信じている。だから、その為の要望にはできるだけ答えたい」


 俺が要領を得ない、といった顔をしていると、浜路さんが構え直す。


「私達にできる最大の補助、それはDSS、ダンジョン探索制度の中に、関連事業の認可を成立させることだ」


 なるほど、考えたなと思う。

 国として法律を整備し、本来の資本主義のようにあらゆる人が自由に商売できる土台を作るのには、たしかに時間がかかる。

 しかし、既に成立している制度であるDSSの一つとして事業自体を扱ってしまえば、その限りではない。

 実際にクランが成立しているのだ、問題ないだろう。


「ありがとうございます。充分です」

「まあ、誰かを雇いたいのであればその子の分も魔石を納品してしまう、という抜け道もあったけどね。ちゃんと相談してくれる辺り、嬉しいよ」


 思いつかなかった訳じゃないが、後ろめたいことがあると自由に動けないし、後で問題になるほうがリスクだからな。

 DSS機構は必ず協力してくれると思っていたし、商売は信頼第一だ。


「急な話だから今日、というわけには行かないけど、一週間以内に連絡させるよ。それまでは悪いけど、商売を程々にしておいて欲しい。これ以上広がると少し厄介な事になりそうだからね」



 派出所を出て、八王子第2ダンジョン前へ今日の買取りに行く。

 ほどほどに、と言われたばかりだが、地区を広げなければ大丈夫だそうだ。


 本当なら売上も増えたことだし、地域と買取り量を増やしていきたいところだが、しばらくは今の地区と商品ラインナップで様子を見ながら、ダンジョン探索と商品開発に重点を置いていこう。


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