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挑戦

 

 あれからおそらく三時間くらいだろうか。

 二階層をひたすら周り、体感で外が暗くなる前に切り上げた。

 途中、三体のスケルトンに出くわした時は少し焦ったが、なんとか逃げながら各個撃破出来たので良かった。

 こういう事があるから、三階層に降りるのはまだ待ったほうが良さそうだ。


 結局、手に入れたアイテムはこんなものだ。


 ・魔石×多数

 ・薬草×4

 ・謎の盾×1

 ・謎の腕輪×1

 ・謎の衣服×1

 ・謎の鉱物×1

 ・謎の植物×2


 俺に知識が殆どないので、手に入れてもどんな道具なのかわからない。

 これらは今からDSS機構の派出所へ行き、しっかりと鑑定してもらおう。



 まずは麻リュックの小さいポケットに入れておいた魔石を換金する。

 職員に目の前でグラムを測ってもらうと110グラムだったので、11MSと交換された。

 10MS札が二枚と1MS札が一枚だ。

 係活動と同じか……低階層でそれなら、悪くないのだろうか。


「ダンジョン拾得物の鑑定をお願いしたいんですけど、ここで良いですか?」


 聞いてみると、職員が奥から大きな壺、もしくは瓶を取り出す。

「こちらに収まるサイズでしたら、一つ1MSでお受けしますよ。それより大きくなると、一つ5MSいただきます」


 有料なのか、知らなかった。

 全部で5つ鑑定したいから、5MSとなると出費がかさむが仕方ないな。



 壺の中に鑑定したいものを入れると、壺の外側に詳細が記載されるらしい。

 これもダンジョンのドロップ品で、物知りの壺と呼んでいるのだとか。

 まずは一番気になっていた腕輪を入れてみる。


『頑丈の腕輪。装備すると頑丈になる。腕輪は一人につき二つまでしか装備できない』


 ふわっとした説明のせいで、どれくらい効果が有るのかわからず(どうなんだ?)と思ったが、顔に出ていたようで職員の人から「良かったですね、当たりですよ!」と言ってもらえた。


 続いて他のものも鑑定してみると、『薄い盾』『皮の服』『ミスリル鉱石(小)』『麻』と結果が出た。

 特殊能力を持ったものは無かったが、ミスリル鉱石は非常に気になった。

 どうやら『魔法の力を備えた鉱石』ということらしいが、具体的な使い方はわからない。


 薄い盾、皮の服、頑丈の腕輪は使うとして、その他の使い道がわからない。

 職員に買い取ってもらえるか聞くと、今は卸先も無く、DSS機構は営利組織では無いため、対応できないと。

 鑑定の壺も、無尽蔵に持ってきてもらっても困るから金額設定をしているだけらしい。


 一応、探索者同士などで交換したり売り買いすることはできるかと聞いたら、今は法が整備されていないが、されるまでは個人の取引を容認する意向だとはっきり言ってくれた。



 避難所の中の家族が居るプレハブに戻ると、母さんがものすごく心配していた。

 中はどうだったとか、魔物はどうだったとか、怪我は無いかとか、根掘り葉掘りである。


 父さんは、「怪我がなければ良い」とだけ言っていた。

 葵も心配はしているみたいだが、興味が勝っているようで、アイテムをしつこく見せて見せてとねだって来た。


 住民の中でプレハブとはいえプライバシーが確保された寝床を使えている人は少ない。

 うちは父さんが住居整備係という事で、父さんの練習台としてこのプレハブを建てたのだ。


 母さんは調理係なので、余って廃棄になる食料を、食べれる程度に調理して持って帰ってきてくれる。

 今日の俺の稼ぎは6MSだが、それなりに行きていけるのは家族のおかげだ。


 葵の話によると、そろそろ市場で色々なものが流通するらしい、との事だった。

 農耕係は若者が多い事や、そもそもの人数が多い事もあって、情報の流動性が高い。

 農業による食料の自給も目処が立ち、みんなが人並みの生活を取り戻すのも時間の問題だそうだ。

 その裏には、とんでもない数の人口減少を伴っている事は、誰も口にしなかった。



 次の日も俺は同じダンジョンに潜ることにした。

 昨日と同じく父さんの車を借り、中に拾得アイテムを全部詰め込み、倉庫代わりである。


 昨日は午後からの探索だったが、今日は午前からガッツリ潜ろう。

 食糧問題は、母さんから貰ったおにぎりが車の中に置いてあるので、低階層なら出てくれば良い。


 装備品と薬草一束だけ持って、ダンジョンに潜る。

 聞いていたとおり、全く違う道になっており、昨日培った方向感覚は役に立たなそうだ。


 一階層はさくっと踏破して、二階層へ行く。

 午前だけで全部周り切るのは難しそうなので、きりが良いところまでにしよう。




 —— 八王子西ダンジョン『2F 光岩の洞窟』



 道なりに歩いたところに小部屋のようなところがあり、奥に宝箱が置いてある。

 稀にレアアイテムが入った宝箱が有ると聞いては居たが、まさか二階層で見つけるとは思ってなかったので、運が良い。


 早速空けてみようと近づいてみると、後ろからカタカタと音が鳴る。

 振り返ると、入り口から見つからない場所に、ぱっと見10体を超えるスケルトンが身を潜めていた。


 入り口は既にスケルトンたちで塞がれており、ジリジリと壁際に追いやられる。

 一体づつは大したこと無いのだが、これだけの数になると物量に押し潰されてしまう。

 とにかくこちらから打って出て、少しでも数を減らさないと。


 一体、二体とスケルトンを倒していく。

 しかしすぐに周りから別のスケルトンが俺の頭や手を掴んで押しつぶそうとしてくる。

 思ったより痛くないのは、頑丈の腕輪のおかげだろうか。


 足を使って無理やり引き離しながら、一体一体確実に仕留める。

 焦らなければなんとかなると言い聞かせ、できるだけ冷静に、追い込まれないように立ち回る。


 気付けば体は引っかき傷でボロボロだが、なんとか最後のスケルトンを塵にした。


 そこら中に魔石が転がっており、いくつかアイテムもドロップしているようだ。

 それも気になるが、まずはこの引っかき傷を治すために、持ってきていた薬草を呑む。


(意外と咀嚼が大変だな)

 そんな事を思いながら、口の中から薬草が消えると、全身が一瞬痒くなり、あっという間に傷が綺麗に無くなった。

 深い傷が一つも無かったからか、案外簡単に治るのだなと驚いた。



 とんだハプニングはあったが、お待ちかねの宝箱を開けてみる。

 すると中に入ってたのは、何やら小さな鉄のハンマーだった。


 武器にするには少し小さい気がするので、おそらく何か特殊な能力が有るのだと思う。

 ドロップアイテムで目ぼしいものは、ミスリル鉱石となにかの草、あとはシンプルな剣だ。


 ひとまず戦利品とし、昼にDSS機構派出所へ持っていく事にする。

 魔石を換金すると12MSになったので、あのスケルトンがいかに多かったかを実感する。



『加工の鉄槌。様々な鉱石や鋼を加工できるようになる』

『軽い剣。軽いので攻撃力は低い』

『力の草。食べると力が少し強くなる』


 職員は加工の鉄槌を「珍しいですねー」と言っていたので、たぶん初めてではないが中々出ない、くらいのアイテムだろう。


 力の草は食べておくことにした。

 取っておいてもまだ売り先が無いし、今のうちは自力を上げていくことを優先したかった。


 すぐに使わないものとダンジョンに持ち込めないMSは車に積んでおく。


 ・ミスリル鉱石×2

 ・麻×2

 ・麻の服×1


 装備品、薬草だけは麻の袋でダンジョンに持っていくことにした。


 ・E 軽い剣×1

 ・E 薄い盾×1

 ・E 頑丈の腕輪×1

 ・E 皮の服×1

 ・薬草×5



 車で母さんが作ったおにぎりを食べながら、加工の鉄槌で試しにミスリル鉱石に打ってみる。

 するとあれだけ硬かった鉱石が軽く叩くだけで簡単に割ることが出来た。

 慣れてくれば自由な形に加工できるようになりそうだ。


 昼休憩を切り上げ、再度ダンジョンに潜る。

 DSS機構派出所への往復で意外と時間を食ってしまった為、今日あと探索できるのは三時間くらいだろう。


 二階層の残りを周り切ると、装備品も整ったので三階層へ降りることにする。もちろん、用心深くである。


 講習では三階層からが本当の探索だ、と聞いている。

 ここからは一気に死亡リスクが高まり、同時に不思議な力を持つアイテムが手に入りやすいと言うのだ。




 —— 八王子西ダンジョン『3F 光岩の洞窟』



 相変わらず鍾乳洞のような見た目は変わらないが、気持ちのせいか重い空気が漂う。

 途中、スケルトンとスライムに何度か遭遇しながら進んでいくと、「キーッ」という鳴き声がどこからともなく聞こえた。


 ダンジョンの中で生物の泣き声を聞くのは、考えてみれば初めてである。

 意を決し、剣と盾を構えながら進んでいくと、天井にぶら下がる大きな蝙蝠と目が合う。

 バサっと一回羽ばたき、急降下する勢いでこちらへ突っ込んで来た。


 間違いない、あれは魔性蝙蝠だ。

 講習で聞いてはいたが、目の前にすると迫力がある。


 咄嗟に地面へ転がり突撃を回避しながら、構え直して相手に体を向ける。

 次はすれ違いざまに剣で斬りつければ、相手の勢いを借りて攻撃できるだろう。


 二度目の突撃を真横に回避しながら、軌道上に剣を置く。

 軽い剣なので弾かれそうになるも、蝙蝠の羽を上手く傷付けられたようで、そのまま地面へと墜落したところにとどめを刺す。


 上手く行ったが、複数出てくると対応できる自信が無いな。

 慎重に周りながら、複数いそうならすぐに逃げ出す覚悟を決める。

 今回は宝箱を見つけてもスルーしよう。そう簡単に見つからないが。



 三階層の広さがよくわからないが、半分以上は周れただろうところで一度引き返す。

 夜、暗くなってしまっては、今までの日本と違い光源が無いので、身動きが取れなくなってしまう。

 今は春なのでこれから日が長くなっていくはずだが、時計もないので時間感覚がわからない。


 一時間近くかけて入り口に戻り、麻の袋ごとトランクに詰めて車を走らせる。

 DSS機構派出所までの道は、最初は苦労したが今は慣れたものである。


 実は鑑定が楽しみなアイテムをいくつかドロップしていたので、内心ワクワクである。

 夕焼けが明るいうちに派出所に着いた俺は、早速魔石の換金と鑑定を済ませることにした。


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