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自信のある新作

 

「ふむ、三つのスタイルにカスタマイズして使い分ける事ができるのか。盾部分の層と手元の緩衝材が優秀だな。ベースの重量はもっとあっても良い」



 気に入ってもらえて良かった。

 かなり色々詰め込んだので、俺の独りよがりになっていないか心配していたのだが。


 結局、受け流し重視のカイトシールド、表面に棘が幾つか着いたカウンターシールド、地面に刺して使えるタワーシールドの三つに変化するカスタマイズ式を採用した。

 二層式にして盾表と手元を分け、盾部分を交換できるようにしたのだ。


 寺地さんなら魔法袋があるので、複数の盾表を持ち歩けると踏んで作ってみたが、量産する時は『カウンターシールドセット』みたいな形で商品展開できるので、これはこれでアリだ。

 ただ、そもそも大きな盾自体が玄人向けの為、バックラータイプの盾も一応ラインナップに入れておこう。



「じゃあ、要望通り手元を少し重くして、明日お持ちしますね。で、予定通り『寺地シールド』として売り出しても良いですか?」

「ああ、約束だからな。これで第1もダンジョン探索が捗ると良いが」


 なるほど、探索の活性化も狙いの一つだったのか。

 八王子中央第2ダンジョンになぜライバル意識を燃やしているのかわからないが、自分の事だけ考えてる訳じゃ無さそうだ。


「せっかく来たんだ、今日はここで武器を売ってくれるんだろう?」

「ええ、そのつもりですよ」

「うちのクランのひよっこ達には見ていくように行っておいたから、後は頼むぞ」


 何を頼まれたかわからないが、初めて八王子中央第1ダンジョンで売店を出す。


『初めてならまずはこれ! ミスリルナイフ改 7MS』

『扱いやすい! ヤマトソード 20MS』

『破壊力抜群! ヤマトグレートソード 36MS』

『とにかく軽い! ヤマトナイフ 14MS』

『天峰監修、玄人向け! 天峰ソード 30MS』


 本当に初めて探索するくらいの人向けに、ミスリルナイフの在庫は数本用意しておいた。

 彼らがダンジョンで育ち、また俺の顧客になってくれる事を期待している。



 言っていた通り、天地さんのクラン、ウェポンズの若いメンバー達が数人か来たのと、第2ダンジョン前での噂を聞きつけた数人、後は通りがかりの人もちょこちょこ寄ってくれた。

 無効ほど天峰さんの知名度がないのか、天峰ソードの売れ行きはあまり良くなかったが、ヤマトソードとヤマトナイフは安定して人気が高い。


 午前中いっぱい使い、完売とまでは行かなかったが、それぞれ程々の在庫を残して引き上げる事にする。

 それでも1000MSを超える売上なので、新しいエリア開拓はやはり儲かりそうだ。

 余っているダンジョン産のパンを食べながら八王子西ダンジョンへ向かい、そのまま探索に入った。




 —— 八王子西ダンジョン『8F 亜人が住む樹林』



 ・E 可変式ヤマトブレード+1【大地】

 ・E ミスリル盾+2【風】

 ・E 皮の鎧+2

 ・E 魔狼の毛皮のコート

 ・E 皮の靴+1

 ・E 頑丈の腕輪+1

 ・E 力の腕輪+1

 ・E 見切りの指輪

 ・E 灰光の指輪

 ・E 念動力の指輪

 ・ヤマトナイフ×1

 ・薬草×18

 ・懐中時計×1



 今世紀最大の自信作、可変式ヤマトブレードを引っさげて、オーガを薙ぎ倒す。

 ヤマトソードでは足りなかったリーチを補う事で、間合いの外から斬撃が可能になり、安定して倒せるようになった。


 可変式ヤマトブレードはその名の通り二つのモードがある。

 今使っている、全長2メートル近くある大剣モードと、折りたたんで幅広にし、全長1メートル強にした片手剣モードだ。


 大剣モードは威力が高く、大きな相手でも両断できる長さがある。

 片手剣モードは重心が手元に来るため、取り回しがしやすい。


 小さくすばしっこい相手や洞窟などの狭い場所では片手剣モードが有利なのだが、こういった広い場所で大きな相手と戦う時は大剣モードが使える。


 寺地さんに作ったカスタマイズ式の盾を考えてる時に思いつき、父さんに教えてもらったステーという部品を使うことで完成した物で、片刃になっており、刃を外側にして折り畳んだり広げたりすることでモードチェンジができる、イメージでいくとガンランスみたいなものだ。


 ただ、本来は手動でモードチェンジしなければいけないので戦闘中に行う事は難しいのだが、俺は寺地さんから買った『念動力の指輪』の能力で、いつでも瞬時にモードチェンジできる。

 この指輪、攻撃や防御に使うには出力が弱く心許ないのだが、この使い方なら存分に活かせるだろう。


 俺はこれを可変式ヤマトブレードとして商品ラインナップに加えるつもりだ。

 天峰さんや寺地さんのブランドも良いが、俺個人のブランドも強化しないとなんか悔しいからな。


 他にも力の腕輪を+1にしたり、魔獣のコートから魔狼の毛皮のコートに変えたりなど、マイナーチェンジを幾つか入れながら、全体的な強化を図る。

 買い取った品をそのまま自分の装備に使えるのは、俺の強みだな。



 とはいえオーガは強敵で、群れは出ないものの中には強い個体も居る。

 安定しては来たのだが、気を抜けば大怪我をしてしまうレベルなので、まだ次の階層に進む時期では無いかな。

 強敵との戦闘経験を積むのとドロップで戦力強化をして、しっかりこの階層を攻略できるようになったら次へ進もう。



『亜人の棍棒。非常に硬い木を切り出してある』


 初見のアイテムは一つだけドロップしたが、対して使い道は無さそうだ。

 それよりも風の魔封石がドロップしたので、+1にできるのがありがたい。


 鑑定を終え、今日は売上も入ったので八王子中央第2ダンジョンの方で買取りをする。

 今日も事前告知済みなので、待っていた人達がかなりいてくれた。


 それにしても多いなと思ったが、周りの会話を聞くに市場いちばが出来た事でMSの使い道が出来たのも、買取りが増えた要因のようだ。


 かなり忙しく買取りが進みそろそろ帰ろうと思った頃に周りを見渡すと、天峰さんがちょうどダンジョンから出てきた。



「お、天峰さーん。剣の調子はどう?」

「ああ、ヤマトか良い出来だよ。手によく馴染むし、切れ味が落ちない。ミスリルを使った武器はやはり優秀だな」


 それは良かった。

 内心、ダンジョンの下層でドロップする武器のほうが良かったらどうしようと思っていたのだが、いらぬ心配だったみたいだ。


「それよりヤマト、十階層はまだなのか? なんならそこまで手伝ってやろうか」

「いやー、今は八階層なんだけど、もうちょっと実力つけてから九階層へ行こうかなと……」

「なに、それなら一緒に九階層を抜けてそのままボスへ挑戦したら良いじゃないか! 明日は空いてるか? 早速行こう!」


 め、めっちゃぐいぐい来るじゃないか。

 こっちとしては九階層不安だったし、願ったり叶ったりだが、こんな有名な人を俺の探索に突き合わせてしまって良いのか不安になるな。


「じゃ、じゃあ頼もうかな」

「決まりだな。この車で行くんだろう? 明日クランへ迎えに来てくれ」


 時間だけ約束して今日の買取りは引き上げる。

 ちなみに大地の封魔石が買い取れたのは地味に大きな収穫だ。


 それと今日から、フジヤマト商店の型落ち武器は割高で買い取る事にした。

 今後、競合店が出来て、そこに流されて中古なのに高く出されるのも嫌だし、素材として有能なため、そこまで損はしないからな。

 なるべく自分の店で商品は循環させたいので、少しくらいの持ち出しは仕方がない。



 倉庫に戻ってそそくさと作業を始める。

 ヤマトシリーズと天峰ソードはかなり慣れてきたので、短時間で作れる。

 寺地シールドに関しては各種類のものをバランス良く作らないと行けないので、少々面倒だが先に作ってしまおう。


 そして今日手に入れた風と大地の魔封石を強化合成し、可変式ヤマトブレードとミスリル盾を強化しておく。

 ついでに可変式ヤマトブレードも盾と同じく、+2にしておこう。


「お兄ぃ、市場見てきたよー」

「おお、どうだった?」


 葵は自慢げに市場で買ってきた品を見せびらかす。

 りんごやみかんなどの果物、胡椒やわさびなどの香辛料、あとは鮮魚など海の幸が多く並んでいたみたいだが、それは料理する場所が無いため買ってこなかったようだ。


 どちらかと言うと食材よりも木材やモルタルの素材など、建設系、生産系の売り場が賑わっていたらしく、民間人への娯楽という意味もあるが、経済自体の活性化を狙った動きのようだ。


 今は週休二日の係活動が主だが、行政側の意向では国民による産業活動に寄せていく動きだろうな。

 ずっと資本主義でやってきたのだから当たり前だが、最もイメージしやすい復興への道筋だろう。



 翌日、早朝から八王子中央第2ダンジョン前へ赴き、新商品を交えて売りに出す。


『初めてならまずはこれ! ミスリルナイフ改 7MS』

『扱いやすい! ヤマトソード 20MS』

『破壊力抜群! ヤマトグレートソード 36MS』

『とにかく軽い! ヤマトナイフ 14MS』

『天峰監修、玄人向け! 天峰ソード 30MS』

『寺地監修、玄人向け! 寺地シールド カイトセット 30MS カウンターセット 30MS タワーセット 30MS ※外殻のみのご購入は10MS OFF』


 可変式ヤマトブレードはまだ量産体制が整っていないため、今日のラインナップから外してある。

 ステーという肝になる部品の調整が小難しく、父さんの手を借りなければいけないのが難しい。

 何度か教わりながら、俺が一人で作れるようになったら売り始めよう。



 相変わらず天峰ソードが飛ぶように売れ、予想通りヤマトグレートソードはあまり出ない。

 しかし両手剣使いのコアなお客さんがたまに居て買ってくれるので、取り扱いは続けたい。


 寺地シールドはまあ想定内の範囲だが、何人かの強そうな人達が試しにと買っていった。

 使い勝手が良ければ他のセットも買うだろうし、まずは様子見といこうか。



 天峰ソードが売り切れたところで時間が来たので、天峰さんを迎えに行く。

 文明崩壊してから二週間、車で女性を迎えに行く日が来るとは思わなかった。


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