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市場の変化

 

 普段どおりに買取りを済ませると、市場の変化に気付く。

 今までと同じく、鉱石系や初級者装備、ちょっとした制作道具みたいなものが大半を占めるのだが、明らかに量が増えてきているのと、初めて見るアイテムが幾つか出てきたのだ。


 未鑑定品もあったので俺が派出所で鑑定したものもあるが、初めてのアイテムはこんな感じだ。


 ・大地の封魔石

 ・頑丈の腕輪

 ・力の腕輪

 ・視力の指輪


 お客さんから聞いた話によると、ここ数日で探索のスピードが更に上がっており、この日遂に20層を突破したとの事だ。

 それにより今までレアだったアイテムの出現率も上がり、あぶれたアイテムを売りに出してきたって所だろう。


 この辺のアイテムはそのまま店頭に並べるという手もあるが、それだと本当にただの商社のようになってしまう。

 ブランディング含めてメーカー店としての位置づけを守り抜きたいのだが、どうするべきか。



 大量の在庫を積んだ車でプレハブに戻ると、父さんが以前依頼した倉庫建設で進捗があったと教えてくれた。

 早速明日、非番のメンバーで建設してくれるというのだ。


 本来、材料は非売品なのだが、木材には困っていないということもあり、150MSで売ってくれることに。

 人件費は大人三名で30MSで良いという事だったが、非番の仕事で普段の報酬と変わらないのは酷なので、60MS出すことにした。


 今日の買取りを含めても、手元に300MS以上残っているので、変な所でケチる事は無いし、このペースで行けば倉庫の増設などすぐにタイミングが来るので、気持ちよく働いてもらいたい。



 倉庫はプレハブに比べてしっかりと木を使い、頑丈で大きめに建ててもらう。

 住居と違い、中の温度や通気性にそこまで拘る必要が無く、どちらかというと防犯性能の方が大事だからである。


 なので簡易的な鍵も付けてもらうのだが、これだけ商売が大きくなってくると盗難のリスクが大きいため、一応泊まれるようにしてもらう。

 明日建設が終わってからは、基本こっちに住むつもりだ。


 とは言っても場所は避難所の一歩外側なので、家族が住むプレハブとは目と鼻の先だし、それなりに人の目も有るので、大きく状況が変わる訳ではない。

 ただ場所が確保できる分、制作の作業はしやすくなるだろう。



 今日は仕方が無いので車に目一杯、素材を入れておくのと、プレハブにも無理をお願いしてかなりの量を置かせてもらう。

 なるべく今日、天峰ソードを完成させて、明日からは試作づくりを加速させたい。


 木型を作るのもかなり慣れてきており、ヤマトソードを元にちょっとだけ剣先まで鋼鉄を入れ、重心を動かした剣を制作してみる。

 まだまだ一発で上手くいくほど上達していないが、少しずつ丁寧に調整していけば、武器は裏切らない。



 早速翌日の朝、真・闘界連盟に寄って天峰さんを呼び出す。

 試作品を三種類渡して試してもらった所、お気に入りがあったらしく、喜んでくれた。


 本当は強化合成の箱を使って+1にすることも提案しようと思ったが、それはもうしばらく待つ。

 まずはこれで使ってみてもらい、周囲の人達にもその威力を感じてもらってから、天峰さんにだけ+値を提案するのが良いだろう。

 +を付けるだけで一気に倍以上の価格にしなければ行けないし、一般の人だと手が出ないだろうからな。



「ヤマトは本当に面白い。いつか武器屋ができるとは思っていたが、こんなに早くできるとはな。秘密を暴くつもりは無いが、今度一緒に探索にでも行こう」

「俺はまだ六階層が限界なんだが……」

「それなら十階層に挑戦する時誘ってくれ。宝箱もドロップもいらないから、単純にヤマトが普段何をしているのか知りたい」


 なにか誤解してしまいそうな台詞だが……まあ無報酬で手伝ってくれるならこんなにありがたい事はない。

 何か土産は用意して、十階層へ行くときは手伝ってもらおう。




 —— 八王子西ダンジョン『6F 亜人が住む樹林』



 天峰さんに会いに行ったその足で、八王子西ダンジョンへ潜る。

 ここの所体力も着いてきたので、六回層程度なら小一時間でサクッと降りれるようになった。


 ・E ヤマトソード+2

 ・E 受け流しのミスリル盾

 ・E 皮の鎧+1

 ・E 魔獣のコート

 ・E 皮の靴+1

 ・E 頑丈の腕輪+1

 ・E 力の腕輪

 ・E 見切りの指輪

 ・E 灰光の指輪

 ・薬草×18

 ・懐中時計×1

 ・爆弾石×1

 ・パン+1×1



 ヤマトソードを+2に、頑丈の腕輪と興味本位でパンも+1にしてみた。

 更に新しく力の腕輪を装備したので、前回よりかなりパワーアップしている筈だ。


 ゴブリンを見つけたら接近戦で一層し、灰光魔法で隠れているゴブリンをあぶり出す、という基本戦術のおかげで、不意打ちはだいぶ防げるようになっていたのだが、最初から隠れているゴブリンを見つける事が難しいのが問題だった。


 しかし、頑丈の腕輪を+1にすることで、ゴブリン程度の攻撃では『痛いけど血は出ない』程度に軽減することができるようになったので、六階層は怖がらずに進むことができる。


 今日はここを一度隅々まで探索してみて、大丈夫なら七階層に進んでみようと思う。




 —— 八王子西ダンジョン『7F 亜人が住む樹林』



 相変わらず景色は変わらないが、おそらく新しい魔物が出てくるだろう。

 一〜五階層の流れを考えれば、その地形にあった魔物の筈だ。


 六階層がゴブリンだったから、その上位種か、はたまたオークなど別種か……。

 注意しながら歩いていると、遠目でもはっきりと分かる大きさの魔物があるいている。


 手には棍棒、頭にはたぶん何かしらの骸骨? を被っており、体は太く、大きな鼻が突き出している。

 あれは、オークだろうな。



 今までの魔物とは比べ物にならないくらい危険な雰囲気がある。

 そもそも自分より大きなサイズの魔物など、五階層のフロアボスくらいだったので、これまでのモブとは訳が違う。


 ただ、幸い相手は一体だ。

 群れで行動していたら否応なく撤退していたが、一体なら試してみる価値はあるだろう。



 なるべく気付かれないように、オークの後ろに回り込みながら近づく。

 鼻が効くのだとしたらあまり意味ないが、遠くで気付かれて逃げられたり、仲間を呼ばれたら厄介だ。


 ゆっくりと、30メートルほどの距離まで近づいていくと、鼻をスンッと鳴らしてこちらを振り向く。

 やはり鼻が効くのか。



 ブイィィっと気味の悪い声を上げて突進してくるオークに、まずは牽制で灰光魔法を打ち出す。

 あの巨体だし、命中の指輪を着けているので外しようが無い。


 頭、肩、腹、足と命中させていくと、ある程度の衝撃を伴っているようで、軽く怯みはするのだが止まる気配は無い。

 足に集中して攻撃していき、突進のスピードを緩めていくと、突然足をもつれさせて前方にドスンと倒れる。


 すぐさま近づいてヤマトソードを刺せばよかったのだが、まさか転ぶと思っていなかったので、反応が遅れる。

 するとオークは起き上がりざまに低い姿勢での突進に切り替え、足を狙いにくくなってしまう。


 急いでサイドステップを踏み回り込むと、スピードが乗っているのと体制が悪いこともあり、すぐには方向転換できないようだ。

 急ブレーキをかけるオークに対し、ヤマトソードを振り下ろすと、首と胴が綺麗に離れて塵になった。



 うーん、これはオークが弱いのか、ヤマトソード+2が強いのかわからないな。

 ただ、一体なら危なげなく狩れる、ということは充分にわかったので、収穫だ。


 魔石の大きさはゴブリンの倍、強さが伺えるが、複数で組まれた方が厄介なのは間違いない。

 慎重に探索を進めれば、この階層も問題ないだろう。



 岩壁を背に、周りに注意しながら昼食を摂る。

 パンを+1にしてたのだが、これはなんと言ったら良いか、デパートのパン屋さんで売ってるできたてのパンみたいだ。


 いや、本来ならダンジョンに食道楽など求めないので、パンが二個あった方が良いのだが、何事もものは試しである。

 パンの在庫に余裕ができたら+1するのも悪くないかもしれない。



 そのまま探索を続け、オーク四体とゴブリンの群れを三回、相手する。

 この階層だとオークは単体でしか出てこないのか、たまたまなのかわからない。


 その間にまたもや『爆弾石』『風の封魔石』を手に入れたのだが、今のままだとあまり使い道が無いので困るな。

 戻ったら+1にするかどうか……と迷っているっと、遠くから煙が上がっているのが見える。


 その辺の高い気に登って煙の元を見てみると、どうやら木や枝で出来た原始的な住居が集まる集落のようなものがある。

 もしかして、と思い注視してみると、そこにはゴブリンの群れがあり、中心には宝箱が置いてあった。

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