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文明崩壊

 

『文 明 崩 壊』

 この四文字が頭をよぎった。


 崩れ行く東京の街並み。まるで人の命を養分にしてるかのようにアスファルトを割って急激な成長を遂げる木々。

 B級映画のワンシーンみたいなできの悪い光景が、背筋が寒くなると同時に、どこか他人事のように冷静になってる俺は自覚した。


 大きな地鳴りと風景の変化は、時間にすると1分だろうか。もしかしたら10分かも、いや30分かもしれない。

 俺と妹、そして両親は、その間一言も発さなかった。


 父さんの「とりあえず車に戻ろう」という言葉が聞こえたのは、地鳴りが収まったしばらく後だった。

 高尾山の麓にある駐車場も漏れなく割れ、木々に覆われていた。

 アウトドアが趣味な父さんのランドクルーザーのおかげで、ボロボロになったアスファルトをなんとか進むことが出来た。


 車の中では誰も「なぜ」とか「どうして」と言わなかった。

 たぶん、誰もその答えを持っていない事が明白だったからだろう。


 近くの住宅街へ着いた俺達は、息を呑んだ。

 無事な建物など一つも見つからず、まばらに助けを呼ぶ声や、泣きわめく声が聞こえるだけだった。

 そしてそれは、都市機能が失われたことを、暗に示しているような気がしたんだ。


 それから俺たちは救出活動や食料確保などに奔走したのだが、その時の事は正直、覚えていない。

 ただ言えるのは、あまりに苦しく、救いようのない状況だったという事だ。



 事が大きく動いたのはそれから数日後。

 コンビニやスーパーマーケットの食料で飢えを凌いでいた俺達の前に、自衛隊員たちが現れた。

 地域ごとに幾つかの避難所を設けたらしく、生存者を集めているとのことだった。


 住民たちは高機動車と言うらしい車に乗せられて避難所に向かった。

 俺たちはランドクルーザーを所持していたため、それに付いていく形となった。

 殆どの道が潰れたものの、なんとか走行できる道のデータを自衛隊で集めているらしい。


 八王子地区の避難所に着いた際、自衛隊員にこの惨状に着いて聞いてみた。

 不確定要素が大きく、末端は何も知らないのとほぼ一緒だと言っていた。


 ただ、どうやら原因の一部と見られている大穴が何箇所もある、ということだけは聞いた。

 後にその大穴は「ダンジョン」と名付ける事になる。



『ダンジョン探索制度(通称DSS)』が広報されたのは、文明崩壊から2ヶ月後だった。

 悲壮感に包まれていた日本は、これにより少しの希望と活気を取り戻す事に成功したのだ。


 ダンジョンでは人間にとって非常に有益な"物"が取れた。

 その中で最も人類に求められていたものは『魔石』である。


 魔石は、風力や火力、原子力などの発電機構に代わるエネルギー源として機能し、更にエネルギーの抽出に複雑な機構を必要としない、殆どの発電機構を失った我々にとって、夢のようなアイテムだった。


 無数に存在するダンジョンから、人々の生活を賄う程度にそれらを発掘する事は、自衛隊だけでは難しかった。

 そして作られたのが民間でもダンジョンに関する事業や探索に関する制度、DSSだった。


 そこから人々はダンジョンについて詳しく知って行くことになる。

 中の構造が一日ごとに変わっている事、文明の利器が通用しない事、そして『魔物』と呼ばれる生物が存在している事などだ。


 つまりダンジョン探索には命の危険が伴うのだと、民間人はここで初めて認識する事になる。

 何人かの犠牲を伴って、DSSは資格制やクラン制などの最適化を繰り返し、——現在、文明崩壊からおよそ三ヶ月、DSSは軌道に乗り始めるのであった。


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