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脱獄【1】

「こ……これはなに?」

宙に浮かぶ美しいイヤリングに一瞬見とれながら、

リーナはイヤリングにしゃべりかけた。


「あなたが穴に入るのを止めたのね?」

「そうよ。」


イヤリングが答えた。 

暗闇に光るイヤリングが眩しい。

リーナは目を細めた。


「あなたは誰?」

「私はソフィアよ」


「ソフィア……よろしくね」

「こちらこそ。あんまり驚かないのね」

「ええ、なんかもういろいろありすぎて……」

「そう、大変だったわね。だってここは鬼畜世界ですものね」

「鬼畜世界?」

「え? 知らないでここに転生したの? この世界は難易度が非常に高くて

天界じゃ鬼畜世界って呼ばれているのよ」

「う……そうなの」

「でもあなたまだ運がいいわ。最初から私に出会えたもの」

「え……ええ、そうね」

「その顔はあんまり喜んでいないわね」


イヤリングからスッと妖精が出てきた。

少し怒った表情でリーナを指さしながら


「あなた!このソフィアの価値を分かっていないのね」


ピロロロン。 


どこからか不思議な音がした。

目線の左側にいきなり画面が現れた。



『妖精のイヤリングを手に入れた』

妖精が冒険のアドバイスやサポートをしてくれる。

入手が非常に困難。

レア度 ☆★★★★


「わ!妖精のイヤリング……入手が非常に困難?」

「だから言ったでしょ! あなたとても運がいいんだから」

「はぁ」


リーナは鬼畜世界と知ってしまったのでそのことで運がいいと言われてもあまりうれしくなかった。

だが心強い味方ができて脱出の可能性が出てきた。


「ソフィア!力を貸して!」

「いいわよ。ラタの頼みですもの」

「ラタの頼み?」

「ええ。ラタが脱出に成功したらあなたを助けてあげてって言っていたわよ」

「え?ラタが……どうして?」

「ラタは魔物から逃げているときにリーナの家に逃げ込んだみたいなの。

そのとき魔物から逃げる為にラタはこのイヤリングをあなたの父の部屋から持ち出したのよ」

「じゃぁこれは……」

「そうよ。あなたのお父さんの形見……そして最高傑作のイヤリングよ。

ラタは勝手に持ち出してしまったことに罪を感じていたわ」

「そうだったの……」

「だからラタはこのイヤリングを置いて逃げたのよ。

あなたを助けてくれって……」

「……父は生きているの?」


ソフィアは顔を横に振った。

リーナは実の父ではないが胸が張り裂けそうになった。


「この世界で生き残っている人間は少ないわ。ほとんど魔物が支配しているの」

「……そう」

「この牢屋も魔物だらけよ、逃げ出すのは簡単じゃないわ」

「逃げられるかしら……」

「うまくいけばね。」

「絶対逃げてやるんだから!」

「いい? 今夜はおとなしく寝て明日の朝脱出するわよ」

「わかったわ」


 リーナは眠ろうとした。しかし興奮しているのか眠ることができない。

「ガァァァァァ」

遠くですごい声が聞こえた。耳を澄ますと会話も聞こえてくるようだ。

「おまえが食ったんだろうが。」

「ローバル様の飯を食うわけがないだろ! おまえが逃がしたんだろ」

「正直に言えよ」

「俺たちの責任になっちまうぜ」

「あと人間は何人いるんだ?」

「お前がローバル様のとこに行けよ!」


 なんだか言い争いになっているようだ。

 リーナは黙って話を聞いた。


「外のやつも呼べよ。聞いて確かめるぞ!」

「タポール様にはばれるなよ」

「お前ちゃんと見てたのか?」

「当たり前だ! バカ」

「口に気をつけろ。昨日からだよな?」


 話している内容はあまり分からないが、見張りが手薄になっているかもしれない。


「ソフィア、ソフィア」

 リーナはそっと呼びかけた。


「聞いていたわ。ちょっと外の様子を見てくる」


 そう言うとイヤリングからスッとソフィアが出てきて抜け穴に入った。


リーナは続けて魔物たちの会話を聞いた。


「出られるわけねえだろ?」

「だよな……」

「だが一人数が足りていない……」

「89だったんだろ? で……昨日7食ったから……」

「わかんねえのかお前」

「うるせぇ、指が足りねえんだよ」

「お前やれよ。指たくさんあるだろ?」

「これは触手だ」

「どっちでもいいんだよ。タコ」


 魔物はどんどん集まっているようだ。


「リーナ! リーナ!」

 ソフィアが帰ってきた。


「見張りの魔物がぜんぜんいないわ! こんなチャンス滅多にないわよ」

「そうなの? 今がチャンスなのね」

「ええ、この監獄は脱出率2パーセントと言われているけど今なら行けるかもしれないわ」

「え? 2パーセント?」

「鬼畜世界って言ったでしょ? 覚えてないの?」

「覚えているわ! でも2パーセントって……」

「もう! 話している暇はないわ。行きましょう」


ソフィアはイヤリングに入った。

リーナは急いでイヤリングをして穴に飛び込んだ。

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