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 「まず、俺達陰陽師になる素質のある者には、必ず相性のいい術式と、悪い術式があるんだ。それを元にして、俺達は3つの寮に分けられて普段生活している。

 まあ、授業内容も一年のあいだは同じだし、意識する機会は最初のうちは無いかもしれないけど。」


 そこで私は合点がいったと頷く。


 「なるほど、私の場合それが『精』であった、ということですね。

 それで、私の適性がそれである事がどんな問題になるんですか?」


 あー、やっぱり気になるよな、と城之内先輩は微妙な顔する。


 「その、本当に、九条さんとは関係無い話なんだけどさ。なんて言うか、居たんだよ。3年前に卒業したけど、精舎の覚醒型が。甚だしく、それはもう伝説的に素行が悪かった奴。」


 …成程、?


 「流石にこの年になってまでそんなくだらない理由で虐められたりとかはしないと思うけど、クラスに馴染むのには少し努力が必要かも。」


 そこで私は少し違和感を覚えた。


 「その先輩って、数年前に卒業されてるんですよね。そんな噂が代々受け継がれるほどこの学園の縦の繋がりって強いんですか?それに、問題は生徒ではなく、その生徒と実際に関わりを持っていた教員の方々では?」


 私だって、自分の能力とやらを制御する術を身に付けられなければ将来絶対に困る。そんな中、教員に嫌われるのはなかなかの痛手だ。指導者に問題があって、生徒の能力が伸び悩むことは受験勉強に際しても往々にある訳だし。


 「まあ、確かにどちらかと言うと教鞭を取っている側の偏見の方が厄介かもな。

 聞いたと思うけど、陰陽師の才って言うのは基本遺伝によるものなんだよ。だから奴と同い年の兄弟がいれば話は聞くことになると思うし、何よりそいつを出した分家は今じゃ年に一度開かれる本家分家総出の会合から出禁をくらってるんだ。知らないって生徒の方が少ない筈だ。」


 ……それはまた。


 「面倒ですね……。」


 私が思わずといった感じでため息混じりにそう言うと、城之内先輩は苦笑した。


 「まあ、そんな馬鹿ばっかりじゃないしさ。

 俺だって覚醒型の精舎って聞いたら少し身構えたけど、見ている限り九条さんは冷静な子の様だし、何とかなるよ。その点ラッキーだったかもよ、精舎でさ。」


 何がラッキーなのかと視線で疑問を投げかけると、城之内先輩は答えてくれた。


 「あくまで傾向がある、ってだけの話なんだけどさ。

 この学園には精舎の他に、智舎、動舎の2つの舎が存在してる。

 それぞれ呪術、体術が得意な生徒が集められている訳なんだけど、それぞれ理屈っぽい奴らと脳筋の奴らを集めました!!って感じの舎な訳だ。

 それに対して精舎は、なんて言うのかな、淡白って言うか…、その、達観した奴が多いから多少はやりやすいと思う。」


 なるほど、つまり他人に興味が無いと。

 そう言われてみれば確かに、城之内先輩も終始ニコニコしていてなんだか腹の内が読めない感がすごい。


 「じゃ、とりあえず九条さんの部屋に案内するよ。

 嗚呼、それと生活費とかは確か覚醒型の場合国が保証してくれるから、余程豪遊しない限りは大丈夫な筈。申し訳ないんだけど、この学園にいる間はご家族とのコンタクトをとってもらう訳にはいかないから全部近場の店で買ってもらうことになるんだ。」


 そこで私は眉根を寄せた。


 「えっ、いやでも流石に連絡無しに失踪したとなると大事になる気しかしないんですが……。」


 しかも忘れてはいけない、私が我が家から姿を消したのは2次試験前夜である。何かあったと心配させてしまうのは必至だろう。まぁ、実際何かあった訳ではあるけど。


 私の言葉を聞いた先輩は一瞬動きを止めて、表情を歪めた。


 「うわ、あの人そんな大事なことまで説明端折ったのか……。」


 先輩は困ったように頭を抱え、言いにくそうに私を見た。


 「その、ね。君に限ったことじゃなく、この学園に在籍する一般家庭出身の覚醒型は3年間、"居ない"ことにされるんだ。」


 よく先輩の言いたいことが理解出来ず、しかし不穏な空気はしっかりと感じ取ったので、聞き返した。


 「どういう意味、ですか。」


 私が聞き返すと、先輩は観念したように、ぽつぽつと話し出す。


 「運命型の子は、まあ誤魔化しが効くんだよ。何せ両親が同じ経験をした訳だから、海外留学でもしていると口裏を合わせればいい。

 でも、例外はあれど覚醒型の親って結局は部外者なわけだから、俺らの存在を彼らに漏らす事は出来ない。かと言って、九条さんが行った通り放っておけば大惨事になることは目に見えてる訳だ。だから政府お抱えの術師が覚醒型の生徒に近しかった者、例えば通っていた学校の関係者だったりご家族だったり友人だったりの記憶から、お前たちの存在そのものを消す。」


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