#1 はじまり
別に何かスポーツが得意なわけでも、勉強が得意なわけでもない。
でも君の横にいるのは、僕でいたい。
他の人にどう思われてもいい、君のヒーローになりたい。
「おきてー」
桁ましい母の声が、下の階から聞こえてくる。
鳴りっぱなしの目覚まし時計を止めて、パジャマ姿のまま下に降りると、会社に向かう前の父と玄関で見送る母がいた。
母「行ってらっしゃい」
父「行ってきます」
仲の良い夫婦の朝の習慣も見慣れたものだ。
玄関で父を見送った後に母が台所に戻ってきた。
祐「ふぁ~、おはよう」
母「おはよう、祐哉。昨日も夜寝るの遅かったん?」
祐「うん、勉強得意ちゃうし、試験前くらいやらなやばいわ」
母「まあ、お母さんも高校生の時はそうやったわ」
母との会話をしながら出来上がってる朝御飯を済ましていると、階段を降りてくる足音が聞こえた。
「おはよー、ママ」
母「真美、あんた今日は大学休みなん?」
真「午後から休み、バイトもなしでーす」
母「なら、祐哉とパパのご飯お願い」
真「え~~……いいよ。祐哉、今日はすぐ帰ってくんの?」
祐「図書館だけ行くわ」
この図書館に行くことが自分にとっての幸せの第一歩だとはこの時は思っていなかった。
母「もう早くいかんと空いてる電車乗れんよ」
僕は2階の自分の部屋で支度を済ませ、玄関で母に声を掛けた。
祐「行ってきます」
僕が、そう言った時に姉の真美が間髪いれずに聞いてきた。
真「祐は今日なにがたべた~い?」
祐「なんでもいい、行ってきます」
そう告げ、足早に玄関を出るときに、姉の小さな声だけが聞こえた。
真「なんでもいいが、いちばん困るわ~」
運命を変える一日のはじまり~はじまり~




